THE YELLOW MONKEYのファンクラブ限定ツアーに行こう 前編

2026年7月12日日曜日

#THEYELLOWMONKEY-FCツアー秋田 #旅

t f B! P L

 一日、休みを貰って、旅に出よう。

 そんなことが、あってもいいと思うんです。

 なかなか休めない、ともすると嫌な顔をされたりして、たった一日休むためにあれこれと手を回してやりくりして、やっと一日を手に入れるような、そんなふうだったとしても。

秋田にて

当選

 6月のある日に休みを取ろう。

 そう決めたのは、というか決まったのは、まだ雪景色も消えない3月のことでした。

 あたしにしてみれば、そんなに前から休みを取って旅に出るのが決まっちゃうってことが、まずないんです。

 基本、無計画なんだもの。

 基本、いきあたりばったりなんですもの。

 名前を、「園場 しのぎ」にあらためた方がいいんじゃないかと思うくらい、まー計画性のなさっぷりがすごいんです。

 そんなあたしがですよ、なんだって3ヶ月も前から旅の予定を決めちゃってるんだと。どうしたよと。

 それがですねぇ、当選しちゃったんです。

 THE YELLOW MONKEYのファンクラブ10周年記念ツアーであるところの「THE COUNTDOWN〜Are you a BELIEVER.?〜」に当選しちゃったのです。

 あのさ、生きててそんなに当選することなんてないよね。

 記憶を辿ると、ちっちゃい頃に子供向けの雑誌で応募した、当時流行ってた特撮モノに出てくる巨大ロボットのおもちゃが当選したことがあったっけ。

 それ以来じゃね?

 だって、遊びで買ったお馬さんもハズレ、町内会のガラガラポン抽選会も決まってティッシュ、この国を変えてみせますと打って出た大統領選挙もですよ。

 もちろん「大統領」って書いたタスキをかけて。右手に雑誌のプレジデントを持って。台車の上にちょこんと座って。両足で漕いで。

 そんな、当選とは縁がないあたしがさ、当選ですって。

 マジで?

 実感はないんだけどね。だって、目の前で花束とか渡されてねぇしさ、当選確実のバラみてぇなのもつけられてねぇし。

 チケット代の引き落としがあったっきりで、チケットの有効化も席順も当日が近づかないとってことだしさ。

 まあでも、何度か見直しても軽くほっぺをつねっても、当選してるみたいだし。

 ってことは、行かなきゃいけないと。

 6月5日に。

 秋田に。

予約すると義務感に変わる

 当選に縁がない上にもうひとつ、ライブにも縁がないんです。

 行ける場所でやってないとか、その日に休みが取れないとか、ちょっと懐具合がよろしくないとか、すでにソールドアウトとかさ。色々噛み合わないことが多すぎて。

 なんだかんだでライブとかコンサートとかには、あまり行けていなくて。

 あとやっぱり、昔っからの混雑嫌いってのがあって。それがどこかで障壁になってる部分もあって。

 いやね、もっと言うとさ。知らないところへ決まった時間に行かなきゃいけないってのも苦手なの。

 時間の縛りがある公共交通機関とか、宿の予約とか、この時間に着かなきゃいけないってのがダメで。

 だから出張とかも嫌なんだよね。

 何処へでも行くよ、急に北海道とか言われてもそんなに抵抗ないですよ。ないけど出張とかってあれでしょ、途中でいい雰囲気の神社があるからってそこで小一時間ぼーっとしてちゃダメなんでしょ。

 この駅で降りたいとか、急にやっちゃダメなんでしょ。知らねぇ駅前で突然降りて寂れた商店街とか歩いちゃダメなんでしょ。

 サビっサビの自転車が置いてある、閉まってどのくらい経つんだろうっていう感じのレコード屋の前で呆然としてちゃダメなんでしょ。

 だけどさ、ライブが終わってさ、ライブがハネてさ、言いたいだけだけどライブがハネてさ。

 泊まるところなしはマズくね?

 汗かくと思うよ。はしゃぐって。あたしだってそりゃはしゃぐって。

 それに、曲がりなりにもそういうイベントがある日は、あとからやっぱりホテルに泊まりたいってなっても、予約で一杯ってこともありそうじゃん。

 だったら、もう行くのが決まってるんだし、ホテルもすぐに押さえた方がいいよね。

 そのライブの日が金曜日で。だったら、土曜日曜と秋田を満喫したいよね。しますよね。するべきですよねそうですよね。

 2泊かぁ。2泊するのかぁ。ホテルに2泊するのかぁ。さっきチケット代払ったけども、2泊するのかぁ。

 はい。ええ。うん。

 とりますよ。宿はとります。とらせてください。連泊しますからお願いしますから。

旅の前後

 それが3月のことで。

 で、紆余曲折なんてもんじゃない、たった3ヶ月で色々ありすぎじゃねってくらい、まー色んなことがあったけど、とりあえず5月も晦日になって。

 あれ、病気になってひどく出血して、手術するしないってなったのいつだ? 2月か? 3月だったか?

 しばらく歩けないくらいだったけど、あれは今年だったよな。

 もうね、歳ってことなんだろうけど、思い出せないよね。忘れる速度が上がってきてるっていうか。

 なのに、一日は長いの。

 歳とると月日が過ぎるのが早いとか言うけど、そんな実感はないかな。むしろ長い。まだ火曜日なの、ってよくそうなるもん。

 それで、ライブのことは半ば忘れかけてる日の方が多かったんだけど、さすがに5月末となると実感というか、ああ行ってもいいんだなって気になってきて。なんとか召されなかったなっていうか。いやマジで。

 そんな感じだったものの、今度は仕事の方でごちゃついてきて。

 金曜日は休めると。それはどうにかなるんだけど、日曜日にどうしても出社しなきゃいけないと。仕事自体はおそらく2時間もあれば済むんたけど、どうしても行く必要があるってことになり。

 最近のあたしの旅の傾向はっていうと、なんにも決めてない、なにをしてもいいっていう。

 帰宅しなきゃいけない直前までそうしてて、最後の抵抗のように寄り道しながら帰るっていうパターンになってるんです。

 基本、帰りたくなんかないんだから。帰るつもりがない。

 その感じをどうにかするのに、土産を買ったりさ、それを言い訳にあちこち寄ったりするっていう。ギリまで帰らないっていうね。

 なんなら旅先から直で出社しても全然いいよ。いいんだけど、今度はさっき書いたように、この時間までに辿り着かなきゃっていう、あたしの苦手なやつをやらなきゃならないってことになるじゃん。

 それで言うと今回の旅は前後がそうなっちゃう。

 行きはホテルの予約時間に、もっと言うとライブの開始時間に間に合うように行かなきゃだし、帰りは仕事のスタート時間に間に合うように出なきゃならないわけ。

 旅に出ることは嫌じゃないけど、こうなると行きたくないって気持ちも出てくるんです。ライブをキャンセルしてもいいかなって気にもなっちゃう。

 つくづく、コントロールしがたい、めんどくさい性格だなと思わされるよね。我ながら。

寝るべきか否か

 6月4日。

 旅の前日です。ここまできたよね。よくこれたよね。

 で、色々ケリをつけてから休みに入りたいと。

 もちろん平日、金曜日に休むので、職場は通常営業ですからそれに支障をきたさないよう、トラブルが起こってもどうにかなるように手を打っておくんですけど、そうなると前日は遅い時間までけっこうやることがあるわけで。

 日曜日に仕事なのはわかったと。

 でも幸い午後からでいいと。だから土曜の夜まで秋田に泊まって、日曜の朝帰ればいい。これならホテルの予約を変えなくてもいいよね。

 その日曜日は、いつものパターンならウダウダと寄り道しながら、ギリギリまで旅を続けるような諦めの悪い旅の最終日になるはずなのに、そんな時間はないってことになる。

 だったらこの木曜日、旅の前日である今日は仕事終わりで寝ないで秋田まで行って、日曜日は真っ直ぐ帰らなきゃいけない分を、金曜日の朝から秋田にいることで帳消しにならないもんか。

 なまはげ上等ですよ。寝ないごいねがー! ここにいるぞ! っていう。

 でも待てよ。

 寝ないでライブはヤバくないか?

 いや、ホテルのチェックイン開始と同時に入って、部屋で仮眠すれば、ほら。

 ああでもそうだ、3月にホテルを探した時に、駐車場の問題があるなと思ってね。

 その、今回も車で行くんですけど、そのライブの会場が秋田駅のすぐそばなんです。駅前だからホテルそのものはたくさんあるんだけど、駐車場付きとなるとちょっと様子が変わってくるのね。

 駐車場がまったくないっていうホテルは比較的少ないものの、停められる台数が少なかったり有料でそこそこ高かったりするんです。

 駐車場は基本先着順ってところがほとんどで、チェックインの時間帯次第では空きがない可能性もあると。

 それは初日もそうですけど、連泊する予定なわけでどちらかというと二日目、おそらく秋田をいつもの調子で無軌道に徘徊するんでしょうから、いつホテルに戻ってくるかわからない。

 さらに二日目は土曜日で、客が多いに決まってるとくれば、駐車台数の少ない駅前のホテルはあたしにとっては必ずしも使い勝手がいいとは言えないんです。

 で、結局どうしたかというと、秋田駅前からはちょっと遠いけどローカル線で一本の場所にあるホテルを予約したんです。そこは駐車場も広くて無料な上に、駅前のホテルよりも部屋代がちょっと安かったんですよね。

 ってことは寝ないで旅に出た場合、チェックインと同時に仮眠するのはいいけど、ライブ会場までに電車で移動する必要があると。

 仮眠、できます?

 寝ないで大丈夫なの?

 それにプラスして前日の仕事が遅くまでかかるという状況なわけです。

 さぁどうする。あたしどーすんの。

秋田への道のり 

 6月5日。

 起きたら6時でした。テヘ☆

 寝ないで行けないよ。これが17歳とかだったらさ、テンションで押し切ったりできたのかもだけどさ、行けないよ。寝るよね。普通に寝るよ。

 でも、もうちょっと早起きしたかったな。

 でも無理だって。朝、弱いんだもん。基本、朝になると逆に眠くなる体質なんだもん。社会性ゼロの体質なんだもん。毎日よく仕事に行ってるなと思うくらいのダメ人間なんですもの。

 いいんだよ、さっさと支度しろっての。二泊三日のホテル泊仕様でとっとと支度してけってば。

 んで、ザックリと荷物を積んで、電子チケットが表示できるスマホを忘れずに持って家を出るんですけど。

 読んでくださってる方で秋田に住んでる人もいるかもしれませんから、悪気はないってことだけは前もって言っておきますけど。

 あたしのいる辺りから、秋田ってちょっと行きにくいんです。新幹線とか高速道路で一本っていう感じではなくて、ぶっちゃけ車で国道を延々と走るしかないっていうようなイメージなのね。

 道のりの一部を高速道路で行くことはできるけど、そこまで時間短縮にならないっていうか。わざわざ高速料金を払うメリットがあんまりない感じ。

 今から行けばチェックインにはほぼ間に合うし、そもそも高速道路って寄り道できないからあんまり好きじゃないってのもあって、じゃあ下道をのんびり行きますかっていう感じで出発しました。

 空を見れば、悪くない天気でね。

 通勤時間帯の渋滞みたいなのもそれほどでもなく、途中でコンビニに寄って眠気覚ましのアイスを食べたり、道の駅に寄ってみたりしつつの旅路です。


 一番困ったのが、道中のBGMで。

 これからライブに行くって時に、そのアーティスト、今回はTHE YELLOW MONKEYなわけですけど、彼らの曲を聴いていいのかどうかっていう感じ。わかりますかね、この感じ。

 要は、どんな曲をやるかわからないわけです。

 こっちは事前情報というかSNSでセットリストをバラしたりしてるのすら、全部シャットアウトしてますから。

 これはライブとかコンサートに限らないことで、事前にハードルを上げない方がいいことって多いと思うんです。

 なにかにつけて、口コミがあって拡散されててあーでもないこーでもないっていう知識がつきやすいじゃないですか。

 それによって、薄れるものもあるし、事前情報が先入観になって邪魔することもあると思うんです。

 それと似たようなことで、これからライブに行くのにYELLOW MONKEYの音源を聴きながら向かうのは、いいのか悪いのかみたいな。

 ましてや今回のツアーはファンクラブ10周年記念ってことで、ファンクラブの会員のみが参加できるツアーなんです。

 ってことは、メジャーな曲をたくさん演るっていうよりは、おそらくですけどファンなら知ってるよねっていう感じの選曲になるんじゃないか、っていうのがあるわけ。

 どんな曲目になるのかって、ライブの楽しみの結構大きな要素だったりしますよね。今日までなるべくフラットな感じできたのに、道中でYELLOW MONKEYの曲を聴いていいのかっていう。

 ある意味、謎の。

 かといってさ、中島みゆきも違うよなっていう。

 なんかこの、微妙な感じ。

 だって、到着まで7時間とかかかるからね。ナビなんか、「5時間道なりです」って言ったっきりだんまりなんだから。延々と走らなきゃいけないんだって。

海沿いの街にて 

 それで結局、そういう時のためってわけじゃないけど、録り溜めておいたラジオをかけつつ、秋田まで。延々と走り続けまして。

 海沿いの道をひたすらずーっと走ってる、空も海もただただ青い初夏の風景をなぞるような旅行きは、刺激になるようなものはなんにもないけど、いいんだよね。ゆっくり、どこまでもゆっくり。

 そんなほぼ真っ直ぐの道のりでも、一応ナビはしてて、到着時間の目安が出てたり、いつもの悪い癖で寄り道しようとしたりすると補正してくれたりするし。

 そのナビの到着予定時間をちらちらと見ながら、このペースだとチェックインの時間のちょっと前に着くなっていう予想を立てて。

 それなら、とりあえす走るだけ走って、秋田のホテルの近くのスーパーでお昼ご飯を買おう。ライブの直前になにか食べてトイレの心配をするのも嫌だし、夜は夜でもしかしたらその時の気分で居酒屋とかに寄るかもしれないし。

 それで、休憩がてら立ち寄ったコンビニでホテル近くにスーパーがないかと検索したら、まんまとすぐそばにあるのね。

 このまま行けば1時間は大げさだけど、チェックインのそのくらい前に到着するから、だったらスーパーの駐車場でお惣菜を食べて時間を潰していればちょうどいい時間になるだろうってことになり。

 ナビの目的地をそのスーパーに変えて、旅を続けることにしたんです。

 やがて、海沿いの街に着きまして。

 走ったねぇ、7時間。我ながらよくやるよね。

 それでその、目的地のスーパーに入って買い物をしましてね。久しぶりの秋田だなぁなんて思ったりしてさ。

 んで、ちょっと早めにホテルに向かったのね。向かったって行ってもすぐそこなの。

 とはいえ、例の駐車場の件があるからさ。選んだホテルは駐車場が広いとはいえ先着順には違いながら。チェックインと同時に埋まる事はないと思ってても、金曜日で混雑してればどうなるかわからないじゃん。

 そういうのが頭をよぎったもんですから、ちょいと早めにホテルの駐車場に行ったら、停まってんの。

 バスが。貸し切りのバスが停まってんだ。

 その前でジャージを着た、たぶん高校生らしき人が大勢いてさ。なんかキャッキャキャッキャしてるわけ。

 パッと見、合宿とかもしくはなにかの大会に参加するとかそういうことだと思うんだけど、けっこうな人数がいるの。

 そういう合宿とか大会参加の時の宿ってさ、なんか旅館のイメージがあって。大部屋があるようなそういう、ビジネスホテルっていうよりは旅館的なところっていう先入観があったから。

 まあでも、今はそういうご時世でもないのか。そういう旅館自体も少なくなってるのかもしれないし、かたや学生さんだって、大部屋で雑魚寝みたいなのじゃなくてプライベートを尊重してほしいよね。

 それでまず決まったのは、大浴場はあきらめようと。あの団体が今からチェックインするのは目に見えてるから。

 テンション上がってんだから。そりゃ風呂だろうよ。高校生だろうがくたびれた出張族だろうが、ホテルに大浴場があれば真っ先に行くよ。どうやったって。

 あと、朝のバイキングもダメじゃね? さすがに無理じゃね?

 そんな事を考えてたら、ジャージの集団がぞろぞろとホテルに入っていきだして、それが落ち着いた頃にあたしもフロントへ向かいました。

歩けなくなる 

 学生さんたちとは別のフロアなのか、静かな部屋で荷物を降ろしまして。

 とりあえずライブ会場までのルート検索をしてみます。電車で一本、二駅先とはいえ、都心みたいに頻繁に電車が出てるわけじゃありません。

 調べてみると駅までの徒歩の時間も含めて、だいたい30分くらいあれば着けることがわかり。電車の時間的に、今から1時間半くらいに出発するのがよさそうということになりまして。

 アラームをかけてちょっと寝たのちに、ホテルを後にしました。

 最寄り駅まではたしか15分くらい歩けば着いた気がします。遅れちゃいけませんからルート案内をさせまして。

 おそらくもう二度と歩くことはないんじゃないかという気がする見知らぬ街をナビのいう方に歩いていると、ローカル線の駅付近の住宅地を抜けるルートを通るようでね。

 どこかの家から、地方のFM放送が漏れ聞こえていて、日が傾きかけた気配がして、床屋とかお寺とか薬局とかの前を通ると、これが現実にあると痛いほど理解しつつも、どこかおとぎ話のような架空の街並みのような気もしてきて。

 ここでずっと住んでいるであろう人がいて気配がして暮らしがあって、かたやこちとらは多分もう立ち寄ることはないかもしれないと思うと、脳がぐるぐる回るようななにかにアテられたような気持ちになってくるんです。

 わかりますかね、この感じ。

 ローカル線の駅で電車を待ってる間も、七割くらい埋まった電車の中でも、ここにいることがいけないような、なにか理を乱しているような気になってきて。

 秋田駅に着いて駅ナカの店を通ってライブ会場へ向かうためにいったん外へ出たものの、すぐに構内に戻っちゃってさ。

 グッタリしちゃって。

 長椅子があったから座ったりして。

 ぼんやりしてると、何組か何人か、今回のツアーのTシャツを着てる人が通ったりするのね。これから行くんだなっていう。

 ここで初めて、ライブの会場ってキャパはどれくらいなんだろうってなるわけ。

 調べたら二千人らしいの。

 今の状態、通り過ぎるだけの人から色んな圧やら気配やら気持ちやらにアテられちゃってる今の状態で、行けるのかっていう。

 なんかね、もう行きたくなくなっちゃって。

 すぐそこなんだよ。歩いて10分もない場所まで来てるの。あと1時間もしないでライブが始まるの。

 でも、ちょっと無理ってなってるんだ。

 雑踏の人々の会話も耳に触るくらい聞こえてくるしさ。

 リアルに行かなかった場合のことを想像して、帰る電車の時間も調べ始めたりしてね。

Are you a BELIEVER.?

 色んな事を考えて。

 いったん、周りの音を遮断しようと。いつも持ち歩いてるノイズキャンセリングの強力なイヤフォンを着けて。

 ここで初めて、THE YELLOW MONKEYの曲を聴こうと、自然にそう思って。

 なにがいいかなって一瞬思ったんだけど、それもすぐに答えが出てさ。

 インディーズ時代のアルバムの一曲目、「Bunched Birth」。あれをリピートでずっとかけようって思って。なんでとかは知らないけど、それが一番しっくりきたんだよね。

 そうやって、外音を遮断してしばらく座ってたら、なんとなくここに座り込んじゃった意味もあったんだなって思えてきて。

 楽しもう。

 ずっとそう思って生きてきたのね。厳しい時も、今を楽しもうと思ってきた。それを思い出して。

 始まっちゃえば楽しいに決まってるわけ。そんなの決まってる。

 そこまでのことは、多分だけど、乗り切れるだろうって思えてきてさ。

 そして、ライブに行かなかった自分の姿と行ったあとの自分の姿を想像してみて、どっちが自分の本心に近いかって。

 問いかけて。

 そんなの冷静になれば答えは決まってるよね。でもそれを覆しかねないくらい、なにか別のものに追い込まれるってこともあるんだよ。

 そしてそういうのが嫌いじゃない、理にかなわない選択をすることが嫌いじゃない自分もいるっていう。

 …この時のことは、これを書いてるいまの今まで忘れちゃってたな。書いてて思い出した。今思えば、なにかでスイッチが入っちゃったんだろうね。

 そしてそんなことを忘れるくらい、ライブは楽しかった。

 行ってよかったよね。心の底からそう思ってる自分が、秋田の夜の街にいた。確かにいた。

 セットリストとかは書かないけど、まさか生で聴けると思ってなかったような、マイナーだけどすごく好きな曲って特定のアーティストを好きだっていう人なら、そういうのがあると思うけどさ。

 そういうのを何曲も演ってくれて。

 ちょっと書いたけど、ライブそのものに今まで縁がなかったから、メジャーなのを連打するような構成もいいと思うんだけど、このセットリストは滅多にないよなって。

 こんな貴重な機会はなかったなっていうか。

 あそこで座り込んで、立ち直れて、立て直せてよかった。

 みんな、それがあっての今だから。それを経て越えて越えられなくての、今だから。

Are you a BELIEVER.?

凍えながら

 それで、秋田駅からまた電車に乗って。

 いや、その前に居酒屋とか思ったんだけど。ちょっと飲みたいわけ。色んな事が頭をぐるぐる回ってるし、余韻ももちろんあるしさ。お酒が飲みたいわけ。

 だけど、道すがら見える紅い灯青い灯は、のぞくとどこもいっぱいのようで。

 ライブが終わって21時を回ってて、まあまあいい時間じゃない。しかも金曜の夜だからさ。

 そんな中で一軒だけ、パッと見の店構えが良さそうって思った店は、前を歩いてた夫婦連れが、それもさっきの会場の物販で売ってたTシャツを着てる二人連れが入って行っちゃって。

 それは行かないよ。行っちゃいけないよね。

 じゃあもう、あれだコンビニで缶ビール買って行こう。そうしよう。

 そのまま、流した汗で失った水分補給を、大人の水分補給をするわけです。いい大人が秋田の街の大通りでビールをぐい飲みしてるのも、いい絵面だとは思わないけれどもですよ。

 二駅とはいえ電車だもんね。

 二駅とはいえ旅だもんね。

 飲まない理由がないよ。ライブ終わりで飲まない理由が見当たりませんよ。

 んで、秋田駅からホテルのある土樽駅まで移動して、そこから歩くんだけど。海沿いの街だからか風がすごいんだ。ちょっと歩きづらいくらいびゅうびゅうなの。

 でも、行きで一回通った道だと。なんなら駅まで15分とかそのくらいだと思ってっから。ちょっと油断してるわけ。

 それにさ、行きは電車の時間もあったしルート案内させて行ったけど、帰りなんかいつ着いたっていいんだから。ナビどころか地図も見やしないわけ。

 でも、その、当たり前なんだけど、行きと違ってもう真っ暗なの。22時近いんだからそりゃそうなんだけど。

 プラスして、そんな時間にやってる店もほぼないからさ。駅前からしてもうかなり暗いんだ。

 行きはナビで最短距離を通ってるから、駅前の住宅街を通り抜けてきたのは覚えてるんだけど、今この暗さで住宅街を、ましてや缶ビール持った汗だくの奴が通ったら間違いなく不審者だろ。

 防犯カメラで映った奴のなかで一番怪しい可能性あるんだから。どうやったってさ。

 それに大きな通りを歩けばいいじゃん。わざわざ住宅街とか抜けなくても辿り着けるって。

 そう思ってたらその強風でどんどん汗が冷えていくの。マジで。

 寒いんだ。

 6月とはいえ秋田の夜は、少なくともこの日の体感じゃ震えるほど寒いんだって。

 それに缶ビールを、その、飲んじゃってるからさ。それも1本や2本じゃないから。テンション上がっちゃってっから。

 確かローソンがあった道をこう曲がったよなと思って、そっちへ行ってみるんだけど、なんかやっぱり知らないところへ出るのね。

 だってこっちは、ローソンがそんなに離れずに2軒あるとか知らないからさ。目印のやつだと思ってたローソンが、ニセローソンだと思ってないから。

 ニセじゃねぇっての。ちゃんとしたお店だっての。

 そのローソンに惑わされながら、どのくらい歩いたのか、やっとホテルに帰ってきて。

 かるく泣きながらだよ。ライブの感動がフラッシュバックしてとかじゃないの。6月の秋田で遭難するかもと思ってのやつだから。

 ホテルのフロントの人もビビったと思うよ。暴風で髪の毛とかボッサボサになってる真っ青の奴が夜中に現れたらさ、そりゃビビるよ。

 この状態でそうだ、大浴場に入ってあたたまろうって思ったんだけど、大浴場入口近くじゃ明らかに友達が出てくるのを待ってるであろう、昼間の高校生諸君がキャッキャしてるわけ。

 そりゃそうだよ、なんかの大会で遠征か知らないけどさ、同じ部活の仲間同士でホテルに泊まってりゃさ、年頃のお兄ちゃんたちなんか楽しくて仕方ないって。こっちが遠慮すりゃあいいの。

 それでもう、部屋に入ってさ。とりあえずまだ生きてるから。シャワーだけがーっと浴びて、昼間買っておいたお惣菜だったか刺身だったかを食って。

 ようやくひと息ついてさ。

 トータルで言えばよかった。よかっただけれども、色々ありすぎじゃね? 心があちこち行きすぎじゃね?

 ライブに行くのにそんなやついる?

 いるんだよ。いるの。そんなだよ。翌日の話もあるけど、気が向いたら書くよ。

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