新潟〜佐渡ヶ島 カーフェリー乗船記

2017年7月23日日曜日

#旅

t f B! P L
 明るさに気がついて目が覚めました。視界の定まらない目で時計を探すと、見えた数字は「05:10」。
 あれ、間に合わないんじゃ? という気持ちと、もうちょっと寝てたいという気持ちが薄らぼんやりとした脳内で互角に戦っています。
 なんでこんな所にいるんだっけ・・・ と思う私に、私が状況を説明することにしましょう。
 

急遽、佐渡ヶ島へ


 仕事で新潟県は佐渡ヶ島に行ってきました。
 そうなると普通、ブログに書く内容は佐渡ヶ島旅行記ってことになるんでしょうが、タイトル通りです。

 まずはなぜこんな羽目になったのかを書くべきかとは思うのですが、仕事上の事ですし書いても仕方がないのでね。そのへんはお察しください。よくあるちょっとしたトラブルと、そのリカバリーってやつですね。
 
 よんどころない事情により、私は長野市に近い某所に滞在しておりました。そこへ件の「トラブル」が発覚。
 ギッタンバッタンした後で整理してみると、要するに翌日中に佐渡市に行って、ちょっとお仕事をし、あわよくば佐渡の美味い海鮮なんかに舌鼓を打ちまくり、新潟市に戻ってミッション完了ということのよう。やればいいんでしょ、やれば。

どうやって行こうか


 目的地は島ですから、行くには船でということになります。相当昔に一度、佐渡市には行ったことがありましてね。その頃は市区町村の合併前でしたけども。

 ですから佐渡ヶ島に渡るための船が、車両を積んで行けるカーフェリーと、人しか運べないけど移動時間が短いジェットフォイルという高速船の2種類があるという事は知っておりました。

 当初は1時間ほどで海を越えられるジェットフォイルにしようと思っていたのですが、ここも詳しく書きませんが、どうしても車ごと船に乗って行かなくてはならないって事になりましてね。
 
 急な仕事ってのは、人の手足を縛ってやらされる遊びのようなもんです。条件があるならそれを満たす必要がありますから、検討した結果出てきた答えは、
 
 ・朝一番のカーフェリーに車ごと搭乗
 ・最速で仕事を終わらせる
 ・カーフェリーで新潟市に戻って、某所に立ち寄り業務終了
 
 と、こんな感じ。本当に最速で終われば佐渡ヶ島の何処かで美味しい物を食べるという、アナザーミッションが成立する可能性もなくはない、なくはないよと自分に言い聞かせます。無理難題をさせられるなら、何かご褒美があってもいいでしょう?

新潟港まで延々と移動


 ネットで佐渡ヶ島に渡る船を運行している佐渡汽船のサイトにアクセス。カーフェリーの時刻表を見てみると、朝イチで新潟港から出る船の出港時刻は6時ちょうど。
 滞在している某市から佐渡汽船まで3〜4時間かかりそうですから、少なくとも深夜には出発しないといけない計算になりますね。

 それなら早めに新潟市に向けて出発して、途中どこかで仮眠してしまったほうがラクのような気がします。島内での仕事をサクッと終わらせたいので事前準備を始め、そしてそれが結構手こずる代物でねぇ・・・
 それでもどうにかコトを収めて、遅い夕ご飯を摂り移動を開始します。
 
 前回のブログでも書きましたが、Google Play Musicを使い始めていまして、移動中の車内はずっとかけっぱなし。
 東京事変初期のシングル曲から始まり、黒夢、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTあたりのロック系、HARDFLOORを筆頭にしたACID系、昭和〜平成初期付近のジャパニーズ歌謡曲などが車内でグワングワンに鳴り響いてまして、長時間の運転もそれほど苦ではありませんでした。
 

ワナに落ちそう


 新潟市内に着いた時間はよく覚えておりませんが、朝イチの船が出港する6時までには余裕のある感じでした。

 給油以外に休憩なく走り切りちょっとお腹が空いたのと、フェリーでまったりするためのお買い物が必要だなってことで、目についたセブンイレブンに入ったのは覚えております。
 それが完全に罠でした。
 
 目的地の近くに来たら安心しますよね。
 
 お腹がいっぱいになったら眠くなりますよね。
 
 運転しっぱなしって疲れますよね。まともに寝てませんしね。
 
 ええ、ここでようやく冒頭の状況につながるってわけですよ。ええええ。説明とかそんなのんびりした時間はありません。乗る予定の船が出るまでにあと1時間もないんですから!
 
 エンジンをかけて一路佐渡汽船へ。
 幸いこんな時間ですから道は空いているのですが、これから乗船手続きをする必要がありますから時間的にもう微妙。
 事故ったり捕まったりはゴメンですけど、焦りがどうしても出ちゃいますって。

おけさ丸の乗船手続き


 なだれ込むように佐渡汽船の車両乗船用のターミナルに到着。これから船に乗り込むであろう車列が見えますから多分セーフ!

 車検証片手に受付へ行ってバタバタと手続きをします。往復で3万なにがしの料金は高いとしか言いようがありませんが、佐渡島内は電車もないしバスも頻繁に走ってないはずで、車がないと始まらないんですよね。

 観光するなら車を持ち込むよりもレンタカーを借りたほうが安上がりだとは思いますが、島内ではガソリンが本土に比べて10円くらいは高いと聞いているので、そのへんの損得はよくよく検討したほうがいいなぁなんて余計な事を考えられるのも、無事間に合ったおかげです。
 
 
 乗り込む船の名前は、おけさ丸。
 パックリ口を開けたフェリーの中へ、係の人の誘導通りに進んで車を停めます。クジラに飲み込まれる小魚の気分ですかね。
 船が走っている間は車に戻れないそうなので、必要な手荷物をゴソゴソとカバンに突っ込み始めます。
 
 船旅といえば、同じ新潟港から北海道へ行くフェリーに乗ったことがあります。
 あの時はほぼ一日かけての船旅でしたから、海を見ながらビール三昧だったのですが、今回はそうはいきません。飲んだアルコールが抜けるには、佐渡へ向かう2時間半は短すぎます。
 

船内ではなくデッキが落ち着く


 眠ってしまったあのコンビニで買っておいた、ちょっとしたお菓子と飲み物。そしてモバイルバッテリーと雑誌を持って船内へ。車両の格納場所は船の下層にあたり、船室はその上のほうになっています。狭くてちょっと急な階段を登っていくと、船室などがある階層へと出ました。
 
 私が購入した2等船室は雑魚寝ができる広々とした絨毯席。幾つかのシマになっていますが、特に区切りはなく先着順に入ってきた人がそれぞれ陣取るような感じです。

 その2等室は残念ながら、すでにまあまあ混み合っていましてね。正確には空きはあったのですが、何やら騒がしい団体がいたり、そうでない船室は横になるには混み合っていたりと居心地は良くなかったのです。
 
 デッキの方に行ってみると、船尾のほうは人影もまばらですしベンチもあります。ここでいいかと、腰を下ろすとこんな光景でした。
 
カモメたち

 カモメが並んで街灯に止まっているだけでなく、時折切なげな声で鳴きながら船の周りを何羽も飛んでいます。
 ひとしきり写真を撮っていると、家族連れやらがチラホラと訪れはじめましてね。カモメに向かってお菓子を放ると、よくしたものでカモメもパクっと咥えます。

 カモメもお菓子なんか食べるんだ、と思った頃に船が動き出しました。船尾にいますから船が港を離れていく様子が見えて、偶然座った場所ですがどうしてどうして、いい席じゃありませんか。
 
 佐渡汽船は信濃川河口に位置していますから、川を少し下って海へ出ることになります。
 徐々に遠ざかっていく佐渡汽船と、その隣に位置する朱鷺メッセというイベントスペースのような大きな建物があるのですが、長い通路でつながっていましてね。

 離れてみるとハッキリ分かるのですが、佐渡汽船のほうはどう見てもそろそろ建て替えたほうが良さそうな感じ。一方の朱鷺メッセはそれに比べたらまだまだ新しくて、その二つの建物が通路でつながっている様子の違和感は強烈でした。
 
 川を下っている途中の速度がゆっくりとしている間は、両岸に沿う堤防の向こう側に広がる新潟の街が見渡せます。夜になったら街明かりがついて、もっときれいに見えるのかもしれません。
 少しづつ速度を上げ河から海へと差し掛かる頃には、さっきまで居たはずの街が模型のように見え始め、遠く脆く形をなくしていくようでした。
 
 そんな景色の移り変わりを目にしている間も、カモメは船に付いてきていましてね。誰かの投げるスナック菓子を、飛びながら器用にくちばしでキャッチする度に歓声があがっています。
 このままカモメたちも船とともに海を渡るのかなと考えたら、ちょっと嫌な気持ちになったものです。
 人間が餌付けのようにして野生のカモメを引き連れて行くなんて、ちょっとどうかしてるでしょう。投げ損なった菓子が甲板にたくさん落ちていて、それも含めて哀れというか、なんでしょうね、この気分は。

カーフェリーを探検


 妙な気持ちになってきたのでその場所を離れ、そのまま船内を徘徊してみました。ゲームコーナーや食堂もありましたし、売店ではちょっとしたお土産やお菓子が並んでいます。

 新幹線や飛行機もそうですが、乗ってる間の時間潰しってどうしても発生するものですよね。船のいいところは、時化でなければあちこち動き回れるってところだと思います。
 実際のところ、船の上での2時間半はけっして短いとは感じませんが、景色を見たり仮眠したり、本やタブレットの動画なんかで時間潰しできれば、そんなに辛いものでもないでしょう。
 
 WIFIはフリーで使うことができましたが、連続して接続できる時間が15分と短い上に速度も早くなく、混雑で接続できないタイミングもあるなど、使えるだけマシな程度のものでした。もちろんセキュリティなどがないのでVPNアプリなどは必須です。

 電源は2等船室にはないようでしたから、モバイル系での暇潰しはダウンロードコンテンツとバッテリーを準備したほうがいいですね。
 
 そうやってウロウロしている間に、どういうわけか横になれる場所が空いている船室を発見できまして。雑魚寝ですからざわつきがあるせいで、快眠というわけにはいきませんでしたが、そのまま到着までまどろむことができたのはラッキーでした。
 

トンボ帰りの一日


 寝ぼけた耳に船内放送が聞こえてきました。車に戻るようにとの案内で、どうやらそろそろ到着する様子。佐渡の両津港に着岸後、1台ずつ誘導されながら無事下船しました。定刻通り8時半。

 ここから私の段取り通りに仕事をし、若干色々ありましたが、突風のように業務完了。現地でせっかく来たんだからと食事の話になりかけたのですが、まだ新潟でひと仕事残っていましたし、何より何故こんな事になっているのか彼らは理解していないようで、とても一緒に飯を食う気にはなれませんでした。

 車内で愚痴を垂れ流しながらそのまま両津港へ。道すがら食事ができる処はあったのですが、面倒なりとそのまま乗船手続きをしてしまいました。
 
両津港からの景色
両津港

新造船のときわ丸


 帰りの船は、ときわ丸。行きと違う船で多少は気分も変わるのを期待しましょうか。
 新造船が就航したという話は聞いたことがあったのでネットで調べてみると、ビンゴ。この船でした。

 来る時に乗ったおけさ丸は、良くも悪くも年季が入った感があったのですが、これから乗る船はまだ新しいということで若干テンションが上がったと同時に、さっきまで燻っていた嫌な気分が薄れていったようです。我ながら、単純で助かります。
 
 出向時刻の少し前。新潟港と同じ感じで1台ずつ誘導されながら船に飲み込まれていきます。朝のおけさ丸に比べて、やはり大きいようです。船から降りる際に車を見つけやすいようにと、止めた場所の目印を覚えてから階段で船室のあるフロアへ。

 ブラウンがアクセントになっているモダンな内装の船内です。新しい船ということももちろんですけど、おけさ丸の第一印象が古臭いというかいい意味で泥臭い感じのものだったので、ときわ丸が余計に洗練された感じに見えてしまいます。

 船内は基本的にはときわ丸もあまり変わらないようで、船室の他には食堂や売店などといったものがありますから不自由はしないでしょう。
 変わったところでは、詳細はわかりませんが船員さんの制服を着て記念撮影ができるようで、コスプレ用の衣装がエントランスに置いてありました。
 
ときわ丸

 ひとしきり船内を回って、船室内で椅子席と絨毯席に別れている場所を発見。お客さんも少なく落ち着けそうだったので、椅子席のほうに座ってみました。
 リクライニングができると良かったのですが、そうでなくても座り心地はなかなかで、3人掛け席の隣はおろか前後左右を見渡しても近くに誰もいませんし、どうやらくつろげそうな場所のようです。
 
 相変わらずWIFIの仕様がよろしくないので、ラジオクラウドでダウンロードしたラジオを聴いたり、聴きながらウトウトしたりして2時間半を消化。新潟港に無事到着となりました。
 そこから新潟市での仕事を概ね予定通りに終え、ようやく任務完遂です。
 
 
 佐渡ヶ島の滞在時間は約4時間、船に乗っている時間は5時間でしたから、もう船に乗りに行ったようなものですね。ですからタイトルを乗船記としました。

 こんな感じだと旅もへったくれもありませんが、それでも船に乗るというのはそういう職業にない私にとっては非日常なわけで、旅情ってやつがあったのも事実です。
 旅の定義というのは、結局自分がどう位置づけるかだといつも思っていますが、あらためてその思いを強くした一日でした。
 
 それでもねぇ・・・
 
 次はバタバタせず、ゆっくりと船旅を味わえたらと、どうしても思ってしまうんですけどね。

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