電車で旅をしたけれど

2025年6月29日日曜日

#食べもの #鉄道 #旅

t f B! P L

 日々。

 日々、色んなことを考えるわけです。

 大抵は愚にもつかないようなことですよ。そうであっても、日々そのタイミングでしかやれないなってことは、なるべくやったほうがいいんじゃないか。そんなことを考えるんです。

 考えてやってみて、どうなったかはまた別の話で、とにかくやってみよう動いてみよう、みたいなことがどうなったか。そんなお話です。

ソフトクリーム


雨が降り出すその前に

 梅雨に入りまして。

 梅雨っていっても長雨が続く年もあればそうでない年もあったりして。でも、雨が降る可能性が高いってことを念頭に置いて行動しなきゃならないってことには、変わりないじゃないですか。

 ちょっとした旅をしようと思ったなら、なおのこと。

 最近じゃ天気予報もかなり先の事まで予測として教えてくれますから、だいたいこのあたりになると梅雨入りだ、みたいなこともまあまあ前からわかったりしますよね。

 じゃあ、梅雨入りする前にどっか行く?

 これから雨が降ったら、またしばらくはそういう機会に恵まれないかもしれないじゃない。

 それで色々考えた結果、行くんなら電車の旅がいいなと思ってまして。

 いくつかの記事にも書いた気がしますけど、体調の不安定さがあるので電車とか公共交通機関を使った旅にはちょっと抵抗があるんです。どっかで倒れたら迷惑をかけるかもしれないし、そもそも乗り物酔いをするようになってるし。

 でも、何度か公共交通機関での旅も実行してきたりしてて、どうにかなるっぽいと。薬とか、いざとなったらこうやろうとか、そういうノウハウを得つつあるっていう実感もあるんですね。

 ひとつ、行きたいなと思ってるのは、山形の酒田。ここはちょっと行ってみたいお店がありまして。

 ここへ電車で行けないかと、色々調べてみた結果どうやら工事か何かで直行する電車がある区間で不通になっていて、そこはバスで代替運行しているらしいんです。

 そうなってくると、ワンハードル上がっちゃう。ちょっと今回はパスかなぁみたいなことになって。

 じゃあもう一か所。富山にも行きたいところがありまして。

 こっちは朝からがんばって乗り継いで行けば行けなくはないんですけど、そのお店の定休日とか混み具合とかを考えるとイマイチしっくりくる日がないということになり。

 じゃあもう、ふて寝じゃね?

 どこにも行けやしないんだろ。どうせどこに行ったっていいことなんかなんもないんだろ。

 ふてもふて。ふってふてですよ。二度と旅なんかするもんかっていう。

 思えばこのへんから不安定だったりしてるんですけどね。

 こうなってもだいたいは、そうね翌日くらいにはまたどうにかして行けないか、ネットで色々調べてみたりするんですけど、そういう時はだいたいダメなもので。

 そもそも旅の計画をそんなに詰めないんです。毎回そんな感じ。ザックリと行けるかな、くらいで出かけちゃうことの方が圧倒的に多いのね。

 それもこれも車移動の旅がメインだからなんです。車ならとりあえず動いてさえくれれば、行こうが戻ろうが自由じゃないですか。行きたきゃどこまでも行きゃあいいし、嫌ならいつでも戻ればいい。

 けど、電車とかバスでってことになるとそうはいかない。時間に縛られるし、基本は相席相乗りなわけでたまたま近くに来た人によっても左右されるわけです。

 わかんないけど、その、例えば吉岡里帆みたいな人が隣に座ればさ、悪い気はしないでしょうが。

 イマドキの若い女性向けに例えを変えると、ジェームス・ディーンが隣に座ったら、旅も楽しくなるでしょう。例える人を古くするってやりかたですよ。よくあるやつです。

 でもわかんないじゃん。隣の席の人が若い頃の篠原ともえか今の篠原ともえかで全然変わってくるじゃん。公共交通機関の旅って、そういう運もあるからね。

 んで、話を戻しますと、シノラーの格好をいったん脱いで。仕舞って。タンスに仕舞って。

 え、隣に座ったのお前なの?

 仕舞えって。無駄話を仕舞いなさいよ。

 で、話を戻すと、結局ダメだなと。電車旅とか、なぁ、みたいな。

 そんな感じになって、もうあきらめるかなと思ってたところに、別の目的地を思いつきまして。

 それも電車で行ける、というよりも車で行きにくい地域ってことで、さらには日帰りで行ってこれるから宿とかの面倒もないと。

 丁度いいじゃんとばかりに家を出たのが、6月の初旬だったと思います。

うおー&さおー 

 これも何度か書いた気がしますけど、今いるところは電車の駅からはけっこう遠いんです。歩けなくはないけど、足が折れる前に心が折れちゃう距離っていうか。

 だからってバスが、都会みたいに頻繁に往来してるってことはなく、基本みんな車を持ってますよねっていうのが前提の街なんです。

 だから、電車に乗ろうと思うと、どうにかして駅前まで行くことになると。それも一時間に一本あるかないかのバスに合わせて出発することになりますから、普段やってる思いつきであちこち出かける気楽さ自由さと比べちゃうんですよね。どうしても。

 で、最近のサービスで、シェア駐車場っていうか駐車場マッチングサービスみたいなのがあって。

 要は土日はその敷地は使ってなくて空いてるから、車を停めてもいいですよっていう地主さんと、この辺でどっか駐車場ないかなっていう人とを結ぶようなのがあって。

 よくある時間貸しの駐車場って特に駅前なんかはまあまあ高いし埋まってるしで、電車の旅に出ようっていう時に車で駅前まで行ってっていうのはそもそも選択肢に入れてなかったんですけど、そういうサービスがあるのを知りまして。

 で、調べてみると駅からそんなに離れてないところでも、けっこう条件のいい駐車場があるんですよ奥さん、ってのがわかり。

 一度はそれを利用してみたいと思ってたんですけど、今回は駅に近いのが空いてないみたいなことになりまして、結局バスで向かわざるを得ないという。

 じゃあ書かなきゃよさそうなもんですけど、この右往左往感がやっぱりさ、言いたいのよ。気持ちが揺れてるわけ。

 行けるかな、行けないな、いやでもこれなら行けそうだ、いややっぱりみたいなことが、あたしの中では起こってるわけです。

 ただただ電車で出かけてきたよーってだけのことだとしても、2行でいいじゃんってなるのはさ、そんなのおかしいでしょうよ。

 こちとら色々あっての、経てのやっての旅番組なわけですよ。

 …え、旅番組なの?

 いや、旅番組じゃないけど、どっちかっていうとバス旅とかちい散歩の放送のないやつなんだから。全カットだよ。全カットもなにも放送予定がそもそもないしギャラも出ねぇっていう。

 それをブログにするにあたってね、2行は無理だって。2行は悪魔の所業だって。

 よくあるじゃん。

 なんか知らねぇおねえさんがさ、沖縄行ってきたよー☆ みたいなやつ。写真をバーって載せて。たのしかったー! 以上、みたいなブログあんじゃん。

 あんなのはやだよ。自分でやるならやだって。他人様は好きにすりゃあいいよ。キャンプ行ったぜウェーイ! 以上、みたいのもそれでいいならそうすりゃいいよ。

 こっちはさ、どっか行く度になんかアレな目に合ってるわけ。このブログもフェイクは入れてますよ。あったことを100%正確に書いてませんけどね。そりゃそうだよねジェームス・ディーンが隣に乗ってくるわけもねぇから。シノラーでもねぇし。

 でもそのまま書いてることもまあまああるからね。なんでっていうくらい、変なことに実際にあってるから。出会っちゃってるから。

 書くよ。ほぼその通りに書きますよ。そうじゃないと浮かばれないんだって。

ダメ人間あらわるあらわる 

 その日もかんたんに支度をしまして。

 駅前までバスで行こうということで、いつも持ち歩いてるアイテムたちを、ひと回り大きめのバッグに詰め替えて。そこそこ歩くつもりなのでそんな身なりをして。

 去年買ったイヤフォンをつけてね。その時の気分にあった音楽をかけて。

 まだ朝の8時ですよ。バスに乗り込みまして。

 どうしよう、書こうかな。あんまりよくないかな。

 ほら、あたしって清純派じゃん。清純派で通ってるじゃないですか。

 今の世の中、ちょっとしたことで叩かれて表舞台から退場しちゃうでしょう。

 そりゃ悪いことしたんでしょう。したんでしょうけど、みんなで叩くよね。叩いていい奴を見るとみんなで集中砲火だよね。

 えーとね。

 バスでビールを飲みますよ。

 いいよね、いいですよね。バスだって禁酒とは書いてないもん。密造酒じゃないもん。正規のルートでちゃんと売ってるやつだもん。ちゃんと飲んでいい年齢なんだもん。

 たまにツイッターで17歳でーす☆ とか書くことあるけど、ホントは22歳の読者モデルなんだもん。ピッチピチの。クイズ歳の差なんてでいうところのヤングチームなんだもん。

 しかも運転しないんだぜ? そりゃ飲むよ。六角精児バリの。呑み鉄じゃなくて呑みバスだよ。

 そりゃ朝の8時からビール飲んでるやつはクズですよ。ここがドイツならそれが普通かもしんないけどさ。色々わかってっから。それでも飲みたいなってなってんだから。

 一応ね、なるべく人のいない隅っこの席に行きまして。休日の朝なんて、しかもド田舎のバスなんてだーれも乗ってないのね。

 他に客はふたりくらいだったかな。そりゃバス会社も値上げするし廃線とかも考えるわな。

 家の冷蔵庫から保冷用の缶ホルダーに入れて持ってきたのがあるんです。

 …うまいねぇ。

 なんだろう、もうね、なんかもう、うまいねぇ。

 車窓に流れる街並み。初夏めいてきた陽射し。苦みと清涼感のあるビール。

 これはいけませんよ。もうね。無理だって。

 ダメになろう。もう色々とどうでもいいよ。今日はもうダメ人間でいよう。なんかまともであろう、みたいなことはさ、置いていこうよ。捨てていこう。

 今日はもう、このままでいよう。

相席・ジ・エンド 

 そのまま大きな街に出ましてね。

 事前に調べた時刻表では電車が出るまでまだちょっと時間があったはずと思って、駅ナカの売店でおつまみを買ったりして。

 それから、チャージしておいたSuicaでピッとやって入場して、普段乗り慣れない駅をウロウロしつつ乗り場を探してローカル線のホームに行ってみると、もうすでに電車が止まってまして。

 けっこう客がいて、あたしが電車に乗り込んだ時には窓側の席がいくつか空いてたんだけど、あたしの隣の席もすぐに埋まっちゃって。

 やがて出発したんです。

 飲みたい。旅してて、運転しないんならそりゃあ飲みたいよね。

 でも混んでるんだ。しかも向かい合わせの席に座ったんだけど、目の前の席に座ってきたのが、萬田久子に空気を入れすぎたみたいなオバサンなのね。もともと入れる必要がないのに。

 爪楊枝で刺すとバウォン! ってならなきゃおかしいだろっていうようなオバサンが、どこのヴィレッジヴァンガードなら売ってんだよっていう感じのおどろおどろしい帽子かぶってんだ。

 こっちも座るなりビールを出してたんだけど、様子を見てから開けようかなと思ってるうちにパッツンパッツンの久子がぎゅーって座ってきたしさ。

 正確には萬田パツ子が来る前に、あたしの斜向かいの席に、これもまたちょっと特徴のある、その、定年の前の年に社長のお情けで主任に上がった感じのオジサンが座ってきて。もう常にキョロキョロしちゃってんだ。

 その横にぎゅーって座ってきた形になったもんだから、さらにちっちゃくなってのね。

 もうね、いたたまれないの。公共交通機関ってこういうのがつらいよね。車内も満席だし、結局、一番飲もうと思ってた場所だったローカル線の中では飲まずに、目的の駅まで黙念としてたんです。

ふらふらとさまよいて 

 混み合う駅から吐き出されるように出まして。

 ここからは自由だから。好きなように歩けばいいし、何を飲もうが構いやしないから。

 ちょっと陽射しがある中、とにかく歩こうという謎の行動指標に背中を押されて駅前の道をトボトボトボトボね。

 周りの人は陽気に釣られてか、それともそういう街柄なのか、やたら肌の見える格好の人やら子供連れやら作務衣ロン毛じじいやら声高な異国語でずっと話してる人たちやらでいっぱいで。

 当然こっちは、そういう人波からはどうにか逃れようとするわけです。住む世界が違うから。泥濁り界に住んでるからこっちは。

 この辺りは初めて来たわけじゃなく、むしろ一時期は仕事でよく通ってたような街並みでね。変わったところもあれば変わらないところもあるなと思いながら、サンダル履きでヒタヒタと街をすり抜けていくんです。

 目的地として、一応のやつはなくはない、くらいの感じで、なにか見つかればそっちへ行こうと思っていたもののイマイチ身体の調子はよくない。

 人混みにアテられたか、いやさっきの萬田パツンパツンの圧のせいか。

 違うんだよ、電車の席がね。進行方向と逆向きのに座っちゃってさ。ホームに降りた時はもう電車が止まってたから進行方向がどっちかわかんなくて。

 とりあえず他に客もいるしと思って、えいっ! って座ったら後ろ向きに走っていくの。それが気持ち悪いのなんのって。三半規管がぶっ壊れてるから、脳がゲヨンゲヨンになっちゃって。

 窓の景色を見てると気持ち悪いから目線をズラすと萬田じゃん。萬田はキツいなってもうちょっとズラすと、さっきよりももっとちっちゃくなってるオジサンがいるじゃん。

 もうスマホでYoutubeのかわゆい子猫の動画とか見てるしかないんだもん。脳を浄化しないとっていう感じで。

 それを一時間以上やっての街歩きだから、また気温もそこそこ高くて。もうなんかクラクラしてきてさ。

 それでとにかく歩いて、目的の場所までいかないと浮かばれないと思って。せめてそれを達成してから成仏したいと思ってさ。

 ふらっふらなんだけど歩いて歩いて、辿り着いたのがラーメン屋っていう。

カウンターの片隅に居てもいいですか

 その、そんなにしてまでとお思いでしょう。

 そこまでして行きたいラーメン屋なんて、さぞ美味いんでしょうねと。

 違うの。味はねぇ、普通。

 なんか比べるのも違うなと思うけど、頭にタオル巻いて腕組みしてる系の、超電光ローリングレインボー湯切りとかするような、湯切りをした瞬間に厨房に虹がかかるでおなじみの、ああいうラーメン屋じゃないんだ。

 エビの風味を活かしながら特別に取り寄せた塩と、あえてパスタっぽい麺を製麺所で打ってもらって出来上がった、新しいけどどこか懐かしさもある小洒落系ラーメンとも違うの。

 普通の。ごくごく普通の。

 味も見た目も店構えも店員さんも客ですらごくごく普通のやつ。

 うっすら流れてるテレビも、30年前と同じ番組をやってんじゃないかと思うような、ずっと変わらない日常以外の何物でもないお店があって。

 たまーに行きたくなるのね。そこに行って、ちょっとゆっくりラーメンをすすって帰りたいっていうか。

 年の一度も行かないから、前回行った時と店員さんも違うし客の入り具合も違うけどカウンターの片隅に座ってね。

 自分がその風景にカチッとハマるかどうかを確認したりして。居ていいかどうかを見定めたりして。

 餃子なんか頼んじゃったりして。

ラーメン

餃子

 お昼時になって混んできたし、後腐れなくサッと店を出たのはいいんだけど、さてどうしようかと思って。

 とりあえずソフトクリームとか食べてみたりして。

 ちょっと辺りを徘徊してみたりして。

 …うん。

 あんまり居心地よくないねとなりまして。

 なんでとか知らないよね。そう思ったんだもん。思ったんだからしょうがねぇじゃねぇか。

 いやわかんないよ、もういっこソフトクリーム食ったら機嫌よくなったかもしんないけどさ、ラーメンと餃子食ったあとでソフトクリーム2個はダメだろうよ。

 しかもソフトクリーム買って店を出たあとでだよ。もう一回同じソフトクリーム屋に行ってさ、ソフトクリーム下さいってならないでしょうよ。

 店員さんだって、いくら夏みたいなご陽気で次から次へ客が来るっていったって、ついさっき来たやつの顔くらいわかるって。

 じゃあソフトクリームはダメだと。どうしよう。

 トボトボ街を歩いて、やっぱここには居られないんだってなってんの。陽射しも痛いし、目的は果たしたしね。

 でもでも、帰るっていったってちょっと早すぎやしませんかと。そのせめぎあいになって。

 …そうだ。

 もうちょっと歩くと、たい焼きのお店があったよな。そこは確か昔ながらのお店で、変わらない風情のままずっと営業してるような感じだったような。

 さっきのラーメン屋さんのあの感じがあって。それに引っ張られてるのね。もうちょっとあの感じの空気感に触れてみたいっていう気持ちがどっかにあるんだ。

 暑いのにたい焼きもどうかと思うけど、甘味だろと。こういうなにか不安定な気分を落ち着かせてくれるのは甘味だろうと、また歩き出すわけ。

 こういう時はひらめいたことをやってみるしかないの。あれもダメこれもダメ、ここも違うあそこも違うってなってんだから。

 これはね、あたしにはよくあることで。

 旅に出て行ってみて、行く先々でここもいいなあそこもいいなってなることもあるんです。

 でもその逆にどこに行ってもただただツラいっていうこともあるのね。

 理由はさまざまですよ。

 選んで選んで選び抜いて入った飯屋で客と店員が大喧嘩してるとかさ、ここなら安心と思って入った大手外食チェーンがまさかのオープン三日目でヘルプの店員さんですら諦めきってる修羅場になってたりさ、ウェルカムコーヒーがしょっぱかったり。

 なんなの、世知辛いの?

 こっちの間の悪さとか、体調とか気分の問題もあるんだけど、そんなことあるってことが続いたりもするわけ。

 そうなったらもう、この街には呼ばれてないんだと思うじゃん。好かれてないなと思うじゃない。

 だったら違う街に行くよね。そんな、いいことのない場所にずっといる義理もないわな。

ピークアウト 

 だからもう、その日はね、そういう日だったと思うんです。ラーメン屋はよかったよ。店員さんもいい人だったし、相変わらず美味かったし。ソフトクリームも美味かった。

 そこがピークだったかも知れないなと今なら思うのは、向かった先のたいやき屋の前で動画撮ってるオッサンがいてさ。

 前でって行っても、そのたい焼き屋は通りの角に建っててね。目の前は大通りでそこそこ車も多いし、昔ながらのお店だから前に駐車場はおろか歩道もないの。大通りの角を曲がったすぐが店なわけ。

 その店の外観を撮影しようと思ったら、遠くから、要は道路の真ん中くらいの位置から撮らないと全景が入らないんだけど、オッサン、そこに立ってんの。

 道路の真ん中に。

 マジで。轢かれそうになってるっていうか、車のほうが当たり前だけど避けてるから轢かれてないけど。

 撮り鉄がなんかいい感じで撮影したくて邪魔な木を切っちゃったり入っちゃいけない所に入ったりして、一部なんだろうけどそういう人たちがお騒がせするじゃないですか。

 アレだよ。目の前にいるの、アレだって。しかもまあまあデカい声でYoutubeのオープニングみてぇなのしゃべってんだ。はい今日はですねー、なんとかってお店に行こうとおもいますー、みてぇなの。

 …もうね、こんなことある?

 そりゃあさ、こういう時代でさ、誰でもカメラを持ってて撮影して、それを誰でも見られるメディアに掲載できるわけじゃない。知らない誰かが動画を撮ってるんだろうなっていうのに出会うこと自体は、あるかないかで言えばそりゃあるよね。

 それにさ、やればいいよ。そういうのがやりたい人はやればいいと思うよ。それこそ迷惑にならなければやればいいよ。

 でもヴァカもやれるわけ。馬であり鹿でもある、通称ヴァカもやれちゃうんだ。

 それがこんな地方の街の、ちょっと有名っていったってたかがしれてる甘味処に、しかもあたしが行ったタイミングでドンピシャでいるっていうさ。

 もうダメだよ。終わりだよ。このあとあいつ、孤独のグルメが拡声器持ったみてぇな感じでワーワーやるんだろ?

 「たい焼き食ってみた」みてぇな動画上げてブログも書いてインスタもアップなさるんだろうよ。ヴァエにヴァエたお写真をアップかつロードなさるんでしょうよ。食べログにも3.4くらいつけるんでしょ。最近ダイエットしてるのにたい焼きが甘すぎたので星ひとつ減らさせていただきますとか書くんだろうよ。

リベンジの連鎖 

 たいやき屋さんには寄りましたよ。しばらく遠回りして、居なくなったであろう頃にお邪魔しまして。

 変な客が来ませんでしたか、嫌な思いはしませんでしたかと妙な気持ちになりつつ、たい焼き、買って帰りました。名誉のために言っとくと、たい焼きはマジで美味かったよ。それであたしの、この勝手な意味のわからない行き場のない気持ちはちょっと救われたよね。

 …そうね…

 もうちょっと普通の、そんな素敵な出来事はいらないから普通の一日はないの?

 なにかする度にだよ。こっちがなにか、よかれと思ってする度に、なにかわけのわからないことが寄ってくるのはなんなの?

 また行くけどね。また旅に出ますけどね。

 リベンジだよね。毎回リベンジ。

 そんなだよ。そんな。

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