山形初秋旅 嵐の前の芋煮 - Time goes around
深夜、暴風警報が発令された山形県は庄内に滞在しているお話の続きになります。
車内にいると、スマホから流しているラジオの音が聞こえないくらいの雨。
車を大きく揺さぶるような風が断続的に吹き、雨は降ったり止んだりを繰り返しながら、徐々に強くなっていくようでした。
今回は台風直撃コースの真下にいることになりますから、車を停める時に周囲に風で飛んできそうな物がないか確認したとは言え、何事もなく通過してくれないかなと思わずにはいられません。
旅はまだ途中
こういう環境下でもぐっすり眠れる体質ですし、耳栓を持ち歩いているので、そのへんの問題はないのですが、いかんせん偏頭痛に悩まされております。手持ちの薬は飲んでみたものの、そのくせ飲酒したりしているので、治らないのは当たり前とでも思っておきましょうか。
それでも、旅を止めて帰路につくという選択肢は1ミリも浮かんではきませんでした。
むしろ、観光地にも有名店にもどこにも行ってないにもかかわらず、いや逆に、ただここに居るということそのものが楽しくなっていました。
考えてもみれば、台風が直撃する中ですよ、知らない街でしかも車の中で一夜を明かしているのか、自分でもサッパリ意味がわかりません。
外を歩くのもキツい強風の中。グラグラ揺れる車内で、自分でも驚くほどシーンとした、静まり返った気持ちでチビチビと缶ビールを飲んでいると、来てよかったなぁと心の底から思っちゃうのです。
旅って多分止められないでしょうね。
台風による若干のわくわく感を覚えつつ、ネットなどで台風関連の最新情報を見ながら、ツイッターをボンヤリ眺めたりラジオクラウドで録りためたラジオを聞いたりして、夜を越えることにします。
そのうちに暴風雨も、偏頭痛の断続的かつ金属的な痛みもいつしか夢の世界へと遠のいていったようです。
翌朝。
風雨は弱まる気配がありません。ニュースを見る限りは、台風18号はすでに北海道沖まで抜けていっているようです。
ですが、まだ暴風雨といって差し支えない状況です。
車の窓ガラスの運転席側半分は、洗車機で洗われているような状態ですが、逆向きの助手席側のガラスは下手すると乾いてるんじゃないかと思うくらい、横殴りにもほどがある雨なのです。
道の駅の中にあるゲートボール場にもさすがに人はいませんし、スーパーやその他の施設も開店時間まではまだありますから、周囲に人の気配がほとんどありません。そりゃあそうですよね。
ただ幸いなことに、ずっと降りっぱなしということはなくて、ちょっと止んでいる間にトイレまで行ってくる程度のことは可能でした。危うく旅に出ているのに立て籠もりになるところでしたよ。
そうはいってもこの天候じゃ、やることなんてないわけで。そうなると、あまりポジティブな方向に思考は向かなくなるわけですよ。
買い置いておいたオレンジジュースを飲みながら、今頃になって山形情報を検索したりしてね。
なんとかっていうラーメン屋美味そうだな!
・・・行かないけど。
天童市じゃ9月30日まで、くちびる美人コンテストってのをやってるのか。面白そうだな!
・・・行かないけど。
あのね。
山形に居るんですよ。居るっていうのに行かないけどのオンパレードですから。
もうとりあえず嵐がすぎるまで何もしなくていいやモードになっていまして、結局風が弱まった午後の2時ころまで動くことはありませんでした。
もうとりあえず嵐がすぎるまで何もしなくていいやモードになっていまして、結局風が弱まった午後の2時ころまで動くことはありませんでした。
公園へ行こう
そのうち、やけに明るくなったなぁと気がつきまして。外へ出てみると、相変わらず雲の流れは早いものの、降ったり止んだりだった雨は、止んだりのままになっている感じ。どうやら峠は越えている様子です。
周囲を見渡しても被害らしい被害は見当たりませんし、まあひと安心といったところでしょう。
そうなると今まで閉じこもっていたぶんの反動が来たんでしょうね。
さんざん行かないけどになっていたのに、そういえば鶴岡市の方でちょっと行ってみたいところがあったな、なんて思いだしまして。
久しぶりに散歩に連れられていく子犬のようなテンションでエンジンを始動し、道の駅を離れました。
やってきたのは鶴岡公園。
元々は鶴ケ岡城があったようです。現在は近くには市役所などがあり、鶴岡市の中心部に位置しています。
以前来た時は紅葉の季節でね。
このあたりの木々が紅く色づく感じや落ち葉が歩道をひらひらと舞う様子が、なんかちょっといいなと思ったのでした。
その時は駐車場を見つけられず、通りすがりだったもので降りてみることはなかったのですが、今回はちょっと離れた場所に駐車場があるという情報をキャッチしていますから、あらためて行ってみようということなのです。
その鶴岡公園まで来たものの、見つけたのはバス専用駐車場。
バス専用と言いつつ乗用車も停まっちゃいるのですが、だからと言ってそれに乗っかって停めるのもなんとなく気が引けます。
一旦バス専用の駐車場に乗り入れると、周辺地図が載った看板があって、他にもやはり駐車場は有ることが判明。地図の通りに車を回してみると、ありましたありました。
比較的空いている駐車場に車を停め、念のためスニーカーに履き替えて、鶴岡公園を目指してトボトボと歩き始めます。
時折、台風の名残風がザァっと吹いて、湿っぽい空気を吹き飛ばしていきます。しばらくは晴れるのかもしれません。
先程のバス専用駐車場の横が公園の入り口のようです。
鶴岡公園に実際に来てみると結構な広さ。
ウォーキングをしている人や、ショートカットとして公園内を通っていく感じがする自転車。さらには車も通ったりして、これは見て歩く甲斐がありそうですよ。
入り口脇にあるお稲荷さんを軽く見たあとに、公園の奥の方に進んでいきます。
明治初期に各地の城が廃止され、鶴ケ岡城も例外ではなかったようですが、その頃からあったものなのかそれとも後に植えられたものなのか、古い木が目立ちます。
ヤマタノオロチもビックリな感じに枝分かれした木が生えていたり、ほぼ水平に伸びる幹をもつ木があったりしてね。桜の木ですかね。
それらがこの台風にも負けずに生き残っていたりして、見ていて圧倒されます。
いい感じにしわくちゃの爺さんとかいるじゃないですか。老兵って感じの。ああいう感覚ですね。
さらに歩いていくと外周の一部と園内にお堀がみえてきます。
当時のものを使っているのかどうかはわかりませんが、鳥たちがスイスイと泳いでいましてね。和やかな、いい雰囲気ですよ。
ところが、鳥の群れが水面を漂うのを見ていたら、いつの間にかポツリ。
すぐにまたポツリと。
台風も行っちゃったし、これから晴れるんじゃないの? なんていうのは手前勝手な思い込みだったようで、和やかな空気はどこへやら。次第に雨が強くなってきます。
鶴岡公園ってね、広いの。すごく広いの。
車へ戻るには相当距離がある位置にいるのはわかるんです。
だからって、傘なんて持っているわけもありませんから、どこかで雨宿りをと公園内を見回すと、屋根のある高台を発見。
堀のそばを小走りで離れて屋根のある休憩所のような所へ飛び込んだ頃には、ザーッと音を立てるくらいの雨となっていました。
幸い多少濡れただけで済んだので、ホッとひと息ついたのはいいのですが、雨は本降りな様相。また雨というか、まだ雨。
風はほとんどなくなっていますから、屋根の下まで吹き込んでくるようなことはないものの、この雨はちょっと止みそうにありません。
やることもないので周辺の写真を撮ってから、ベンチに座ってボンヤリとします。
ほぼ着の身着のままで公園の休憩所に身を寄せているとなれば、上がってきていたテンションもそりゃあ落ちますよ。落ちるっていうかなにやってんの?
台風一過の晴れ間は実はごくわずかで、今日はこのまましばらく降るようだったらどうしよう。
堀のそばを小走りで離れて屋根のある休憩所のような所へ飛び込んだ頃には、ザーッと音を立てるくらいの雨となっていました。
幸い多少濡れただけで済んだので、ホッとひと息ついたのはいいのですが、雨は本降りな様相。また雨というか、まだ雨。
風はほとんどなくなっていますから、屋根の下まで吹き込んでくるようなことはないものの、この雨はちょっと止みそうにありません。
やることもないので周辺の写真を撮ってから、ベンチに座ってボンヤリとします。
ほぼ着の身着のままで公園の休憩所に身を寄せているとなれば、上がってきていたテンションもそりゃあ落ちますよ。落ちるっていうかなにやってんの?
台風一過の晴れ間は実はごくわずかで、今日はこのまましばらく降るようだったらどうしよう。
雨あがる
憂鬱な雨があがるまで、結構な時間がかかったと思います。
日が暮れるにはまだ早そうな時間ですが、またいつ降るかわからないし、このまま帰ろうかという考えもチラリとよぎります。
ですが、高台から見渡してみるとどうやら鶴岡公園の半分も見て回っていない感じ。
車に戻っちゃったら、もう最後という気がしましたし、このまま公園を見て回ろうと決めました。
高台の休憩所の前には丸い池があって、さっきまで雨宿りしていた場所の下から、滝のように水が池に流れ落ちています。
そこからしばらく歩いていくと、「雪の降るまちを」の歌碑があります。わわわわーというやつですね。若いかたは知らないかもしれませんが。
この歌碑、透明の分厚い板に歌詞が書かれていて、なんかオシャレな感じ。
そしてその前に、いかにも押してくださいといわんばかりの白いボタンのようなものが付いた、六角形の台座があります。
ははーん、これを押すと歌が聞こえてくるんだな? わわわわーなんでしょ?
・・・ちょっと押しても何も起こらず。
もうちょっと強めに押してもなんにも起こらず。
思わず周りを見回します。こういうのこっ恥ずかしいでしょ。誰も見てない?
・・・セーフ!
アテが外れたので、小声で自前で「ゎゎゎゎー」とつぶやきながら先へ進むことにします。
フリーダムな育ち方をしている木がいくつもある道を進んでいくと、やがて公園の外へ。大通りを挟んで向こう側は大学のようでした。
公園の外周を回ったほうがいいのかとも思いましたが、先程の池の反対側に道がありそうでしたし、一旦戻ることに。
堀に沿って歩いていると、先程は気が付かなかった堀の内側へ通じるような小道があるのを見つけます。
そういえばこっちの方から車が来たよなと、思い出します。公園内だと思うけど車が入ってこれる場所なんかあるの?
そう思いながら進んでいくと、なにやら神社の脇に出てしまいました。先程のお稲荷さんとは別の、とても大きな境内です。
庄内神社というんだそうです。
日が暮れるにはまだ早そうな時間ですが、またいつ降るかわからないし、このまま帰ろうかという考えもチラリとよぎります。
ですが、高台から見渡してみるとどうやら鶴岡公園の半分も見て回っていない感じ。
車に戻っちゃったら、もう最後という気がしましたし、このまま公園を見て回ろうと決めました。
高台の休憩所の前には丸い池があって、さっきまで雨宿りしていた場所の下から、滝のように水が池に流れ落ちています。
そこからしばらく歩いていくと、「雪の降るまちを」の歌碑があります。わわわわーというやつですね。若いかたは知らないかもしれませんが。
この歌碑、透明の分厚い板に歌詞が書かれていて、なんかオシャレな感じ。
そしてその前に、いかにも押してくださいといわんばかりの白いボタンのようなものが付いた、六角形の台座があります。
ははーん、これを押すと歌が聞こえてくるんだな? わわわわーなんでしょ?
・・・ちょっと押しても何も起こらず。
もうちょっと強めに押してもなんにも起こらず。
思わず周りを見回します。こういうのこっ恥ずかしいでしょ。誰も見てない?
・・・セーフ!
アテが外れたので、小声で自前で「ゎゎゎゎー」とつぶやきながら先へ進むことにします。
フリーダムな育ち方をしている木がいくつもある道を進んでいくと、やがて公園の外へ。大通りを挟んで向こう側は大学のようでした。
公園の外周を回ったほうがいいのかとも思いましたが、先程の池の反対側に道がありそうでしたし、一旦戻ることに。
堀に沿って歩いていると、先程は気が付かなかった堀の内側へ通じるような小道があるのを見つけます。
そういえばこっちの方から車が来たよなと、思い出します。公園内だと思うけど車が入ってこれる場所なんかあるの?
そう思いながら進んでいくと、なにやら神社の脇に出てしまいました。先程のお稲荷さんとは別の、とても大きな境内です。
庄内神社というんだそうです。
はからずも神社巡り
参拝する人が何人かいらっしゃいましたので、ちょっと写真が撮りにくかったのですが、とても立派な神社でね。神主さんや巫女さんがパタパタと歩いていて、これからお祓いみたいなことをするタイミングだったのかもしれません。
ここでもお参りしようかと思いましたが、元々不信心ですし、そのくせお稲荷さんでちょこっとお参りしちゃいましたから、その足で別の神社にお参りするのはどうも気が引けてるのでやめておきます。
外へ出ようと、庄内神社の大きな鳥居のある正門へと歩いていきます。鳥居の向こうにも真っ直ぐに道が続いていて、不思議な景色でした。
内側から鳥居をくぐって外へ出ると、その脇に今度は護国神社がありますよ。鶴岡公園、神社だらけじゃないですか。
信心はありませんが、こういうものを見て歩くのは嫌いじゃありませんから、護国神社にも立ち寄ってみましょう。
先程の庄内神社で見かけた、雨具を着た年配の方がこちらにも来てお参りするのを見て、ああそういうのもアリなんだなと勉強したりしてね。
図らずも神社巡りになったわけですが、まだ見どころがありました。
護国神社の入り口を公園の外に出るように歩いていくと、白い壁に赤い屋根の建物が現れます。
大寶館という大正時代の建物だそうです。
あちこち歩き回るのは好きですが、こういう建物に入るのはなぜか気が乗らない事が多いタチです。ですが、この時はなぜかちょっと気になりましてね。
おっかなびっくり入り口を覗いてみると、無料で中を見ることができると書いてあります。
閉館時間までもう少しありますから、これは見に行っちゃおうとそのまま中へ。我ながら、結構珍しいことです。
入り口にある受付で中を見たい旨を告げると、記名だけすればいいとのこと。
無断の撮影禁止とのことですから写真はありませんが、鶴岡市に関係のある人物の業績やゆかりの物を展示してありました。
木造の床は歩くと軋んだりしてね。床が軋む音って、このご時世、なかなか懐かしい音になってしまいましたよね。
二階部分も展示場なのですが、赤い絨毯の敷かれた階段は結構な急角度になっていて、そういえば昔の建物って階段が急だったなぁなんて思い当たったり。
近代の著名人を展示してある関係で、展示物の書籍や愛用品なんかもちょうどいい古さというか。
江戸時代といわれると、知識がないと当時を想像することができませんが、昔の懐中時計や装丁の古い雑誌なんかはギリギリ現代と地続きだったりするでしょう?
そういう古さって直感的にいいなと思えたんですよね。
大寶館の中をひと通り見物して、受付の方にお礼を言って外に出ると、なにやらちょっとした人だかりが出来ていました。
みなさん立ち止まって手元のスマホをじっと見ています。おそらくポケモンGOかなにかでしょうね。
建物ができた大正時代から、月日は巡って世の中は変わったものです。変わらないのは台風一過、ようやく見え始めた青空くらいのものでしょうか。
鶴岡公園の周辺にはまだ見て回れそうなところが幾つか在りますが、日も傾いてきましたしそろそろお暇することにして車を停めた駐車場へ。
真っ直ぐ戻るのもなんですから、ちょっと寄り道気味に散歩してから公園を後にしたのでした。