旅の途中で悩むのが、お風呂だったりしませんか。
例えば、温泉宿に泊まろうと思ってたとしても、たくさんあるホテルや旅館の中から、どこにするかで相当迷うと思うんです。
ましてや、よんどころない事情でね、宿泊施設はちょっとグレードを下げといてせいぜいビジネスホテル、気が向いたらどこかで日帰り温泉でも行ってひとっ風呂浴びよう、なんて旅だとしたら、ね。
今日はそんな、旅とお風呂のお話。
お風呂に入ろうとすると
例えば旅の行く宛がしなびた温泉地で。タオル片手に湯めぐりなんて洒落込んだりして。
温泉地じゃなくたって大浴場付きのビジネスホテルもそこそこありますから、どうせならってんでそんなホテルを予約したりして。
お風呂って旅の目的になったりしますよね。
でも旅って結構ままならないもので、スケジュールを組んだってその通りにいかないこともよくある話じゃないですか。
なので、お風呂に入ろうと思ってても、タイミングがちょっと合わないこともあると思うんです。
普段の生活でも、お風呂のタイミングって迷ったりしませんか。
朝、起きてからにするか夜にするか、食事の前か寝る前か、シャワーで済ませるか湯船につかるか、なんて。
ましてや私みたいに行きあたりばったりな旅をしてると、食事とお風呂のタイミングって日によってけっこうバラバラになるんですよね。
旅先での入浴事情
深夜はもちろん朝も入れる大浴場付き、さらにはご当地の美味い食い物が朝晩ついてきて、ふかふかベッドな上にお手頃価格でアクセス良好…
そんなホテルが、旅の果てにさまよい着いた街でアクセスしたじゃらんのサイトで見っかれば、そりゃあ予約ボタンを連打ですよ。
だけど、そんな都合のいいことなんてないでしょう。計画のけの字もないような旅路なら、宿に贅沢なんか言える立場じゃありません。
そうなると利用しやすいのが日帰り温泉やスーパー銭湯でね。
千円前後で広いお風呂に入れて、場所によっては食事したり仮眠したりできちゃうという、いたれりつくせりわーいわーいなナイススポットが、探せばあちこちにあるんですよ。
なんなのこれは。最高なの?
ただし、そんな素敵な場所はね、混むんですよね…
そりゃそうです、みんな足を伸ばしてお湯につかって、あふーってなりたいんだもんね。
広いお風呂には入りたい、でも混んでるところは行きたくない。
昨今はほら、あんまり人混みとか混雑とかあれじゃないですか。こちとら、そうなる以前から人の多い場所になんか好きこのんで行ったりしないんですが、ここ最近はよりいっそう、そうなっちゃってね。
だから単にお風呂に入るといっても、なるべく混雑を避けて快適に入浴できないかということになってくるんです。
広いお風呂を独り占めするあの感じ
日帰り温泉とかスーパー銭湯とかはすごくいいんてすけど、混雑しているとさすがにつらい。リラックスできないどころか、むしろ気をつかって逆に疲れることにもなりかねません。
以前、行楽シーズン真っ只中に旅していてみつけたスーパー銭湯に行った時がまさにそんな感じで、芋洗いなんていいますけどもっとすごくて。もうね、工場。芋洗い工場。芋ファクトリー。
身体を洗う洗い場もなかなか空かない上に、露天から屋内からすべての浴槽がぎゅうぎゅうのぎゅうな有様で、行き場をなくしちゃって困った記憶があります。
逆に、穴場の温泉なんかに巡り合えると、プールみたいな大浴場をほぼほぼ独り占めできちゃったりして。
やっぱりね、デカいお風呂を貸切状態で使えるっていうのは、そんなのどうやったって気分がいいもんですよ。誰もいないだだっ広い湯船に身体を沈めて、気を使うことなくゆっくりできる。最高すぎるでしょう。
入浴という普通なら超プライベートなことを知らない人が集まるところでやるとなれば、どうしても気を使うじゃないですか。
そういう場所なのに誰もいない、独り占めしちゃえたというギャップもあって、達成感というか開放感というかがより強いんだと思うんです。
そんな経験もしつつ、日帰り温泉なんかを巡ってるとだんだん気がついてくるんです。
寂れたところならいざしらず、そこそこ流行ってる施設でも日によって時間帯によっては独り占め可能な場合もあるな、ということに気がついてきます。
そうするとねぇ、狙ってみたくなるんですよね。あの達成感開放感を味わいたくて、狙ってみたくなるんですよねぇ…
独り占め狙いの達成感
曜日や時間帯の妙味で、今日ならそして今ならもしかしてあるんじゃないかと、胸に野望を秘めつつ目的の温泉施設に到着しまして。
駐車場とか、はたまた玄関とか靴箱あたり。そして受付から漂うお手隙感に、もしかしてがまさかになっていく。ちょっとテンションが上ってくるわけですよ。
若干前のめりで脱衣所へ向かった先で、今まさに大浴場からお客さんがあがってきたりして。自然な素振りでロッカーの使用状況に目をやってみて、どうも全部のロッカーが空いてるように見える。見えます。見えるよね?
そそくさと身支度して浴室へのドアをくぐると目に入ってきたのは、ガラーンとした洗い場と、滔々とお湯のそそがれる音しかしない広大なお風呂。
だだっ広い大浴場に自分ひとり。貸し切りであり独り占めであり狙った通りその通り。
やったよ、やってやったよ。鳴り止まない脳内のおめでとうコール。おめでとう讃歌。おめでとう音頭。おーめでっとうおめでとうー ひっとりでお風呂だおめでとー
頭上でくす玉が割れ、独占のふた文字が書かれた垂れ幕と舞い散る紙吹雪。舞い散る湯の花。クラッカーが鳴らされ浴衣姿の温泉の精に花飾りを首にかけてもらい、少し照れ、胸を張り。
てゆーか、こんなこと書いてっから長くなんだよ。温泉の精って誰だよ。削れ削れ、妄想部分は削っとけ。
でね。
デカいお風呂、特に露天風呂とかを独り占めできちゃった時の楽しさって、ちょっとクセになるというか。達成感すごいじゃないですか。
だからもはや、広いお風呂に入りたいとか疲れを癒やしたいから温泉施設に行く、みたいなことからもう一段階進んで、むしろ悪化して、その独り占め感を味わいたいってことに、自分の中でなってきてるんですよね。
策を練ってお風呂に挑む
そうなってくるとね。
自分の行動範囲内の温泉施設なら、多少通えばこの曜日は休前日だから混むとか、この時間帯はお客さんが少ないなとか、そういう傾向が掴めてくるんです。
それを踏まえて狙って行ってみて、うまいこと人のいない時に入浴できちゃったりして。してやったり。
そこでまた、変な達成感を得るわけです。
自分の狙いが功を奏して、お風呂独り占め成功回数が増えてくると、なんかこう攻略してる感じというか、謎のミッションが課せられててそれをクリアしてる感じというか。
近場の温泉施設はそういうふうにやっつけていけばいいんですけど、問題は旅先ですよね。
右も左もわからない土地で、まずは温泉施設なり大浴場付きのホテルなりを見つけるところから始まるわけですけど、その時点ですでに戦いはスタートしてるわけです。
パッとネットで検索するとすぐ目につく、市街地のちょっと外れにあるスーパー銭湯。ここに飛びつくのは素人だなと。トーシロだなと。そんな検索上位の街なかのスーパー銭湯なんか、混んでるに決まってんですよ。
それよりこの、検索結果のトップには出てこない、しばらくスクロールしていかないと出てこないここ。ここね。
マップで見ると、ちょっと街から離れちゃってる上に、大きめの道路からはわかりにくい細い道から入っていく感じのこの温泉。
こういうところは、地元のホントに近場のお客さんしか来ないんじゃないのと。
あとポイントなのがウェブサイトの作りが古い施設。
所在地のページに、グーグルマップじゃなくて概略図みたいな、これだけ書いときゃわかるでしょ的なものが載ってる感じですよね。
太字斜体アンダーバーで、WELCOME! って書いてある感じの、ホームページっていう感じのやつ。
サイトがまったくないのは情報が足りなすぎるから、いきなり行ってみるのはちょっとリスクが高いじゃないですか。
かといって、今風のちゃんとしたサイトがあると、お客さんも見つけやすいし行ってみようって気になるぶん、混雑する可能性が高くなるんです。
そんな、今となってはちょっと古い感じの漂うウェブサイトをそのまま使ってるってことは、それでとりあえずはお客さんがきてるってことだから。今のままでもそんなに困ってないってことだから。きっと。たぶん。知らんけど。
つまりは客層も常連さんメインで、そういうところはピークタイムを過ぎたら誰もいなかったりするんじゃないのと。
どうよこのムダな深読み。すごくない? 妄想もはなはだしいよね。
こっちは特にアテもなく旅してるので、時間の都合だけはつくことが多いということもあり、こんな感じで色々と作戦を考えることもあるんです。テキトーに行ってみたりもしますけど。
大浴場付きのホテルにて、決戦の刻
宿泊先のホテルに大浴場があるパターンだと、この遊び、いや戦いは様相が変わってきます。
戦いですよね。その日の全宿泊者とのバトルですよね。
その日は、比較的新し目のホテルにチェックインしました。
温泉目当てってわけじゃなかったんです。新しいってことで感染症対策もしっかりしてそうだったし、立地的な面やもちろんお値段も込みで選んだんです。
むしろ、天然温泉だということにチェックインの段階で気が付いたくらいで。
それなら、ユニットバスでやさぐれてシャワーだけで済ますよりも、せっかくだから大浴場へ行ってみようかなということになり。
ホテルに着いたのが21時過ぎだったと思います。
いくつかあるグレードのどの部屋かはおまかせだけど、そのぶん値段が安いというプランにしてまして。
で、案内されたのが最上階の、どうやらいい部屋らしい。
壁掛けのバカでかいテレビと、予備のベッドにもなる感じのソファがついた、清潔ないいお部屋なんです。
待てよ、お部屋おまかせプランで21時にチェックインしてグレードのいい部屋をあてがわれたってことは、ひょっとして今日は宿泊客が少ないんじゃね?
もちろんグレードの低い、値段の安い部屋から埋まっていって、残り物には福がある的なパターンもあるでしょうけど、逆にお客さんガラガラパターンもあるよね、ありますよね。
そう言われれば駐車場はそんなに埋まってなかったな。
ただ、このホテルは駅にも近いので徒歩のお客さんも普通にいそうですから、なんともいえません。
でも、フロントでも他のお客さんに会わなかったし、同じフロアで人の出入りがあるような気配も今のところはしませんね。
…チャンス?
もしかして、大浴場独占チャンス?
誰もいない時間帯を読め!
とりあえず、ホテルに着くまでに見つけたスーパーで買ってきたビールと適当なアテで乾杯しまして。
安いホテルだとありがちな隣の部屋とか廊下とかでの会話が聞こえてきたりもなく、シーンとしているのが居心地のよさにつながっています。
もともとテレビをまったく見ない上に、YouTubeで見ておきたい配信があったのでスマホでそれを流しながらも、どのタイミングで大浴場に行こうかについて検討を重ねます。
そもそも、街なかのスーパー銭湯なんかと比べて、ホテルの大浴場は圧倒的に他のお客さんが少ないわけです。日帰り入浴で大浴場を一般のお客さんに開放してる場合を除けば、ですが。
だからといって独り占めしやすいかといえばそう単純でもなく、特にビジネスホテルの場合、大浴場といっても入浴専用の施設に比べたら狭いところが多いので、すぐ満室になりがちでね。
それを知ってる旅慣れたお客さんは、みんなそれぞれお風呂に行くタイミングを考えていると思うんです。
時刻はもうそろそろ22時。
普通の人はもうとっくにお風呂を済ませたであろう時間帯だけど、チェックインが遅めの人もいるでしょうと。
21時にチェックインして部屋でビール飲んで、いつ大浴場に行こうか悩んでるやつもいるでしょうと。あたしか。あたしじゃないか。
22時ちょうどってのは、時間にキッチリしてるタイプの人と行動パターンが重なるから避けようか。
そこをちょっとズラして22時半か。でも待てよ、22時ちょうどに入った人が長風呂だったら22時半はマズイんじゃないかな。
でも、大浴場で長風呂する?
だったらユニットバスで長風呂しやがれって話ですよ。むしろ早く寝ろって話ですよ。3本目のビールとか空けてんじゃねぇよ。ナスの漬物が思ったよりも美味い、じゃねぇんだよ。あたしか。あたしじゃないか。
じゃあ23時まで待つ?
てゆーか大浴場の営業時間調べてないじゃん。そういうところだから。そういうのちゃんとしないと、考えに考えて行ってみたらもう閉まってるってオチになるんだから。
…あ、朝までずっと入浴できるのね。
そうすると、あれか、早朝3時とかならまず独り占めできるんじゃないの。
いやいやバカじゃないの?
22時にビール3本目飲んでんだよこっちは。そんな朝早くに起きられる理由がわからないから。ナスの漬物をキシュキシュいいながら味わってんだから。
終夜やってるとなると、チェックイン期限の0時あたりでまたピークがありそうだな…
ははーん、読めたぞ。23時チョイ前だ。
0時前後に起こるピークの手前、22時あたりで入った敵がいなくなる23時チョイ前だ。ここしかない。
敵ってなんだろう。
そう思いながらボンヤリとした時間をすごしまして。
ナスもビールもなくなった22時40分に、タオルと着替えを持ってエレベーターへ。
大浴場のある階でエレベーターのドアが開き、ヒタヒタと廊下を進んで脱衣所のドアを空けると…
最近のホテル事情
誰もいない!
だ れ も い な い !
勝ったよ、ついにやったよ勝ちましたよ!
なにに勝ったのかサッパリわかりませんけど、そんなことより達成です。大浴場独り占め達成なんです。
謎の心理戦、他の全宿泊者対あたしという心理戦に見事勝利しての、堂々の入浴であります。ちょーきもちいい。おふろひろーい。わーいわーい!
かけ流しとかじゃありませんけど、一応は天然温泉ってことで広いお風呂を堪能しまくりまして。そろそろ飽きたころに、別のお客さんがきたのを期にしてお風呂から脱出してきました。
もうね、サッパリ。気分的にもサッパリして部屋に帰り着きましてね。眠気も飛んじゃって。
で、なにげなくテレビでも見ちゃう? とか思ったんですよね。なぜか。普段見ないのに。
新しいホテルですからテレビも最新型らしく、リモコンにYouTubeとかNetflixのボタンが付いてたりして。そんな物珍しさもあったんですけど、ともかく電源ボタンを押しまして。
そうすると、今どきのホテルっていきなり地上波が映るわけじゃなくて、まずはホテルのホーム画面というか案内の画面になるのね。
でね。そこに見っけちゃったんだよね。
混雑状況、わかるんじゃん…