日々ぼんやりと生きてるつもりでも、仕事やらなにやらで忙しい時期もあるんです。
それに加えて、そんなにマメじゃありませんから。整理整頓とか得意じゃないというか苦手なほうでね。生きてるだけであちこちとっちらかっていくわけです。
部屋が散らかっていく
だからなるべく散らかさないようにはしてる、してるつもりでも上手いこといかないんだ。たいした仕事なんかしてないのに、夜遅くなってふらふらで戻ってくると、なーんにもする気にならないわけです。
下手すると晩御飯もいらないくらいにへっとへとになってんだけど、ビールの一杯くらいはやりたいじゃないですか。ビールは飲むよね。そりゃあ飲んだっていいよね。
冷蔵庫開けてビール出して、そのまま振り返った勢いで後ろ蹴りのように足でドアを閉めつつ、左手に持った缶のプルタブを右手の指でカパッと開けて、回転しながらビールをきゅーっと飲む。まるで武道の美しい型のように、冷蔵庫のドアを閉める動作と缶ビールを開けて飲む動作が一体となってね。
静と動。攻と防。愛と憎が複雑に入り混じった所作で、缶ビールが一本空くわけです。次回のオリンピックには出ますよ。帰宅後最初の一杯目選手権で優勝して。
そうすると不思議なことに、空き缶が残るんだよ。この缶がね、たまるの。気がつくとキッチンのシンクの脇とかテーブルの上とか座椅子の脇とか、いたるところに置いてあるんだよ。
中身は確かに飲んだよ。缶は飲めないよ。いくらあたしが日本代表候補だって缶は飲めないよ。飲んだら別の競技になっちゃうもの。競技っていうかマジシャン的な方向にいっちゃうじゃん。
で、さすがにさ、いつかは片付けるわけ。缶ゴミの日に出さなきゃいけないからさ。
そりゃあ中身を飲んだら、空き缶はすぐゴミ袋に入れればいいってのはわかってますよ。ゴミ袋いっぱいになったら捨てればいいってのも、わかってますとも。
それが毎々日々日々、都度都度やれるようなキチンとした性格、体質、習性、魂の造りがそうなってんなら、そうしてるよ。そりゃそうでしょうよ、誰だってそうしてるでしょう。
そうじゃないんだから。ダメ人間なんだから。
たまる。まぁーたまる。空き缶がたまっていく。どんどん。びっくりするくらいたまってくの。
で、それを突然片付けはじめるんだ。思い立ったら突然やりはじめる。夜中でも急にはしまるわけ。スイッチが入るとやらなきゃってなっちゃうわけです。
これがやっかいでね。自分でもコントロールできないんだから。気分がそうなったら、突然はじまっちゃうんだ。
ダメ人間、冷蔵庫前に座る
それがこの前、冷蔵庫で起こったって話なんだけどね。
冷凍室の霜。
なんか最近の冷蔵庫は霜取りシステムみたいのが付いてんでしょ?
よく知らないけどたぶんあれだろ、霜がたまってんなーってなったら、冷蔵庫がセンサーなのかなんなのかで感知したら、じゃあ霜でも取るかぁってなるんでしょ。
夜中に、小人さんが8人くらいわらわら出てきて、みんな薄水色のとんがり帽子と服きてさ、手に手にスコップとかハンマーとか持って出てくんだろ。で、冷蔵庫開けてトンテンカンテンやって。
霜の上で滑って転んだりして、つつーって尻もち状態で滑ってって、冷蔵庫の壁に向かって止まらないよーって感じでぶつかって、他のみんなにあっはっはっはおっかしいねー的なやつが搭載されてんでしょ、最近の冷蔵庫には。
ウチのには小人さんシステムは付いてないみたいなの。小人さんっていうか、冷凍室そのものがないんだ。
冷蔵庫とかさ、デカいの買ったって手に負えないんだから。広々野菜ルームみたいなの買ってもさ、入れないんだから。どうせビールとお茶と、安いからって理由で買ったものの食いきれない納豆とかそんなのしか入れないんだから。
真夏なんかはアイスクリームくらいは常備したいなと思うこともあるけど、仕事がはけたらやさぐれて旅に出るような暮らしぶりを延々と続けてきたら、そんなのいいやってなるの。アイス食いたきゃ、コンビニ行きゃあいいよって暮らしなんだから。
で、諸々面倒になってまた旅ぐらしが始まったとしても、その時は車に積んで自力で持っていけるサイズの冷蔵庫を買ったのね。わかりやすく言うと、ビジネスホテルにあるような、縦長じゃなくてサイコロみたいなカタチの小さいやつ。あれあれ。
ああいうのって、ダイヤルを最強にすれば氷くらいはどうにか作れます的な、簡易冷凍エリアみたいなのがあるじゃない。あんなの霜取り機能なんて付いてないわけ。小人さんが隠れる場所もないんだから。
で、今の部屋に引っ越してきた時に買ったから、2年ちょいか。一切、霜とか取ってないんです。人間だもの。ダメ人間だもの。ダメ人間駄モノ。
そしたらなんか山が出来ちゃってて。山っていうかア・バオア・クーみたいなのが、初代ガンダムにでてくる要塞の。永久凍土のア・バオア・クーみたいなのがその簡易冷凍エリアに出来ちゃってて。ガッチガッチのやつが。
で、ある日急に、もうどうにかしようと思って。思っちゃって。急に。
そうなるとやらないといけない、みたいになるから。元々そんなに入らない冷蔵庫の中身もほぼ空っぽに近かったってのもあって、やるかと。やっちまいなと。
ビールとか入ってる飲み物を外に出して。ついでに景気づけにビールを飲んで。とりあえず冷蔵庫のスイッチを切ってみたの。どうせすぐ溶けるんだろとか思いつつ、開けっ放しの冷蔵庫の前に座り込んで。ビール片手に。
この要塞感 |
ア・バオア・クー攻防戦
溶けないよね。
溶けませんね。
一向に溶ける気配がないわけ。今思えばそりゃそうだよね。氷で出来たア・バオア・クーがそう簡単に陥落するわけがないんだ。
で、よく調べもせずに始めちゃったからさ。霜取りのイロハも知らずに、急に思いついちゃったから。
ほら、小人さんが持ってるの、スコップとかピッケルとかだから。ジムとかゲルググとかじゃないからさ。ビームライフルとかないから。
だから、包丁の柄でコツコツ叩いたりしたくらいじゃビクともしないの。ライターで炙ったくらいじゃどうにもならないわけ。
でもね、閃いたよね。あったよ、うちにも。ビームライフルがあったよ。
ドライヤーを洗面台から持ってきて。
これだよ。ビームライフルどころかソーラーシステムくらいの破壊力でしょ。スコップで戦ってた小人さんが急に大砲持っちゃって。鉄砲伝来って感じで。
それでこれがさ、溶けないんだわ。ガンガン温風を送って、表面はちょっとずつ溶ける。溶けた水を吸水性の高いタオルかなんかで拭きつつ、ア・バオア・クーにちょっとずつダメージは与えてるものの、以前健在なわけ。
マジかと。
冷蔵庫の中の要塞感がすごいんだ。難攻不落なの。
でもう仕方ないから。始めちゃったから。
途中で諦めたらそのうち冷蔵庫の中が、そのカタチで氷の塊になるんじゃないかと思って。四角いア・バオア・クーになっちゃうんじゃないかと思って。
そこからは小鍋にお湯を沸かしてア・バオア・クーの真下に設置する湯気作戦と、ドライヤー砲でひたすらあたため続ける二正面作戦だよね。
なんかあとで調べたら、あんまり熱持たせるのも冷蔵庫本体によくないみたいだよね。詳しくは知らないけど。
そもそも、小人さんだのア・バオア・クーだの言ってるこんなブログを読んで参考にするやつもいないだろうから、正確性とかはどうでもいいか。これ読んで、よーしオレも! ってやつの方がどうかしてんだから。
で、どのくらいだろう。20分とかたったかな。右手にドライヤー。左手にビールで。
そのうち、ようやく簡易冷凍ルームの真下に引っ付いてた氷の一部が剥がせたの。ついに。哀戦士が流れはじめた感じだよ。
ちょっとずつ、簡易冷凍ルームから浮いてきてる感じがしだして、いつも使ってる樹脂製のフライ返しを持ってきて、その隙間に入れてどうにか浮かすことはできたんだけど。
ここで気がつくんだよ。
冷凍ルームって、冷蔵庫の中にピッタリ区分された引き出しというか部屋があるわけじゃなくて、簡易的に区切られてるだけで冷蔵庫の奥の壁部分との間に隙間があるの。
どうにか氷の山を浮かせたんだけど、その冷蔵庫の奥壁との隙間にもガッツリ氷があって、そこに引っかかる感じで物理的に氷の塊がが取り出せない状態なの。
もうあとには引けないから。哀戦士からめぐりあいに、脳内のBGMが変わっちゃってるから。
で、フライ返しのビームサーベルとドライヤーのビームライフルを駆使して、一番はじめに取れた冷凍ルームの下の氷を剥がそうということになり。あとは力でねじ伏せるしかないと。
冷蔵庫を壊したかも
外れたよ。氷の塊がようやく外れたんだけど、なんか配線みたいなのも氷と一緒に剥がれてきて。
やっちゃった。これ、電源入れるとヤバいやつでしょ。火事とかになりかねないやつでしょ。
壊しちゃったっぽい。冷蔵庫壊しちゃったっぽいなってなりながらも、もういいやって。めぐりあいを、もう脳内じゃなくてまあまあの声で歌いながら。涙よ海へ還れ、だよ。
取れた。ア・バオア・クー取れた。かき氷にしたらボウル一杯分くらいあるやつが、取れたよ。
でも悲しいね。戦争って哀しいね。冷蔵庫は壊れちゃった。配線がぴょーんってなってんだもん。
今度は霜取り機能のついたやつにするか、そもそも霜がつかないやつもあるらしいよね。新しい時代の幕開けかな。てゆーか、今の冷蔵庫を廃棄するのも面倒だな。
上部と下部の二つに砕かれたア・バオア・クーをシンクに置いて、水浸しの冷蔵庫を吸水タオルで拭きながら。
かなしみ色の瞳で拭きながらそう思ってたんだけど、よく見ると冷凍ルームの裏っていうか下側にそのぴょーんってなった線がくっつくような構造になってるんだ。
ぴょーんの先端も、よく見ると電線が千切れた感じじゃなくて、メッキっぽくなってて単純に冷凍ルームの下に這わしてあっただけっぽいの。
で、ネットで検索してみるんだけど、色々ワードを変えて調べてみても、これってものが見つからない。その冷蔵庫の型番で調べたり色々見ていったんだけど、イマイチなものしかヒットしないのね。
てゆーか、おかしいんだって。
ネットを検索してると、なんか誰もア・バオア・クーと戦ってないらしいの。霜を取るのはカンタン、スイッチを切って一時間くらい放置すればだいたい溶けます、みてぇなさ。そんなのしか引っかからないんだよ。
そもそも霜取り機能が付いてますよね的な知恵袋の回答とかさ、週イチだか月イチだかで掃除してますよね、みてぇなのしか引っかかんないの。
ふざけんじゃないよと。こっちは2年だっての。
聞いたこともねぇメーカーのさらにOEMみてぇな冷蔵庫だっての。ネットで買って、配達に来た宅配便のお兄さんに、重たい物運ばせてすいませんねって言ったら「これ冷蔵庫っスか、軽いっスね!」って言ったんだから。
戦いは終わった
で、どうやらこれだなっていうやつが見つかってね。誰かのブログのすみっこに書いてあったのが、温度センサーらしいというのがわかり。
なるほどと思って温度センサーをキーワードにして検索しても、間違いなくこれってのには当たらなかったんだけど。
ほぼほぼそうだろうということで、多分こんな感じで配線してあったんだろうなっていうふうにぴょーんってなった線を設置して、スイッチを入れてみたら火花も煙も出ないし、ちゃんと冷えるの。
勝ったよ。勝ったんだよ。この戦いに勝ったんだよ。
てゆーか、温度センサーうんぬんで小一時間経過してるんだけど、ア・バオア・クーはまだシンクにいたからね。シンクの排水口よりもデカいんだから。蛇口からお湯を出して当てたらさすがにいなくなったけど。
それを見て思ったよね。今度は水鉄砲を買っておいて、お湯を入れて撃とうと。おーゆライフル。どうせ水浸しになるんだからそれでいいやって。