旅の話をする時は、どこからすればいいのかっていつも思うんです。
要は、色々つながってるじゃないですか。旅に出る前の段階、つまりは旅に出たいと思った衝動って、旅に出ていない日々に起こるわけで、そうなっちゃったスタート地点というか起こりから話したほうがより伝わると思うのね。
よく言うところの、翼が生えた状態。旅に出るための翼が生えちゃった状態がいつなのかってことなんです。
眩暈
で、そこから話すとなると、たぶん体調不良のことからになるんです。特にめまい。これがまあまあの頻度で起こるようになってましてね。なんか、日に数回、震度2くらいの揺れがおこって、あれ地震じゃね? とか思うとどうやら自分だけ、みたいな。
病院にも行ったし検査も受けたけど、なにかしら明瞭な要因ってのはどうもないらしい。どっちかといえば体質的なことのようで、要は急に改善したりはしないようなんです。
そうなってくると、朝に晩に薬を飲んでみたり医者通いをする他に、いいと思われるなにかをしてみるか、という流れになるわけです。
だからって急になにかを信じてみたり、例えば食い物を変えてみたりみたいなこともさ、こんな人間ですからそんなにカンタンに変われやしないの。
今までさんざん、なんとでもなれと自堕落に生きてきたツケがきてるんだったら、今さらジタバタするのもおかしな話でね。
だからまあ、これなら自分でもできそうだなとか、こういう治療なら受けてみてもいいかなとか、なんかそんな妙な理屈ありきっていう感じなんです。
で、その一環で、耳周辺のマッサージがいいらしいということになり。
めまいの原因として三半規管の不調があると。耳の周りの血行が悪くなると、そういった不調になりやすいらしいんですね。
他にも気圧だったりストレスだったりと色々な要因はあるものの、気圧もストレスもこっちでコントロールできるもんじゃありませんから、じゃあその耳マッサージ的なことをやったらいいんじゃないのという。
あたしゃドクターじゃありませんから。詳しいことは知りませんし、この話を読んで、なるほどと思われても困りますよ。だって、ドクターを思い浮かべてすぐ出てきたのがペッパーだから。そしてペッパーといえば警部だから。ドクター警部。銭形=ドクター。
で。
色々検索して見つけたのが、そういうメニューもあるリラクゼーション的なお店でね。もちろん医療行為をするわけじゃないし、こっちが勝手に効果を期待していくだけですから治る治らないみたいなことは置いておいて、リラックスもしたかったんです。
だって休みが少ないんだもん。残業も多くなってきたんだもん。最初に書いちゃうけど、旅に出る前の日とか、21時を回ってから帰宅してんだから。そういうのが続けばリラックスしたいって。そうなるって。
県民割が再開されてる
それでそのお店も、予約がいっはいだったりして、こっちのタイミングと合わないなんてことが続いてたんですけど、この日なら受けられそうという日が見つかりまして。
そのお店は今住んでる地域から結構離れていて、車なら日帰りで行ける距離ではあるものの、疲れちゃってるのと例の体調のあれこれもあって無理して行くのもちょっとキツい距離なんです。リラクゼーションを受けに行くのに、移動で疲れ切ったらあんまり意味がないでしょう。
じゃあ前乗りして前泊して、前の日は早めにチェックインしてのんびりしよう。費用はかさむけど、結果のんびりできたり、ちょっとした旅気分でリフレッシュできればいいじゃないかと。
そんな感じで、リラクゼーションが予約できそうな日の前日に泊まれるホテルを探してたら、コロナ関連で中止してたりしてた宿泊施設支援キャンペーンが、再開してるのに気がついたんです。
「使っ得!にいがた県民割キャンペーン」 っていうらしいんですけど、オフィシャルのサイトを見てみると、要は期間内に宿泊すると県民限定で最大50%の割引が適用されるというもの。
それを適用してみると、土日の正規の宿泊料金が平日よりは高めに設定されているとしても、かなり安く泊まれてしまうことがわかったんです。
さらに、これはチェックインの時に知ったんだけど、宿泊した日から10日以内限定で使える、2千円分のクーポン券ももらえるの。
これが協賛してるスーパーとか大手コンビニ各社、全国チェーンのお店から地元企業までけっこう幅広く使えるスグレモノで。かなりお得なことになってんです。
これはいいやと。渡りに船に鴨がネギ背負ってるなと。左うちわで上げ膳据え膳だなと。意味はわからないけれども。
で。
リラクゼーションの方の予約が確定した段階で、県民割キャンペーンでビジネスホテルも予約完了。
土曜日にホテルに向かって出発して、チェックイン可能な時間になったら即ホテルに入ると。んで、翌日曜日は午後遅めにリラクゼーションの予約があるので、それまで自由という感じの、ざっくりプランができあがったんです。
旅に出てやりたいことがまだある
あの、前フリの話はまだ続くんですけど、いいですか。いいですよね。嫌だっていったって書きますけど。
そんな感じで帰りが遅い日が続くわ休みも少なくなってきたわで、自室が散らかってんです。ひどい有様になってきてるの。これはさすがに色々片付けたい。
片付けたいってのに、土日に渡って旅に出てしまうと、どうせ帰ってきたってそんなのね、やりゃあしないわけです。いくらリフレッシュしたって、帰ってくるなりご飯食べて寝る未来しか見えないんだから。部屋の片付けなんてね、そんなタイミングでやらないって。
だから、これはもう、旅に出る前に片付けて出ようと。間違っても仕事終わりの金曜日に奇跡が起こって定時退社できたとして、その開放感で金曜日から宿も取ってねぇのに出発しちゃいかんと。クギ刺しとかないと。自分に。
それはルールにしよう。全て片付けられないとしても、せめて半分以上はやっつけてから旅に出ようと。たまってる洗濯物だけでもなんとかしたほうがよかろうもんと。
もうひとつは、髪を切りたいなと思ってて。ちょっと伸びすぎてるなって。
これが、半分は本当に困ってるんだけど、2年ほど前に引越してきて、いやよく考えたら今までずっとなんだけど、いきつけの理容室とか美容室みたいなものが、あった試しがないんです。
オサレな髪にしてやるぞコノヤロー的な、圧のすごく強い流行りの美容室とかは当然無理だし、かといって町のこじんまり系床屋さんも常連さんがやっぱりいたりして、馴染めないのね。
で、ここなら良さそうだなっていうお店を探して絞り込んで、絞って絞って行ってみたら、髪を切り始める前にあたしの髪質について30分オーバーの説明を始める店とか、店主の髪型がお前早く床屋に行けよっていう感じの店とかさ。
なんかヘンな理容室美容室にばっかり当たるんだよ。なんなの? 普通の床屋さんはないの?
もうそれならいっそ、旅先で飛び込みで髪を切ってもらったっていいやっていう状況なんです。通える距離にはちょうどいいさじ加減のお店がないんだもん。
だからこの旅では通りすがりに赤と青のくるくるしてる、あの床屋さんの看板があったら事故らない程度にガン見して、今まで数々の失敗から学んだ床屋センサーをフルに発揮して見定めてやろうと。それでピンときたら、そこで髪を切ろうと内心思ってるんです。
でね。
さっきちょっと書いたように前の日も遅かったの。21時過ぎに我が家に帰り着いて。普通にクッタクタで。
飯も食わなくていいかもと思うくらいに、とにかくすぐ寝てしまいたいような状態でしたから、さすがにそのまま金曜の夜から旅に出る気力がなかったのは、いいことといえばそうなんですけども。
その時はビールの一杯も飲んで、テキトーにもほどがあるような飯を食べて寝たんですけどね。なにかやっぱり旅に出られるってことで、少しはテンションが上ってたんですかね。
早起きしちゃって。2時に。
早起きっていうかまだ深夜だろ。秋の夜長だっての。まだ深夜の2時だよ。
もちろんそこから一切眠れないから。晩飯の時点ではクッタクタのあまりに食欲がそんなになくて、買ったはいいけど明日の朝ごはんにすればいいやと思ってたあんかけ焼きそばを食べちゃったりして。2時に。ますます眠れないわけ。
じゃあ今から出かけようかとも思ったけど、例のルールがあるから。あれがあんだよ。
でもさ、夜中の2時に洗濯機回すのも掃除機かけるのも、気が引けるじゃん。一軒家だったら好きにすればいいよ。そうじゃないんだから。近所迷惑ってもんがあるわけ。
いくらあたしが超高級タワマンの最上階に住んでるとしてもさ、さすがに下の階の人に迷惑じゃない。月99.8万円のデザイナーズタワマンの最上階の9LDK、プール、雨漏りするサンルーム、破れた障子、柱に知らねぇ誰かの背比べ跡ありの「はじめ荘」に住んでるとしてもだよ。さすがにね。
で、とりあえず暇つぶしにネットでウィキペディアを読み漁ってたりしたら、いつのまにか7時になってて。ハッ! って。2時だったのに! ってなって。
ようやく重い腰を上げて、勢いがつくような音楽をかけながら気が済むところまで掃除をして、一応ルールは守ったってことに気を良くして旅に出られる運びになったのが10時くらいなんです。
前向きと後ろ向きのリフレイン
予約したホテルのチェックイン可能時間が15時。今からのんびりドライブしても充分間に合う時間ですから、途中でコンビニに寄ったりしながらゆっくりと旅がはじまりまして。
急ぐ必要もないし、気が向いたら寄り道したっていい。右に曲がりたくなったらそうすりゃあいいわけで、おおむねホテルに向かってる方向だけあってりゃそれでいいや、ってなもんでね。
気ままに自由に、移ろう景色とそれを感じる自分だけがわかっていればいい。そんなですよ。そんな旅。
で、寄り道もしたのはしたんですけどね、途中で車を降りたのはコンビニくらいで、ほぼほぼまっすぐ辿り着いちゃって。ホテルまで。
もちろん、床屋探しもしましたよ。床屋センサー、額から赤と青のアンテナを出しましてね。ひよんひよんさせながら、床屋を発見するなりガン見しましたよ。
でもなかったの。なんか違うなって思ったり、駐車場が満席だったりして。
で、結局ホテルの近くまで来ちゃって。ホテル、まだ開いてないわけ。ぜんぜんなの。
じゃあいつもの、スーパーとか巡って買い出しして、お部屋でのんびり用のお菓子とかも買ったりとかすればよさそうじゃない。でもなぜか、そうするのもなってなってんの。
それには気が乗らない。じゃあどうしようかってなって、近くにあったコメダ珈琲に入ってみたりして。コーヒー頼んだりして。2時間近く粘ったりして。
結構お客さんもいて、場所柄なんだけど外国語も聞こえてきたり、おばさまが密やかに談笑してたり、本を読みふける妙齢の女性がいたり。そこに混ざって、何をするわけでもなくコーヒー飲んだりして。それもいいなと思ったりして。
そうしてる間にこれからどうしようかって考えたんだけど、もうホテルから出なくていいやと。ベッドに寝転がってごろごろしようと思って。
スーパーまで行っての買い出しさえも面倒だから、すぐそばのコンビニで適当に揃えればいいやって。
あの。
旅って前向きなもんじゃない。移動してどっか行くわけだからさ、前向きなもんでしょう。
なんなんだろうね、旅してるとまあまあ後ろ向きになったりするの。前向きだったすぐあとに、なんか後ろ向きになってるの。なんなんだろう。
で、時間までコメダ珈琲でなーんにもせず。
チェックインのちょっと前にコンビニまで行って、ビールとかそんなのを買って、ホテルに入りまして。
すぐ飲むであろう2本のビール以外を部屋の冷蔵庫に入れて、乾杯も言わずにプルタブを開けて飲みはじめましてね。
もう、どこにも行く気がない。ドラクエウォークの歩数を稼ぎに散歩に行く気もない。
ホテルのベッドの上でぽよんぽよんしたり、ごろごろしたり、うつ伏せになったり仰向けになったりして、一切なんにもしない。なんなら温泉付きのホテルなのに、大浴場にすら行かないんだよ。
そのうち眠くなってきて。部屋も静かだし、ベッドも広いし、アルコールも入ったしそういうことかなと思ったんだけど、よく考えたら寝てないんだよね。2時に起きてから寝てないのを思い出してさ。
で、買ってきたビールもなくなったし、半分ふて寝な感じで仮眠しようと。ふて仮眠。ふて寝(仮)。
これもう、家にいるのと一緒じゃね? なーんにもしてないもん。
徘徊は夜に
それで、ぐっすり寝付けるならそのまま寝てもいいやと。それで体力が、なにより気力が回復するなら、そのまま朝になったっていいやと思ってたんだけど、起きちゃったよね。21時に。
また半端な時間だよね、21時ってと思って。
でもちょっとは、外に出てみようかなという気になってきたの。ようやく。
で、ネットでリサーチしてみたんだけど。
一度寝たとはいえ、ほどほどに飲んでるから運転はしないとして、歩いて行けるような距離には営業してるお店がほぼないんだ。さすがに床屋はやってないし、居酒屋みたいなのはあるけど、そこまで前向きな気持じゃないし。
せいぜい昼間行ったコンビニか、遠いけどドラッグストアか、そんなところで。
でもまあ、ちょっとはさ、外に出ようかなと思ったっていう、それを活かしたいというか。そう思ったんならそうするべきだ、みたいなのもあり。
とりあえずビールもないし、コンビニでもいいからと思って着替えて、ホテルを出たんです。
ホテルが駅に近く、目指すコンビニは駅をまたいだ方向にあるんだけど。
駅前といっても、いわゆる繁華街はなく、比較的最近通るようになった新幹線の駅として再開発的に整備された地域で、駅の周辺はビジネスホテルがいくつかと土産物屋や飯屋にコンビニがあるくらいで、あとはほとんどが住宅地といった感じ。
この時間ならまだ駅の構内を通って向こう側へ渡れるんじゃないか、そっちのほうが近道かなと、まずは駅を目指して歩きはじめまして。
ようやく秋めいてきた10月初旬の夜ですよ。着ていく服をどうするか、ちょっと迷ったものの季節柄さすがに長袖にしておこうかと、この日は着替えも含めて長袖を着てたんだけど、それで正解。さすがにちょっと肌寒かった。
近所に一軒しかない居酒屋から出てきたであろう、そして数軒しかないビジネスホテルのどれかに泊まるであろう、スーツ姿のサラリーマンがふたり、上機嫌で歩いてきたのと、駅に降り立ったばかりと思しきスーツケースを引きずった女性とすれ違った他には、誰も歩いてない感じ。
駅を通り抜け、コンビニの脇に出る道を歩きながら、ほんのちょっとだけ興味を持ったのと、起動しているドラクエウォークの目的地の兼ね合いで、コンビニはいったんパスして、夜の住宅地を歩いてみるか、なんて気が起きたりしてね。
駅の周辺は新しく造成された区画なんでしょう、建物も家も新し目な感じなんだけど、少し歩けばそこに昔からあるであろう、住宅が集まった通りに差し掛かるんです。
そろそろ22時。家の灯りも消えているところのほうが断然多くて、街灯がポツポツと街を照らしている他には手元のスマホの光だけが頼りの、深夜徘徊なんだけど。
これがねぇ、楽しい。
ちょっと楽しい。誰もいない知らない街を歩いているシチュエーションが楽しい。
あと、立つ瀬のない感じ。寄る辺ない感じ。
さっきのサラリーマンもスーツケースの女性も、いるべくしているわけじゃないですか。新しく出来た新幹線駅の周りなら、出張中でスーツ姿のままちょっと一杯飲みに出たサラリーマンも、ガラガラとスーツケースを引いている女性も、そこに居たっていいわけでしょう。
本来ならその土地の人間じゃないという意味では、こっちだってその分類に入ってるのに、出張中のサラリーマンもスーツケースの女性もその風景にきちんと納まってる。溶け込んでるの。
登場人物として居ていい感じ。夜の郊外の新造された新幹線駅前の絵を描くとしたら、あるいはそういうドラマを撮るとしたら、間違いなく出てくる人物像なのね。
顧みて、自分の異分子感というか。比較するあまり、逆に居ちゃいけない気がしてくるみたいな。
それも込みで、いま旅してるなって、妙に思わされたよね。
で、徘徊もほどほどで止めて。
だってあやしいから。だーれも歩いてないんだもん。ただただ民家が並んでる町を、夜中にアテもなくぶらぶらしてんだから。旅してきた人が歩いていい状況じゃないっていうか。
あれだよ、次の日に町内会の連絡網で不審者出たって回ってくるやつだって。そんな気がして仕方がないんだもん。そのくらい普通の住宅地を歩いてるんだもん。
コンビニまで戻ってきて、足りないぶんのビールを買い足して、また駅を通ってホテルに戻ってからは適当に飲んで、その夜は寝てしまいました。
暑さから逃れたい
二日目。
めっちゃ天気がいいっぽい。ぽいっていうか、予報を見ると晴れなんだけど、最高気温が30度だって。
30度だよ?
いま10月だよ。こちとら長袖だってぇの。そりゃ長袖持ってくるよ、10月なんだからさ。
で、とりあえず朝ごはんかなと思って。無料のバイキング的なのもあったんだけど、普通なら行くんだけど、今回はパス。だって気が乗らないから。感染症対策とかそういうのは関係なく。気が向かないから、タダでもいかないの。
その代わり、あたしにゃカップヌードルがあるからね。旅の朝食といえばカップヌードルなんです。あたしにとっちゃそうなんです。
今、スマホでこの記事をペタペタ書いてんだけどね。カップヌードルって入力すると、変換候補に必ず「CUPNOODLE」が出てくるの。カップヌードルってカタカナよりも前に。
日本にいて英語表記でCUPNOODLEって書くことそんなにある? 日清の社員でもそんなに書く? 国際派なの?
で。話を戻して。
ビジネスホテルのさ、今じゃ家庭にもあるけど、昔はビジネスホテルにしかなかった、すぐお湯が沸くポットあるじゃん。ティファールとかの。あれでお湯を沸かして。
なんか旅先で宿に泊まると、なぜかお湯を沸かしたくなるよね。あれなんなんだろうね。とりあえずお茶飲んでみたりさ、カップ麺作ってみたり。なんか部屋でお湯を沸かしたくなるの。
そんなで朝ごはんは終わらせて、ゆっくりめにチェックアウトしたのね。今日の予定としては午後の遅めな時間に例のリラクゼーションの予約をしてるから、それまではどこかで時間を潰す必要があるんだけど、外が30度となると話が変わってくるわけ。
長袖だから。
外にいたらどうやったって汗をかいちゃうじゃん。汗まみれでリラクゼーションのお店に入れないでしょうよ。急にそんなお客さんきたら、たぶん嫌じゃん。
だからどうにかして、涼しい場所にいたい。そうすると、思いつくのは昨日も行ったコメダ珈琲でチェックアウトの10時から数時間粘るか、エアコンをガンガンに効かせた車でこのあたりを徘徊するしかないの。
あわよくばセンサーにピンとくる床屋さんがあればなおよしなんだけど、それはもう読めないわけでしょ。
で。
とりあえずチェックアウトしたんだけど、目の前の新幹線の駅がなんか気になって行ってみるかということになり。
駐車場の方はもう少し止めてていいってこともわかって、いったん車に荷物を置きにいってね。荷物ったって着替えた長袖の他には、いつものボディバッグひとつなんだけど。
それで車にいったん戻ったんだけど、あったんだよ。車の中に着替えの半袖のTシャツが。多分急に雨に降られたら、みたいなことで車に積んでおいたんだけど、すっかり忘れてたのね。
これで多少は暑くなっても長袖でいるよりはいいやってことになり、それに着替えて駅の方に歩いていってみたんです。
駅は在来線が地表にあって、その上に新幹線のホームがある感じなんたけど、ちょうど在来線のホームに変わった感じの電車がいて、駅の構内に入らなくても見えたのね。
それ目当てのカメラを持った人とか、あとは散歩中のお父さんとと子供とかが電車を見ながら発車を待ってるの。電車のそばでも駅員さんがふたりくらいで旗持って、出発待機な感じなんだ。
鉄道は全然わからないんだけど、昔で言うお座敷列車的なやつだったみたいで、大きな窓の食堂車があるような電車がゆっけりと出ていくのをしばらく眺めてたりして。
一周したい
それで多少は時間を潰したものの、駐車場の期限もあるし、とりあえず車に乗って適当にドライブをしてみたんだけどね。
天気そのものはいいし、日曜日だけどそんなに渋滞してもいないし、運転してる間にちょっとテンションも上がってきてて。
そしてピンとくる床屋も見つからないから、車を止めるだけの理由にぶつからなくて。
気がついたら長野にいたよね。県境越えてたよね。野尻湖の湖畔にあるちょっとした観光客向けの売店コーナーみたいなのでソフトクリーム食ってたよね。
湖からいい風が吹いてて、さすがに30度はいってなさそうだけど、半袖で汗ばむこともなくちょうどいい感じなの。
お客さんもいるにはいるんだけど、ごったがえすほどはいなくてほどほどで。
なんかね、なにからなにまでちょうどいい感じ。ここならちょっと居ていいかなっていうか。好き勝手に歩いたりしてても、売店でなにか買い物しててもいいかなって。
どうせ歩くならそうだ、ドラクエウォークを起動しておかなきゃってのを思い出して、いよいよ歩くっていうモードに気持ちも切り替わってね。
で、さすがにそこの場所だけであと何時間もは無理だなってなって。野尻湖も対岸まで見渡すとなにか色々ありそうだし、これは野尻湖一周なんて面白そうじゃないの? とか思いはじめて。
でもね、予約してるから。その時間には戻らなくちゃいけないから。
だから、ネットで野尻湖一周とか検索してみたんだけど、どうやら車で一周するよりも歩いたほうがよさそうだなと。こっちは歩くモードになってるから。一周するなら歩いてのほうがいいなって。
ただ、それをやっちゃうと、万が一歩ききれなかったり時間に間に合わなかったりしたらまずいなと。それはさすがにダメじゃん。いくらダメ人間だからって、予約したのに遅れるのはダメじゃん。
心ではどう考えても今、徒歩で野尻湖一周なんだけど、仕方ないかってなって。
でも残念ではあるものの、偶発的とはいえ久しぶりの県外脱出だし、気分はむしろいいほうなわけ。だからとりあえず、この周辺だけでも散策しようか。それである程度時間も潰せるしなにか面白いものがあるかもしれないし、となり。
その売店コーナーとか土産物とか、あとは貸しボートとかのお店が並ぶあたりをウロウロしてると、やたら象の看板とかが目立つのね。
どうやらこのあたりでマンモスが発掘されたらしく、それを観光のウリにしてるらしいの。
マンモス博物館はこっち的な看板もあったんだけど、そんなにマンモスは興味がないわけ。マンモス好きの人が読んでたらごめんね。太古のロマン的なものはわかるんだ。わかるけど、そこまでマンモスにはね、うん。うん。
マンモスとギャルと犬とあとひとり
で、まあもう色々歩いたし、野尻湖一周にまだちょっと惹かれてるけど、さすがにあきらめる意味もあって、そろそろ出発しようかなと思って。
で、車に戻って、スマホのドラクエウォークの画面を見るとさ、なんか見慣れない影がいるわけ。
これは敵のモンスターのシルエットなんだけど、真っ黒なのは初めて見ると思う。もう2年もやってるけど、これはなんだと。
そこでピンときたのは、おそらくこれはまだ出会ったことのないモンスターだと。はじめましてのやつだなと。
ドラクエウォークをやらない人にも説明すると、ドラクエウォークで敵と戦って倒すと、そのモンスターが「こころ」を落とす場合があって、そのこころを集めることでこっちが強くなったりするのね。
で、このシルエットのモンスターはそのこころを必ず落とすタイプの表示がでてるわけ。
野尻湖でそういう出会いもあるんですよ。現実にあるものだけじゃなくて、仮想の中にもそういう巡り合いみたいなことがあるんだなって。来てよかったじゃんって、思うよね。ゲームが云々じゃなくて、そういう面白さみたいなことがいいなと思える。
だから、また車を降りてさ。
その真っ黒なシルエットのいるほうに歩いていくんだけど、どうやら例のマンモス博物館に向かってるっぽいの。
で、そのままスマホに表示されてるシルエットを目指して歩いて、このまま行けば間違いなくマンモス博物館だなって道に差し掛かったんだけどね。
目の前に、ギャルが歩いてるんです。
見たこともないくらいの上げ底サンダルと、事件に巻き込まれた可能性も否定できないようなビリッビリに破れたダメージジーンズで。髪の色もどうみたってギャルな感じの、スラッとした女性がひとり、前を歩いてるんです。
だから、後ろ姿しか見えないんだけど、颯爽と前を歩いていくわけ。マンモス博物館のほうへ。
野尻湖のほとりで、観光地だからさ。色んな人達が集まってくるから、中にはいたっていいでしょうよ。マンモス好きなギャルだっていたっていいでしょう。
でもそのマンモス博物館に通じてる道って、野尻湖のすぐそばなんだけど、すぐ地元の民家が並んでるような一帯になってるの。けっこうのどかな場所なんだ。売店とかがあるそこだけが、観光客がいてわーわーなってるけど、ちょっと外れたらすぐ普通の田舎道があるような場所なの。
だから、違和感がものすごいわけ。野尻湖の貸しボートに乗ってキャッキャいってるぶんには、多分ぜんぜん違和感とかないんだと思うの。昨日の夜、ホテルの前ですれちがったサラリーマンとかみたいに。
でも、商店街ですらないちょっとした田舎の小道を歩いてる、しかも多分マンモス博物館に向かって、それもギャル系の女性がひとりでっていう。
そりゃ、いたっていい。いいのに、マンモス博物館とギャルっていうのが、上手くつながらない感じっていうか。
で、こっちもドラクエウォークのシルエットを目指して、どうやらマンモス博物館に向かってるから。あんまり追いついてもなんだしと思って、なんかそのへんの花とか写真に撮ってみたりして、距離を開けたんだけどね。
そのギャルは普通にマンモス博物館の入り口を通り越して、颯爽と歩きすぎていったよね。多分地元の人だよね。別に野尻湖周辺ににギャルが住んでたっていいよね。なんだよ、いいんだよ、ギャルがどこに住んでたっていいだろうよ。
なにこの感じ。マンモス博物館に行ってほしかったなって、ちょっと思ってるこの感じはなんなの。
でね。
ドラクエウォークのシルエットのモンスターは無事に出会って倒してね。一応、マンモス博物館の敷地内に入ったから、念のため入館してみようかなと。ここまできたらさ、一応は。
で、とりあえず入口に行ってみたら、今度はおばあさんがいて。係の人とかじゃないの。犬を連れた、こっちはどう見たって地元の人だろっていう感じの。
その人が犬とずっと話してるわけ。なんとかでちゅねーとかって話かけてるわけ。ずーっと。
多分ただの犬好きのおばあさんだと思うよ? だけどちょっと異様な感じがするわけ。マンモス博物館の正面入口の前で、犬にずっと話しかけてたら、犬をマンモスだって思ってる可能性だってあるじゃん。
前世。前世がマンモスの犬を飼ってるかもしれないじゃん。
だから、万が一目が合っちゃって、
「…あなたもそう思うわよね?」
とかって真顔で言われたらさ。
大変なことになりかねないと。すぐに踵を返して車に戻ったよね。
また来よう
それで、時間も時間だし、野尻湖はまた今度と言い聞かせて出発したんです。
野尻湖からの戻り道も、ちょっと遠回りしたりしてね。
時間通りに例のリラクゼーションを受けてきたんだけど、やっぱり三半規管周りのメンテナンスというかケアは、あたしにはやったほうがいいというか合ってるみたいで、その後しばらくはまあまあ調子も悪くないような感覚もあり。
近ければ通って様子をみたいなと思うくらいには、いい体験だったなぁというのが、素直な感想でした。
もし、次も行くなら、野尻湖一周もセットでできるような日程がいいなと思ってるけど、その後しばらくは連休のないような日々が続いているところです。