MAIZURU PLAYBACK FES 2025に参戦

2025年4月27日日曜日

#MAIZURU_PLAYBACK_FES2025 #音楽 #旅

t f B! P L

 行ってきました。フェスに行ってきました。音楽フェスに行ってきましたよ。

 それがね、相当歩きまして。細かいことは後から書いていきますけど、とにかくずーっと歩き回ってて。

 終いには右足の指先から足の甲あたりまでしびれが出始めて。

 なんとかフェスから帰ってきたものの、ちょっと足のケアをしなきゃ不味いんじゃないかということになったんです。

舞鶴


緊急クエスト:マッサージに行け!

 日曜のもう夕方だったんですけど、予約サイトを見てみるといつもお願いしてるマッサージの先生が空いてないのはもちろんのこと、他のお店も選択肢がかなり少なくなっちゃってる状態で。

 これはもう贅沢はいってられないなと。ともかく一番早くやってもらえるところで、初めて行くけどここならまあまあなんとか大丈夫なんじゃないかってところに予約を入れたんです。

 応対してくれたのはそこそこのお年だと思うんですけど、スラッとした女性でね。

 最近じゃ応対の仕方とか話し方みたいなものまで、どこへ行っても洗練されてるし横柄な人なんかほぼ見ないじゃないですか。

 いや、その女性が横柄だってんじゃないんです。むしろ腰の低い感じではあるんですけど、大抵のマッサージとか整体のお店ってまずは問診というかカウンセリングからスタートするでしょう。

 もうね、とりあえず施術用の服に着替えて仰向けで寝てっていう感じで。

 なんか昭和とか平成初期のビジネスホテルで呼べる、マッサージサービスのおじさんとか、こういう感じじゃなかった?

 とりあえず身体を触らせてもらって、あとはこっちもプロですから、触った感じでわかるんです的な。

 確かに足がつらいとは言ったんです。言ったもなにも、マッサージのいくつかあるコースの中から足を重点的にやって、あとは短めの時間で全身を、みたいなやつを選んだんだから。

 それでこの細身の女の人のパワーがすごいんだ。

 見た目は、ビビアン・スーが歳を重ねたみたいな感じなんだけど、なんていうの。

 ビビアン・スーが能力値を美貌とかに多めに割り振ってるとしたら、その方はパワーに全振りしたんじゃないかっていう。ビビアン・スーっていうかギギガン・ジョーって感じ。名前も変わっちゃって。

 マジでね、すごいんだもん。よく耐えたっていうくらいのガッツリ系マッサージで。ゴリンゴリンにやってくるの。指じゃなくて鉄の棒かなっていうような。

 今受けてるのはマッサージなの、拷問なのっていう。

 いや確かに、スッキリしたよ。むしろ肩腰とかはかなりいい感じにやってもらったんだけど、足がさ。

 そりゃあ重点的にやってほしいよ。ほしいけど、施術後けっこう経ってる今も、施術前とは別種の痛みがあるんだから。施術直後なんかベッドから降りて身支度するのに靴下が立ったまま履けないんだよ。

 足をホントに全周、あらゆる角度からやってもらって、確かに部分的にはいい感じだししびれは取れたんです。取れたも何も痛いんだけどね。

 いや一応書いとくと、翌朝には痛みも落ち着いて歩くに支障はなかったんだけど。マッサージ直後は、あれっていうくらい痛かったんだもん。

 説明とかないからさ。ハイ、一丁上がりっていう。こっちはなんか、脱水機から出てきたみてぇな感じになってっから。

 なにしてんの?

 あたしゃいったい、なにしてんの?

冬を乗り越えて 

 そのガッツリ歩き回る羽目になったフェスがあると知ったのは、あれはなんだったっけ。

 確かそう、そのフェスを知るまでもけっこうストーリーがあって。

 去年かな。まだ冬が来る前のあたりで、THE YELLOW MONKEYがツアーをやりますと。

 そりゃ見に行きたいじゃん。

 あたしの、ホントに狭い守備範囲の、この世にミュージシャンやら歌うたいは数あれど、その中でピンポイントで好きなアーティストがアルバムを出して、ツアーをやりますと。

 またねぇ、そのアルバムがよくて。これはライブ映えするんじゃないのっていう曲も多かったし、なによりあたしにぶっ刺さる素晴らしいアルバムなんです。今さ、サブスクとかの時代ですから、聴ける方はぜひぜひって感じなんだけど。

 それを引っさげてのツアーだよ。行きたいじゃん。

 でも、ちょっと諦めてたんです。

 というのも、冬。

 あたしがいるあたりは、冬になるとガッツリ雪が降るのね。交通が麻痺するくらいは降るんです。

 ツアーの日程を見てみると、冬の間の公演が多くて。なおかつ、近くでの開催はなし。

 ライブ会場に直接、雪が降ったりしなくてもこっちは行き帰りにどうしてもその問題に直面するわけです。

 雪で行けない、行ったはいいけど帰れない。そんなことも普通にあり得ると。

 それに加えて、去年の冬から今年の春まではガッツリ忙しいのが、冬になる前からあらかじめわかってて。

 そういった色んな理由があって、ライブのチケットを取ることすらしなかったんです。

 時が流れて。

 今年の4月になりましてね。

 THE YELLOW MONKEYの春バージョンのグッズが発売されますよ、みたいなニュースを目にしたのね。

 そのグッズは、まず直近で出演するライブとかフェスの会場で販売して、5月くらいから通販でも買えますよ、みたいな案内だったと思います。

 フェスの会場で売るって言っても、どうせ行けるような日程じゃないんだろうなと、その先行販売があるフェスの一覧みたいなのを眺めてたのね。

 あれ? と。

 行けそうな日もあるじゃん。4月19日とかさ。この日なら大丈夫だけど…?

 で、その行けそうな日にやってるフェスの名前が、

 「MAIZURU PLAYBACK FES 2025」

 ってなってまして。

 M A I Z U R U

 まいづる

 舞鶴

 …舞鶴ってどこだったっけ?

 ああ、京都か。

西の都はここから遠く

 京都?

 いや待って。

 言ったよね。あたし言ったよね。

 いま居る地域は雪がすごいよって。豪雪地帯だよって。

 そんなところ、日本列島の中じゃ北の方に決まってるじゃない。それも電車もバスもろくに通ってないド田舎ですよ。レーザーディスクはナニモノだってなところですよ。

 そこから西の都、京都?

 いやいやないない。むりむり。

 京都だよ? どんくらい離れてると思ってんの?

 …いやいや

 …いやいやいやいや

 …

 …あれ、行けんじゃね?

 頭の中で閃いた、この段取りならなんとかなるんじゃね?

 いやほら、でもどうせチケットがもうソールドアウトなんでしょどうせ。タイムテーブル見ると、他にも色々有名なバンドが出演してるもんね。

 え、あんの?

 チケットまだあんの?

 ああほら、駐車場のチケットは別なんだって。そっちがもうないんでしょ。さすがに新幹線と電車とかじゃ行きづらいもんね、車で行けなきゃね。

 え、あんの?

 駐車場のチケットもまだあんの?

 ええ?

 京都に行くの?

 誰が?

 あたしが?

後悔から遠い方へ

 まあでもね、それで万事解決ってわけじゃないんです。

 その、MAIZURU PLAYBACK FES ってのは、4月19日と20日にやるんだそうで。

 で、我らがTHE YELLOW MONKEYは初日、19日のトリを務めるというタイムテーブルになってまして。

 じゃあ、あれか。19日の朝に出発して、現地に夕方までに着けばいいのか。楽勝じゃね?

 でも調べてみると、公共交通機関を使って行った場合、最速なのは飛行機と電車を乗り継ぐパターンで12時すぎには着けると。

 そうでなければ早朝に出て新幹線とか電車を何本も乗り継いで、16時あたりに到着する感じになるらしい。

 そうなると、フェスのほぼほぼを見ないで、

THE YELLOW MONKEYだけ見て帰る感じになるんですよね。それでもいいよ、いいけどちょっと勿体ない気もするじゃない。

 そして帰り。

 公共交通機関を使った場合はその日のうちに帰り着くのはほぼ無理で、どこかで一泊するしかないんだけど、宿がないんだ。その周辺に宿が見つからないの。

 あっても、普段ならけっこう下のランクのホテルですら、料金的にけっこうな値段で出してるのね。

 築150年のド古民家ゲストハウス ギリヤバボロ家亭の、トイレ共同で風呂なしドアなしかろうじて屋根付きプランみてぇなのでも、一泊8千円とかなんだもん。800円だって出さねぇやつだよ、こんなの。

 そして、トータルでかなりの出費になるんです。この他にチケット代もあるし飯代もいるわけで。

 あとは、自分の体調もあって。公共交通機関の長旅に耐えられるかに一抹の不安が残るのね。 

 じゃあ車で行こう。

 車なら最悪、前の日の仕事終わりでそのまま走れば朝には着くから、丸一日フェスに参加できて好きなように帰ってこれると。休みたきゃ好きなように休んでいいし、フェスの会場でへばっても車の中で休憩できるしさ。

 これだなと。

 で、ナビで調べてみると、舞鶴まで高速を使っても片道7時間以上、余裕でかかるというのがわかり。

 フェスの会場は9時だったか9時半オープンだけど、特設駐車場は8時に入れるってことなので、それに合わせて行くとなると、夜中の1時とか2時に出発すればいいんじゃないか。

 こう言うとすごく強行軍っぽくきこえるけど、金曜の仕事を終えて飯食って仮眠できるって考えたら、仕事終わりに真っ直ぐ会場へ向かうよりは断然ラクなんですよね。

 それに最低でも18時前に現地入りすりゃあいいやっていう、時間の縛り的にはゆるゆるなスケジュールなんだし深夜に起きられなくたって問題ないわけです。

 行くか。

 行くの?

 行くか、行っちゃうか。

 行っちゃうのが自分らしいよな。行っちゃうのが自然だよな。行っちゃうのが後悔からは遠いよな。

 それで、チケットを取って駐車場のも抑えて、フェスに参戦することになったんです。

旅支度は直前に

 で。

 前日。18日の金曜日になりまして。仕事も終わってね。相変わらず遅くなってさ。一週間でくったくたなんだ。

 ともかく飯食って、とりあえず寝て。

 そりゃあね、夜中に目覚ましをかけたって、起きられるわきゃあないの。

 行くのやめる? って一瞬思ったけど、うだうだっとして、布団と一体化してる身体をベリベリと剥がすようにして身支度を始めましてね。

 支度っていっても、考えられるのは2パターン。

 ひとつは、車中泊すること。日付変わって19日の夜、フェスが終わって車で寝ると。どっか日帰り温泉でも探して、舞鶴の美味いもん食って車中泊するのがひとつめ。

 もうひとつは、フェス会場のある舞鶴周辺はさすがにホテルがないだろうから、福井とかまで移動してホテルを探すパターン。こっちの方が疲れは取れるよね。

 ただね。当日どうなるかがわからないからさ。

 フェスが終わって、みんな駐車場から一斉に出るだろうから相当時間がかかるだろうし、そもそも近県に移動するような体力が残ってるかどうかもわからない。

 だから、下手に予約できないわけ。そうなると、当日の夜に探し始めて、宿が見つかったところに移動するという感じになるだろうと。

 なので、車中泊セットも準備しておいてどっちに転んでもいいようにしておかなきゃいけないんです。

 あとは、移動中は各種充電は車でできるとして、現地に着いてから必要になるであろうモバイルバッテリーでしょ。

 どうやら雨にはならなそうだけど、汗をかくだろうからタオルとか着替えもちょっと多めに積んで。

 忘れちゃいけない、チケットね。本会場のチケットは電子なんだけど、駐車場は紙チケットだからコンビニであらかじめ発行したやつを持って。

 財布も持った。お金も入れた。

 サンダル履いた。お帽子かぶった。出発前のポーズもキメた。

 あーゆーれでぃ?

 おーけーおーけー。じゃあ、行くぞ…!

 そうやって家を出たのが結局3時すぎだったと思います。

夜明けのパーキングエリアにて

 舞鶴ってのは京都府でも日本海側にある街です。その舞鶴の第三埠頭がフェスの会場になってるんですよね。

 なので、内陸を行くよりは富山石川と北陸地方を横断するように走って福井から舞鶴へ入っていくのが一番近そうです。

 普段なら、車で長距離移動ってなるとたいていは好きな音楽をかけて、なんならひとりカラオケ状態で歌いながら走るって感じなんです。

 でもさ。

 これからフェスに行くっていう時に、THE YELLOW MONKEYを見に行くって時に、どの曲を聴くのがいいの? ってなって。

 THE YELLOW MONKEYを聴くのは、フェスでなんの曲をやるかはわからないけどその前に色々聴いちゃうのは、変な先入観とか期待感みたいなものを植え付けそうじゃない。

 かといって、中島みゆきを切々と歌いつつ6時間走るのも、こっちのモードが変わっちゃうから。それも違うでしょうと。

 そうなってくると音楽を聴きながらってのがもう違うんじゃないかってなってきて。じゃあ、録り溜めたラジオがあるからそれでも聴きながら移動しますかってことになりまして。

 そうやって夜が明ける前の真っ暗な高速道路を延々と走ってくんですけどね。

 何年か前に軽くぶっ倒れてからこっち、体調が全然安定しないのね。気圧差とか気温差に極端に弱くなったし、何が悪いのか知らないけど多方面で影響があるの。

 そんなのを抱えてるからなのか、いつもだとそんなに休憩しようってならないんだけど、1時間に一回とか2時間に一回とかそのくらいの感じでパーキングとかサービスエリアとかに寄って。

 元々、高速道路で旅に出るのってあんまり好きじゃないんです。寄りたいところに寄れないじゃん。

 走ってていい景色だな面白いお店があるなみたいなのを見つけても、高速から降りることができないじゃない。早いし便利だけど、やっぱりつまらなくて。

 でも今回の場合、下道で行くってなると着かねぇから。着いた頃にはフェスが終わっちゃってっからさ。

 だから仕方なく高速で行く、行くとしたらサービスエリアとかでそういうつまらなさを薄めておくしかないってのも、あったのかも知れないね。

 けっこうあちこちで、PAなりSAなりに降りてちょっと散歩したりして。

 夜も明けてきて。

 その感じもよくて。

 快晴ってほどじゃなかったけど、夜明けで人の少ないサービスエリアにぽつんといる感じが、旅してるなっていうか。

パーキングエリアにて


MAIZURU PLAYBACK FES 

 そんな感じで、混んでなくてスイスイな北陸道を順調に進んではちょっと止まるみたいなのを繰り返して、舞鶴に着いたのが9時すぎだったと思います。たぶん舞鶴、初上陸。

 特設の駐車スペースはフェスの会場である埠頭から歩いて10分くらいの位置にあって、事前に調べてナビの目的地をそこにセットしていたので、割とスムースに駐車場へ辿り着けまして。

 そこから徒歩で会場に向かうんですけど、大きいイベントだけあって付近のあちこちに誘導のスタッフさんが配置されてて、迷わずに行けちゃう感じでした。

 埠頭だから当たり前ですけど海のすぐそばにある会場について、とりあえずグッズを買って。MAIZURU PLAYBACK FESの公式グッズ売り場はものすごい列だったけど、THE YELLOW MONKEYのグッズ売り場は手薄でサクッと買えまして。

 その後、チケットをリストバンドと交換するブースに行って、ここはちょっと並んだけど間もなく順番が回ってきて、リストバンドを腕に装着してもらいまして。

 そのタイミングで、ちょうどオープニングアクトのアーティストのライブが始まる感じだったので行ってみることにしました。

 MAIZURU PLAYBACK FESの会場は無料のエリアと有料のライブ会場に分かれてまして。

 埠頭の入口が、もともとちょっとした広場というか公園っぽくなってるようで、そこに物販とかフードのエリアが並んでいます。

 そこは無料で入れるとのことで、すでにけっこうな人が集まってます。長い串に揚げたボテトみたいなのがぶっ刺さってるようなのを片手に持ったお姉さんたちが、きゃっきゃして歩いてたりしてて。

 で、その奥の海側に突き出した埠頭は有料エリアで、さっきチケットと交換したリストバンドがないと入れないようになっています。

MAIZURU PLAYBACK FES


 埠頭の脇には協賛している海上自衛隊の艦船が停泊していて、そのすぐ脇にステージがセッティングされてる感じ。要は三方向が海っていう、けっこういい雰囲気なんです。

 そっちの方に入っていくと、かなり広い敷地になってて、ホントにちょうどオープニングが始まるところっぽい。

 こっちはさ、THE YELLOW MONKEYが出るっていうのが頼りで来てるからさ。それに元々からして、旅に出るのにリサーチとかぜんぜんしないタイプだから。

 今日だって舞鶴のことをなんにも知らずに来てるのね。グーグルマップくらいはちょっと見たけど、付近のお店とか観光スポットとか一切知らずに来てるからね。

 だからタイムテーブルは見たけど、オープニンアクトのこともまったく、その、初めましてっていう状態で。

 それが、めっちゃよかったの。

 C&Kっていう、二人組のラッパーでいいの? マイクパフォーマーっていうか。のっけから派手にぶちかます感じで。またフェス映えするような曲だったの。

 どのくらいよかったかっていうと、帰ってからYouTubeとかサブスクで色々聴いたくらいだから。何度も書くけど、音楽の好みはすんごく狭いあたしがですよ。

 二人組って書いたけど、体調の都合でひとりでパフォーマンスだったんだよね。だから機会があればふたりで演ってるのも見てみたいな。

本当に見たいもの 

 海風と港町に囲まれてるフェスの会場は、ものすごくいい空気感だったし、晴れてて暑くなりそうだけど海風があって気持ちいいしさ。

 このままずっとここにいて、知ってようが知らなかろうが色んなアーティストを一日中見てるのもいいなと思ったんです。

 なんかね、印象的だったのはあたしが見たアーティストの人たちほぼ全員が、音楽の楽しみ方は自由なんだよ、フェスの楽しみ方は自由なんだよっていうようなことをMCで言ってて。

 自由にしてていいよ、よかったら一緒に歌ったり踊ろうぜっていうのを、みんな言ってて。

 じゃあずっとここにいるのもアリだな。

 そう思ったんですけど、なにかしらの縁がなければ来ないであろう街に、縁があって来たんだよなっていうのも、心の何処かにあるわけです。

 ましてや、こういうお祭りとかイベントってなると、それに飛び込んで参加して盛り上がって終わったらじゃあさようなら、っていうのができないタイプで。

 気になっちゃう。

 運営してる人たちもいるんだよな。裏方に回ってる人たちもいるんだよな。そういうのを無視できないっていうか。

 あの、例えばレストランとかに行ってさ。

 メシがちょー美味いって評判のレストランに行って、出てくる料理だけ純粋に味わって堪能していられない感じ、わかりますかね。

 厨房の向こうが気になるっていうか。料理よりも、周辺のことの方に興味がいく感じ。テーブルの質感とかスタッフの人たちとか天井の色合いとか窓際でくたびれてるサボテンとか、そっちが気になっちゃうっていう。

 そういう、たぶん病気ですよ。耳鼻科とかに行きゃあなんかそれっぽい病名がつくやつですよ。急性ピエンターレノロロエン症候群とかそんなでしょうよ。

 それで、会場を出てさ。舞鶴の街を歩いて回ることにしたのね。

 やっぱりデカいイベントをやってるってことで、それに乗っからない手はないじゃない。だから、周辺にある居酒屋さんとか、商店街とか出店がでてんだ。通りに屋台みたいのを出して、食いもんとか売ってるわけ。

 盛り上げようとしてるのがわかるし伝わるし、それはイベントの主催者とか直接かかわる人だけじゃなくて、周辺の人たちもそうだっていうのが伝わってきて。

 それってなんか楽しそうじゃん。ホントにそう思ったよ。

 でもさ。

 それが見たいんだっけ。

 あたしがホントに見たいのは、イベント仕様の街じゃなくて、普段の日常の街並みの方じゃないのって。

 いやだってさ、中にはいると思うの。

 フェスの会場からちょっと離れても爆音で鳴ってる音楽は聴こえてくるんです。

 全員じゃないよ、ないけど中には禁止だって言ってんのに有料ブースに椅子とかテーブルを持ち込むバカもいるんだ。

 見た目で判断しちゃいけないとわかっててあえて書くけど、街であったら基本近寄らないような風体のヤカラもイベントってなると寄ってくるわけ。

 いや誤解されないように書いとくと、普通の家族連れもいるよ。カップルも友達同士で来たんだろうなって人ももちろんいるよ。お祭りの屋台に行くノリで来てる中学生もいるよね。

 お前会社じゃ絶対けむたがられてるだろっていうオーラが拭いきれないオッサンだって、推しのアーティスト目当てでグッズのタオルを首から下げて、それがまたどう見ても似合わねぇんだけど、そりゃいるよ。

 野犬の群れに襲われました? っていう感じの、ダメージジーンズっていうかボロ布とどう違うのかわかんねぇのを履いてる上に、この暑いのにもっこもこのフェイクファーを着てるギャルもいるよ。

 だって、フェスなんだから。来ていいんだよ。誰だって来ていいの。

 でも、そういう人たちがいていいのと同じように、そういうイベントをよく思わない、その思いに強弱はあれどそういう人もいるわけじゃん。いていいじゃん。町おこしとかさ、まったく無関心な人もいていいじゃん。

 色んな思いのある人たちがいるのが街で、あたしはそういう人たちとすら無関係な通りすがりの旅人で、だからこそ一面だけを見るんじゃなくて色んなものを見てみたいと思ったんですよね。

30928steps / 25.6km

 その、平熱の街を見ようと思うと、熱の渦巻くフェスの会場から離れていくことになるんです。日常生活をしてる街を見て歩こうとすると、どうしてもそうなるわな。

 歩いたねぇ…

 やたら無駄に歩き回ったよね。

 結果、3万歩弱。25kmだって。この日だけで。

 25kmだよ。家から500km車で走ってきたんだよ。歩いて25kmって。

 あとねぇ、32度だった。この日の舞鶴。気温が32度だったよ。4月だぜ。そんな中を25kmも歩いちゃダメだって。車で500km移動した挙げ句に25kmも歩いちゃダメだって。

 だってさ、ハッて気がついたらなんか知らないけど、舞鶴の市民会館だかそんなところのベンチで休憩しながら、コミュニティFMみたいなのが流れてるのを聴いてたもんね。誰だよ、市民ヅラしてさ。

 けっこうきれいな駅もあったし、その周辺に昔からあるような商店街も歩いたし、舞鶴って海沿いからすぐ山になるんだけどそのふもと沿いに並んでるお寺とかも見たし、ちょっと郊外のスーパーマーケットにも入ったし。

 古き良き地方の街って感じだったな。寂れてもいるけど、活気がないってことでもないし、子供とかが走り回ってたり、白のランニングシャツのじいちゃんが軒先で植え込みに水を撒いてたり、たまに同じリストバンドしてる人とすれ違ったりして。

 旅に出たからにはその土地にお金を落とさなきゃみたいなのも自分の中ではちょっと違うし、でもそんなのをきっかけに多少なりとも儲かってほしいとも思うし、ウエルカムようこそどうぞどうぞみたいのも引いちゃうし、かといって閉鎖的なのも嫌だしさ。

 なんかそんなことを、ずっと考えてたな。


橋

tobacco

桜

橋2

路地

新聞自販機

路地2


追いかけても追いかけても逃げていく月のように

 THE YELLOW MONKEYは、よかった。よかったすぎた。語彙力とか舞鶴に置いてきたよね。あの埠頭に置いてきたよ。

 思ったのは、THE YELLOW MONKEYを知らない人にはなんのこっちゃだろうけど、気配がね。パンチドランカーとかSICKSとかあの時代の気配がすごくしたんだよね。曲もそうなんだけど立ち振舞にそれを感じた。

 あの人達もう50代後半から60代なんだよ?

 ギターのエマはマイカーで自走してきたって言ってて。東京からだと思うけど京都まででしょ。あたしと同じかワンチャンそれ以上の距離、あるからね。それでライブ1時間やってっから。60歳。

 ベースのヒーセとかこのフェスの日が62歳の誕生日だったんだから。舞鶴にちなんで鶴の刺繍だったかが入ってる赤いシャツ着てんの。62が。

 そんな50代60代いる?

 こっちも色々あって歳を重ねちまってるけど、あっちもあっちで色々あってここまできてて。

 その物語みたいなものが、THE YELLOW MONKEYの4人にかなうとは思っちゃいないけど、会場にいる人それぞれが、そういうのがあっての経ての、今っていう。

 ここに、舞鶴にいるっていう。

 なんでとか知らないよね。辿り着いたってだけで。理由とか知らないよ。でもそれがなんか、見たかったものじゃないかなって。

夜のフェス会場


 演奏後、海の方から花火があがって。

 もう、声とか出ないよね。ただただ無言で花火を見てた。あんなに花火を食い入るように、言葉もなく見たの、初めてかもしれない。

緊急クエスト:土産を探せ! 

 いいもの見たよ。楽しかった。しあわせだったよね。

 さあ、現実が待ってるよ。あたしゃどうすんの。この後どうすんの。

 もう、テンション的にはこのまま帰ってもいいかなって。0泊2日で帰るのもありかなって。

 でも、予想通りだったんだけど、駐車場から出るまでも時間が必要で。

 そうだ、お土産とか買ってないよね。フェスのフードエリアで舞鶴名産ってのを食ったけど、肉じゃがとホルモンうどんってのだったから、土産には向いてないじゃん。

 かといって街をさんざん歩いたけど、それっぽいものには出くわさなかったんです。フェスの会場近くには鮮魚センター的なのはあったけど、真っ昼間の夏みてぇなお日柄なのに鮮魚は無理じゃん。

 唯一、思いつくのはスーパーマーケット。夜の8時を回ってるから、普通の土産物屋みたいなのはとっくに閉まってるし、売ってるとしたらスーパーしかないだろうと。

 で、とりあえず、グーグルマップでスーパーを検索して、まだギリで営業してるところを探すとあるにはある。とりあえずダメもとでそこへ行ってみようってことで、たぶんフェス帰りの渋滞の列から離れて、近くのスーパーへ向かったんです。

 店内に流れてる蛍の光もかなり佳境になってるスーパーに入っていきましてね。

 こっちも百戦錬磨ですから。昨日今日じゃないから。伊達にスーパーマーケット巡りとかやってねぇから。

 初めて入るスーパーだったんだけど、地元のお土産を売ってそうなのはココ、ってところにピンポイントで向かってまんまと置いてあったもんね。

 そこで、よく見もせずにバババッとカゴに入れて、ついでに夜ご飯になりそうなものも見繕って、閉店寸前で店から出てきたんだけど。

 あとでよく見たら、買ったのは石川県のなんとかって有名なお菓子だったよね。まあ一応、会社で配ったよね。だから会社では石川県に観光に行ったことになってるよね。フェスとかひと言もしゃべってねぇから。

 なにしに行ったの? あー…まぁちょっと、あははは… 的な。

 なんなの? あたしゃなぜ石川土産を配ってんの?

まっすぐ帰れない 

 それで、宿を探すにしても車中泊にしても、とりあえず京都を脱出する必要があるってことになりまして。

 それで北陸道に乗ったんですけど、さすがに足がボロボロで。右足がちょっとしびれてんだ。

 これで500km、6時間以上運転は無理だろうってことで、とりあえずパーキングエリアに入って仮眠を試みたんだけど、これが思いの外うるさくて。空いてる駐車スペースもちょっとよくなくて。

 じゃあ、もうちょっと進んでみようってなって、結局石川県に入ったあたりのサービスエリアでちょっと眠れたんです。

 シートアレンジすると足を伸ばして眠れるようになるので、車の中とはいえゆっくりできまして。朝になって、まだ違和感は右足にあるけれどこれならイケるかなっていう感じになってて。ちょっと散歩したりして。

 と、同時に、このまま高速で帰るのもつまらないという思いが出てきちゃったもんてすから、そのまま高速を降りて、石川県の小松あたりから下道を走り始めました。

 そりゃあもちろん、THE YELLOW MONKEY縛りで音楽を流しつつ、ひとりカラオケですよ。延々と。

 で、北陸に来たし、8番ラーメンっていうチェーン店があるんだけど、それを食べようじゃないかと。旅らしい食い物とかさ、そういうのがいるでしょうよ。

 それが案外、立ち寄りやすいところに全然ないまま石川を抜けて富山まで来て富山市も越えてようやく見つけるっていうね。

 そのラーメン屋が配膳ロボットを導入してて、なおかつ昭和のコントに出てくるようなおっちょこちょいな店員さんもいるっていう。かるく怒られてて。

 もうね。なぜあたしが行くところはそうなるの。なに、配膳ロボットとおっちょこちょいな店員って。近未来とド昭和っていうかさ。どうして同じ店舗にいるの。どうしてよりによってそのお店に行くの。なんなのもう。

 そこから、ちょっと足を伸ばしてスーパーにも寄ったんですけど、色々なテナントが入ってるショッピングモール的な感じの建物があって、そこに行ってみたんですけどね。

 そこにマッサージのブースがあって。

 こっちはさ、足がもう限界にきてるの。特に右はもう自分の足だかなんだか、よくわかんない状態なわけ。

 これは、縁があると。たまたま寄ったショッピングモールにマッサージのお店があるなんて偶然あります?

 で、お店の入口を覗くと、どうやら個人でやってるお店っぽくて。ベッドがふたつあるのは見えるんだけど、そのうちのひとつはカーテンが閉まっててどうやら別のお客さんを施術中っぽい。

 いくら地方の、テナントが全部埋まってないような、むしろちょっと空きスペースが目立つようなショッピングモールっていったって、個人でその一角を借りておそらくテナント料を払ってもやっていけてるようなマッサージ店ってことでしょう。

 これは相当、ウデがあるんじゃないか。特に大々的に宣伝してる様子もないけど、ゴッドハンド的なさ、老師みたいな人がいる感じの。

 でも空いてないっぽい。

 でもでも、あれじゃね。ショッピングモールの中を見て回ったりしてるうちに、空くんじゃないの?

 それで、また歩き回ることになるんだけど。スーパーの他にも洋服屋とか魚屋とか軽食とかがある喫茶店みたいなのとかが、テナントで入ってるんです。

 美味そうな鮭の、甘塩じゃなくて塩辛い焼き鮭を見っけたりして。

 その後、「本気の鮭弁」って銘打たれたお弁当も見つけてみたり。買ってみたり。鮭に鮭だけども。鮭&鮭だけれども。鮭 フューチャリング シャケ。

 それでも空かないの。まだ施術は終わらないの。

 さすがにもう無理だなと。空いたとしても別の予約がある可能性もあるよね。

 縁はなかったか。仕方ないか。

 それが未練だったんだよね。

 冒頭のマッサージのお店に辿り着くことになるの。すごいパワーでぐいぐいくるお姉さんに辿り着くことになるの。ベッドの端っこをぎゅって掴んで施術に耐えることになるんだよ。

 なんなの? どういうことなの? なんでつらいの?

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