秋の上越散歩ふたたび 春日山編 空にかかる紅い天の川

2019年3月17日日曜日

#散歩 #旅

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 前回は上越市にある御前清水という湧き水に行ったお話をしました。
 そこにはちょうど車を停められる場所があり、湧き水に面した坂道を登っていくと上杉謙信ゆかりの春日山神社へと辿り着ける模様です。
 ただ水を汲んで帰るのもなんですから、そのまま歩いてみようかというお話。

春日山神社

シーズンオフ


 紅葉の見頃はもうすでに終わってしまい、まだこんな感じの優しげな色の葉をつけた木々がなくはないものの、見渡す景色は冬を感じさせる色合いです。

紅葉の風景

 そんな景色の中に伸びていく上りの坂はそれほどキツいというほどでもなく、足の運びをゆるめていれば気温がそれほど高くないこともあって汗ばむこともありません。
 歩道こそありませんが、道はきれいに舗装されていて歩きやすく、姿の見えない鳥の鳴く声がどこかで遠く高く聞こえてくる以外はしーんと静まり返っています。

ゆるい上り坂
 
 そのまま歩いていると駐車場の案内板が見えてきます。
 有名な史跡がある場所ですから駐車場があるんだろうなとは思っていましたよ。
 でも、なんとなく車移動ではなく歩く方に気分が傾いていたもんですから、車で来ればよかったとはぜんぜんまったくちっとも思いませんでした。ええええ。
 
 ふと振り向くと、眼下に上越の街がうっすらと見えるほどの高さまで登っているようです。天候のせいもあって見晴らしがいいという感じではありませんが、もう少し早い時期だったならなという思いがチラとかすめたのは事実です。

上越市を見下ろす

 やがて、ちょっと開けた場所に到着します。
 右手には「見晴らし屋」と「春日山茶屋」というお店があり、他には自販機コーナーなどが点在していました。
 茶屋の方は営業していませんでしたが、観光地の最盛期には絶対近寄らないくせにシーズンオフに限って足が向いて、結果行く先々でお店が営業していない、なんてのはいつものことですからね。
 もうちょっと早い時期に来ればなんて、ホントにぜんぜんまったくちっともこれっぽっちも思いませんでした。ええええ。

演馬場跡
茶屋の近くにある碑

春日山茶屋

自販機コーナー
自販機も上杉仕様

銅像の立つ分かれ道


 そして右手から正面の道へと視線を戻すと、分かれ道の分岐点にある石垣の上になにか像が建っているようです。
 
 春日山城跡に来ていますからね。ここで毛利元就像とかだったらまずいでしょう。もちろんご想像の通り、上杉謙信の像でした。

上杉謙信像

謙信像脇の石碑
 
 「史跡 春日山城趾 昭和十一年九月建設」という碑がありますから、その頃にこの像も建てられたのかもしれません。光の加減でうまく撮影できなかったのが若干残念です。
 
 謙信公の像の前で道は二手に分かれていまして、片方は春日山神社へ向かうようです。とりあえずそちらに向かうことにしましょうか。
 
 春日山神社の手前には記念館がありますが、こちらも営業しておりませんでした。いいよ、むしろいい。人の気配の少ないほうがね、ゆっくりとできるってもんですから。いいよぜんぜんいいよ、もう。

春日山神社への道

春日山神社記念館前

急階段に若干ひく


 その向こうはいよいよ春日山神社となるわけですが、その正門といえばいいのか本来の入口であろう場所に相当急な石段がついているのを見つけます。

春日山神社の急階段

 無理だって。ここは無理だって。
 これ、たまたま歩いてきた道が緩やかな上りだっただけで、もしこっち側の階段の下に辿り着いてたら絶対引き返してる自信があるからね。
 
 なにこの急な階段。
 そして驚くことに、この石段をダッシュで上がってくるジイちゃんとかがいるんですよ。二度見したから。
 しかも、ダッシュで上がってきたうえに特に春日山神社にお参りするわけでもなく、そのままダッシュで下ってったからね。どんだけスポーツメンなのか。到底真似できません。
 
 ようやく神社の境内へ目を向けてみると、ちょっと騒がしいというか人がそこそこいる気配。どうやら境内の落ち葉などを掃除している方々の作業中のようでした。
 冬が来る前に色々と準備しなくてはいけないのでしょうね。作業のお邪魔にならないようにあちこち見て回ることにします。
 

春日山神社で秋を看取る

 
 かわいいのはこのベンチたち。

境内のベンチ
ぶじかえる

 境内にいくつかあって、それぞれ動物が違います。ぶじかえる、なんてのもあったりして。
 
 そして降り積もった落ち葉と苔むした石や木々が、なんともいい雰囲気なのです。
 お掃除してる中、こんなことを思うのはどうかという感じですけど、このまま冬を迎えて雪に埋もれるに任せておくのも、それはそれでいいような気すらしたものです。

春日山神社正面
 
春日山神社の正面アップ

落ち葉の積もる境内

落ち葉たち

 それを見上げると白濁した冬を連想させる空に、天の川のように枝から伸びる紅い葉が散らばっているのが見えます。紅い天の川はそろそろ白い雪の流れ星に取って代わられるのでしょう。

紅い天の川

春日山神社別方向から

石に張り付く落ち葉


あの階段を降りてみる


 境内を隅々まで見て回ると、春日山城跡案内図という看板を発見。本丸600mとありますよ。
 これは行ってみるしかないんじゃないのと矢印の方向を見ると、完全な獣道しかありません。

春日山城跡案内図

 落ち葉なんかで埋もれまくった腐葉土みたいな道がかろうじてあるなと認識できる、といった感じ。
 こっちへ行ったら間違いなく春まで発見されませんから。
 
 そうなってくるともと来た道を戻る以外には、例の急な石段を降りてみるしかなさそうです。マジですか、あれを降りるの嫌ですよ。ちょっと足を踏み外そうもんなら、蒲田行進曲みたいになっちゃうから。
 
 でも仕方ないかと意を決して、手すりにしがみつきながらそろそろと時間をかけて降りていきました。この降りている最中は時間にしてそれほどかかっていないのですが、体感的には長いこと長いこと。

春日山神社階段

 ようやく階段を降りきって、ほっとした時に気がついたんですけど、よく考えたら上杉謙信像まで戻ればそこから分かれ道になってたよなと。
 そっちに行く手もあったんじゃないかと。
 
 とはいえもう相当な高さの階段を降りちゃいましたから、いまさら戻る気になるはずもなく、もういいやとそのままトコトコと坂を下る方向に続いている道を歩き始めます。

歩きながら考えごと


 スタート地点にした御前清水のあの湧き水のあたりに続くような道があったはずだと、念のためグーグルマップを広げてみるとやっぱり記憶違いではないようです。
 
 マップを広げるなんてのは比喩といったらいいのか、とにかく表現の問題でね、実際にはスマホの画面を見てるだけなんですが、昔は実際に紙の地図を車に積んだり旅行誌を持ち歩いたりしてましたよね。
 
 以前書いたブログにも載せましたけど上越市内の史跡や観光スポットには、小綺麗な妖怪ポストっぽいものが設置されていて、そこにちょっとしたリーフレットが置いてあります。
 こういうものだってそれなりにコストがかかると思いますが、個人的には好感を持ちました。経費の無駄だと削減せずに継続してほしいなというのが、ふらっと訪れた者としての正直な感想ですね。
 
 だいたいのあたりをつけて、下りの道を歩いていきます。民家がちらほら点在していてあとは田んぼといった感じの、のどか一点張りな風景です。

のどかな散歩道

 多分古くからある家だろうと思うのですが、こういった史跡のそばに昔々から住んでいる方々というのはどういった系譜や家系なんでしょうね。
 
 春日山城が健在だった頃から住んでいるとしたら、お城のそばに住めるというのはそれなりの地位だったのかなぁ、などととりとめのない妄想空想を延々と続けながら歩いておりました。
 歩いている時って、考え事にも向いていますよね。

お手紙は食べてなかった


 そろそろ車を停めた御前清水だろうなというあたりで、ちょっと変わった建物を見つけました。
 春日山きのこ園とあるのですが、人の気配はしません。入口も閉まっていてきのこを売っているのか育てているのかもよくわかりませんでしたが、ヤギがいるのはわかりました。

ヤギさん
 
 二度見しましたよ。遠目からなにかがいるとは思いましたが、こんなところで飼っているとは思っていませんでしたから。
 そのきのこ園の前にちょっとした空き地があって、つながれてはいるもののある程度自由に歩き回れる感じでヤギさんが立ってまして。
 アレルギーがあるもので動物とはあまり縁のない暮らしなのですが、遠目に見ているとかわいいですよね。思わず写真を撮ってしばらくトコトコと歩いているのを見ていました。

後ろ髪を引かれながら


 そんなこんなでこの日もけっこう歩いてしまい、ようやく車に辿り着いて散歩は終了となりました。
 ですがね。
 道すがら要所にあった看板などに書かれている、春日山城の本丸跡なんかはぜんぜん巡っていないんですよね。
 いや、別にそこまで歴史好きでもなければ、ましてや散歩好きですらなくて、その場のノリというか旅するなら歩いたほうがなにか得るものがあるからというのが初期衝動だったりモチベーションなのです。
 
 でもね。
 ちょっと行ってみたいよね。どんなになってるか行ってみたいよね。
 春日山神社まで行きながら、春日山城跡を巡ってないのもホラ、ロールプレイングゲームで行ってない町がある、町の中でも通ってない道があるみたいな、アレな感じじゃないの。ね? ね?
 
 まあでももうすぐ冬だし、雪が降ったら歩くのはさすがにキツいだろうしなぁ、などとまた例の自分で自分を縛るようなことを考えつつ、帰路に着いたのを覚えています。

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