連休を使って東北一周を目指して続く旅です。
今はその旅の4日目。岩手県の陸前高田にいて、なんだかんだで11時くらいになり、そろそろ出発しないといけないなという頃合いです。
東北一周するためには
今思えばこの日あたりからね、ちょっと変な感じになってくるんです。
福島から始めて、宮城、岩手と東北6県のうち3県クリアじゃないですか。で、4日目でしょ。なんだかんだいって1日1県ずつクリアしてるんです
車中泊した場所も、同じ県で2泊はしていなくて、毎晩違う県で寝てるの。いいよねぇ、旅してる感じがするじゃないですか。
でね。
そしたら今夜は青森だよねって、自然とそんな気になってくるっていうか。別に岩手で2泊したっていいのに、なんとなくそういう気になってくるの。
いやそれより、1日1県ペースだって東北6県なんだから6日かかるわけですよ。そんな当たり前のことに今さら直面するわけ。
休暇だって無制限じゃないからさ。いくらこの年のゴールデンウィークが比較的長いっていったって、なんなら一日、休日出勤が入ってっから。その日までには帰らなきゃいけないの。
かといって陸前高田まで来ておいて、かえりまーすってわけにはいかないでしょう。
なんでそんなに東北一周なのかっていうのも、理由めいたものが一応あったりするんだけど。まあ、おいおい書くとして。
45号線を北へ
とりあえずもう4日目の午前中が終わりそうなんです。プチ滞在もいいけど、早めに出発したほうがいいだろうということになり。
国道45号線というのが、どうやら北へ北へと伸びていて、それに沿っていけばナビとか使わなくてもよさそうだと。
それで、とにかく45号線をひたすら走るってのを昨日あたりからやってるんです。
ただ、その45号線と半ば並行するような感じで高速道路の三陸道、正式には三陸沿岸道路っていったかな。それが走ってるのね。
で、例えばお風呂入りたいから日帰り温泉ないかとなって検索するじゃん。で、そこまでナビを起動して道案内させると、位置関係や距離によってはまあまあその三陸道を行きたがるの。
こっちはオール下道っていうのもあるからさ。
これはね、その旅の途中でいつのまにかできた、1県1泊みたいな謎の自分ルールとは違うんです。ちゃんと理由があるの。
高速で行ったら拾えないものもいっぱいあるわけ。出会えないことがあるわけですよ。曲がりたい街角とかさ、なんか捨て置けない商店とかさ、そういうのは高速道路を走ってると出会えないでしょう。
そういうなにか偶然見つけた、ここまで書いてきたような場所でいうと、ちょうどいい海水浴場の青い海とかさ。たまたま入った温泉とかさ、そういうのがいいじゃない。
それがナビの設定で、有料道路は使わないようにしてるにもかかわらず、やたら三陸道をおすすめしてくるんです。
前に書いたけどこの旅でauのナビアプリを試してる関係もあって、アプリが変なのかと思ってたら、その三陸道ってかなりの区間が無料で通行できるのね。知らなくて。
でもさ、自分のことだから、いったんその三陸道をアリってことにしちゃうと、今度は降りないと思うんだよ。一気に走破しようとするから。有料の高速に乗ってもそうなんだから。SAもPAも降りるのが面倒になるの。
要は、目的地に着くのが目的になっちゃうっていうか。いや、それでいいんだけど、一目散に目的地に行ってしまうのが、それじゃあまりにも味気ないから下道でなるべく行ってみようと思ってるんです。
それをちょいちょい三陸道に乗せようとするし、こっちも慣れてない道だから間違って乗っちゃったりするのね。
ダメなんだって。下道がいいの。
だからすぐ降りて、もー! って言いながらその区間を戻って下道をもう一回走ったりしてんの。
…なんかね、ちょっと変な感じになってきてんです。
走れども走れども
でね。
なにせ長いんだ。岩手県って南北に長いの。
今いる陸前高田から青森県を目指すと、相当走んなきゃならない。
で、今日は5月2日で、連休の谷間の平日だと。そんなに道も混んでないだろうと。
これが明日から、ゴールデンウィークの後半になったら高速だろうが下道だろうが相当混むんじゃないか。
ってことは、今日は本来、がんばって走っておくべき日だったんじゃないか。それを必要とはいえ、前回書いたみたいにプチ滞在とかいってのんべんだらりと過ごしてしまったんじゃないか。
そんな、変なあせりみたいなのも、ちょっと思い始めるんですよね。
ともかく、陸前高田から釜石方面に向かって45号線を進んで行くんだけど、どうも変だと。どこかで道を間違ったらしい。
そう思って道の駅を見つけてそこでマップを起動したら、45号線を外れてどうやら内陸の方に向かってるってのがわかり。
その道の駅も混んでたからすぐ出ましてね。
来た道を、もー! って言いながら戻りましたよね。
で、そんなロスがありつつも釜石を抜けて宮古に入って。途中で給油したり。
ガソリン価格もここまで東北地方を回った中では、福島県は比較的高くて、自分がいつも利用するガソリンスタンドより20円くらい高くても普通っていう感じ。この当時ね。
宮城に入って、仙台市近郊は150円台前半からって感じで、岩手の内陸部は行ってないからわからないけど沿岸沿いは160円を境に上下してるっていうイメージでした。
長距離を走るからガソリン価格も当然気になるんです。できれば安いところで、なおかつ給油用のカードが使えるスタンドで、みたいなことも、この旅の中では常に頭の片隅にあったんですよね。
そのまま午後の3時半くらいまで走りまして。野田っていうところのローソンでようやくまとまった休憩を取ることにして。
なんだかんだと、岩手の北の方まで走ってきたんです。それなのにまだ出られないの。岩手の掌の上にいる感じ。
でもさすがに、もうちょっと走れば青森までは、日が暮れる前にはなんとかっていうところまでは来てるわけ。
待てよと。
青森に入ったはいいけど、道の駅とか、あと日帰り温泉とかあらかじめ調べておいて、早めに動いたほうがいいんじゃないか。
だって明日からゴールデンウィーク後半戦なんだもの。今夜からもう混み始める可能性だってあるよね?
直感と理性と
それで、道の駅とかスーパーマーケットとか日帰り温泉を検索しはじめるんですけどね。
これが全然、ピンとくるものがないの。
昨日まであんなに、検索でズラッと出てくる候補の中からこれじゃね? って感じで選べて、しかもそこが当たりという、あの直感的なものが全然働かない。
いやむしろ、今までが当たり続きだったからこそ、いつもいつもそんなに上手くいかないだろうみたいな空気もちょっと出てるんです。
待てよ待て待て。落ち着こうよ。
まず第一優先は道の駅だよね。
日帰り温泉は優先度が低くていい。お風呂で疲れを取りたいけど、ダメなら明日になったっていいじゃん。
メシだってね、なんだっていいんだよ。コンビニ弁当でもカップ麺でも吉野家でもいいの。
でも道の駅は、休むのにちょうどいい場所が空いてるかどうかがわからないから、なるべく早めに到着しておきたいよね。
それに、日帰り温泉や飯屋なんかより絶対数が少ない。行ってみてダメだとなったら、次の道の駅まで相当距離を移動せざるを得なくなるかもしれないし。
そうやって道の駅を調べてみるんだけど、これから向かって日が暮れるあたりで到着できる範囲に、ピンとくるのがないの。
あたしの中で、車中泊利用のための道の駅の選び方ってのがあるんです。航空写真を使うんですけど。
そもそも車中泊禁止の道の駅もありますから、目安として駐車してる大型車が航空写真に写っていれば、おそらく夜間も大丈夫じゃないかという。あくまで目安ですけどね。
他にも、駐車場のスペースの広さと建物の位置関係も航空写真で掴んでおくんです。
アイドリングの音とか、出入りする音とかってやっぱり聞こえてくるので、できるだけ車同士が離れて停められるのがいいんだけど、広すぎるとトイレまで行くのが大変だったりするからね。
あとは、トイレのある建物が他の建物と別になってると、ちょっとマイナスポイント。
やっぱり、夜中も灯りが点いていて道路情報のモニターとかがある建物にトイレもあるほうが、安心感があるというか。
で、こんな感じ自分なりの理屈で選んでいくんだけど、やっぱりピンとこない。
こない中でも、まあまあここならいいかどうか、くらいの道の駅があって、ひとまずそっちに行こうということになり。その道の駅がいいところなら、そこを起点にして温泉でも食事でも選んでいけるわけですからね。
そう決めて、岩手のローソンを後にして一路、青森県へ向かいました。
到着したのにまた迷う
そこから青森県の階上、これが読めなくてね。「はしかみ」っていうらしいの。そこまで50kmくらいあったのかな。
目指す道の駅に辿り着いたのは、もう日も落ちかかったころだったと思います。
建設省指定 |
テナントの小屋みたいなのが並んでてそっちは閉まってるものの、一番メインの物販なんかをやってる建物はまだ営業時間中のようで、とりあえず中に入ってみたりして。
ぐるっと見て回ったりして。
駐車場に戻ってみたりして。
…なんか違うなと思ってる自分がいるわけ。
いやね、念のために書いておきますけど、普通のちゃんとした道の駅だったよ。設備も問題ないしさ。
今までが良すぎたんだって。当たり続きだったの。
それが、直感に影響してきちゃってるのはわかってるの。悪影響だよ。フラットな感じで選べなくなってきてるわけ。
あとで振り返った時に、最初はよかったな東北一周、みたいなの嫌じゃん。後半ひどかったなってなりたくたいんです。
そうなるとだんだん、変なバイアスがかかってくるの。
明日以降はゴールデンウィーク後半の連休になって、どこも混雑する可能性が高いんです。
人が集まれば変わったやつも紛れ込むんだから。
もちよん自分のことは棚に上げますよ。ニトリに売ってるようなでっかいラックの上に上げておきますとも。
そうなったら選ぶどころじゃなくなる。それは覚悟してる。
してるけど、ここまで当たり続きだったからさ、やっぱり今夜も来てよかったセーフセーフってなりたいわけ。
で、今までは気にしてなかった、口コミとかも見ちゃって。見ちゃってっていうか目に止まるんだよね。判断材料がほしいから。
でもあんなの、どこの馬の骨かわかんないやつが書いてる、ホントかウソかもわかんないようなやつじゃん。口コミってそういうものじゃないですか。
ひどいのになると、辛口レビュアーって自分から言っちゃってるようなのもあったりするじゃん。ペンネーム:ハバネロ食べ夫、みてぇなさ。
そういう口コミとか、変な先入観がつくから。そっちに引っ張られるからさ。基本、見ちゃダメなんだけど。
渋滞を避けるには
もう一点、今いるのは青森と岩手の太平洋側の県境あたりなんです。青森県内へ進んでいくと、よほど変なルートを通らない限り八戸市にぶつかることになるんです。
これから夕方の混み合う時間帯に八戸市なんていうデカい街に行くのは、ハマりに行くようなもんでしょう。それは避けたほうがいいだろうと。
そうやって色んなことを考え合わせていくと、やっぱりこの道の駅を出たほうがいいっぽいということになり。
難しい選択だよ。今日はもうここまで250kmくらいは走ってるから。疲れだってあるからさ。
それで、まずはやっぱり温泉に入りたいと。足とかもけっこうパンパンなんだわ。
ついてはちょっと気になる口コミはあるけど、直感的にはここじゃないか、でもどうかな、くらいの日帰り温泉が、八戸市の西の外れ辺りにあると。
だったらこういうルートで八戸市の中心街を避けてそこに行き、その後さらに西へ向かって十和田まで行けばよさげな道の駅があるから、ちょっと遠いし遅くなるけどそこで休もうという計画を立てて。
試しに使っているauのナビアプリを起動してみると、普通にナビさせただけでは八戸市内を通過させようとするから、このへんでナビを無視してこっちへ曲がる、みたいなことまでイメージトレーニングしてね。
あのね。あたしだって、わかってるの。
薄々気がついてるんだよ。
なんか変だよね。おかしなことになってきてるとは思ってる。
でもその時は、他にないわけ。自分で探して選んで決めて行ってみるしかないんだから。
てゆーか、なんでこんなに行き急いでるのかよくわかんないの。だってここまで、ご当地名物とかほぼほぼ食ってないんだよ。盛岡冷麺も牛タン定食も喜多方ラーメンも食ってないんだよ。
そういう有名なやつじゃなくてたってさ、あんだろ。B級グルメ的なやつ。
いけすかねぇハーフの読モ崩れみてぇなのが微妙な顔して食ってる、ローカル情報誌が急にもてはやしだした地元の人は別に好きでもないようなB級グルメとかあんだろうが。
あんなのさえ食ってないんだからさ。
でもここまで来たら、とりあえず東北一周だけはしたいじゃん。
なにこれ。なんなのこれ
アルミの鍵
で。
行ったよね。八戸市街をスルー気味に通り抜けて行ったよね。
八戸市は行きたいところがいくつかあったんだけど、昼間ならともかく帰宅ラッシュの時間帯で道もよく知らない都市部へは、ちょっと足が向かなかったんです。
まあ明日、気が変われば八戸方面に戻ったっていいんだし。
そうは思うものの、その戻るってのがちょっと腑に落ちない自分もいるんだ。
それは計画性がない旅ゆえに、そうなる面もあってさ。
計画があれば、ここからここまでは何キロ、じゃあ移動に使う時間がこのくらい、それならここではこの時間まで観光なり見物なりできるなって見通しが立つけどね。
そんな窮屈なの、やる気がないわけ。計画する気もないしその通りに動く気もないの。計画段階で行きたいと思ってたって、現地に来てなんか違うなってこと、あるんだから。さっきの道の駅ですらそうなんだから。
全部調べていって、その通りのものを見たって、ただ確認に行くだけになっちゃうもんね。そんなの、つまらないだろう。
計画しないリサーチしないから出会えるものがある、もっと言うと出会ったものが自分に響くと思うの。
逆に、成り行きで来てみてダメだったら、今回は縁がなかったんだって思うんですよね。
だから多分、十和田まで行っちゃったら八戸に戻らないという予感はすでにあるんだけどね。
で、道はちょっとあやふやだったけど、その目指してた日帰り温泉に着いたのはかなり陽も傾いたころで。
駐車場に入っていくと、そこそこ広い駐車スペースにけっこう車が停まってるんです。これは混んでるよねぇ…
ああまあ、でももう仕方がないと。今まで極力混雑を避けてきて上手くいってたけど、今夜以降はもうしょうがないんだと思って。
建物の外観もパッと見はよくある日帰り温泉っぽい感じだし、ササッとお風呂に入ってしまおうと思いながら、お風呂セットを取り出して玄関口に向かいました。
入り口を開けて中に入ってね。
もうその時点で、あれっとなってるんですけど。
靴箱の鍵が、アルミかなんかの小さい板で、靴を入れたら戸を閉めて板を上から押すと鍵がかかる感じの。
あの、昔ながらの銭湯でよくあるやつって言えば通じますかね。
任侠道にはげまれているかた
でも、券売機があるなと思って。
そういう昔ながらの銭湯って、番台にじいちゃんかばあちゃんでしょ。券売機があるなら、どっちかといえば近代的な、そういう感じなんだろうと思ってたのね。
券売機のメニューだって貸しタオルみたいなのもあった気がするけど、お客さんをサッと見た限り、みんなタオル持参なの。片手にお風呂セット率高めなの。
要は地元のお客さんオンリーな空気感しかしないんです。
そう思って見ると、あちこちに、
「任侠道にはげまれているかた、お断り」
だの、
「盗まれるから貴重品ロッカーに」
だの、張り紙が出てる。それもちょっと独特の言い回しでさ、なんか不穏な感じもするわけ。
で、思い出すのは、事前に調べた時に口コミにも、そういやなんかそれっほいことが書いてあったなと。
こっちは余所者じゃないですか。昔ながらの銭湯って暗黙のルールみたいなのもあったりするじゃん。
この時間帯のこのロッカーは、近所のじいさんがいつも使うから空けておく、みたいなの。風呂桶がこんなふうに置いてあったらその場所をキープしてる人がいるんだ、みたいなの、あるよね。
えーと、あの…
…だいじょうぶ、か、な?
みたいな感じになっちゃってるの。内心では。
それでやっぱり、そこそこ混んでるわけ。
ちょうど仕事終わりの時間帯っちゃ時間帯だからさ。部活帰りの高校生みたいな子から、いかにも海の男感のある、威勢のよさそうなオッサンまでいるわけ。
脱衣所も、鍵付きのロッカーとただのカゴとあって、ロッカー付近には大勢いるからそっちは行けない雰囲気になってる。
えーと、貴重品ロッカーどこだろうあったー! ってなって、とりあえずそこに服以外を入れて。
でも、こっちはササッとやったつもりでも、みんなそんなにモタモタしてないわけ。じいちゃんとかは別だけどさ、みんなシャキシャキしてんだ。
あとから思えば、ここに来慣れてるってことなんだろうけど、こっちは勝手がわからないからさ。
で、鍵付きロッカーは近寄れないからカゴに脱いだ服を入れて。貴重品は張り紙どおりに専用ロッカーに入れたよ。服は盗まないだろう。靴下片方だけ盗んだりとかしないだろうよ。3足500円のやつだよ。いらないだろ、そんなの。
銭湯の空気感
そこから風呂場の方へ行ってみるんだけど。
これがまたさ、洗い場にあるのが赤いボタンと青いボタンなんだよ。それこそ昔ながらの銭湯にある、お湯が出るやつと水が出るやつ。赤と青を上手く出してちょうどいい加減のお湯にして身体を流す、あれですよ。
もう完全に銭湯なの。お湯は温泉なんだろうけど。
青森の知らない街で、地元の人しか来ない銭湯に迷い込んだ感じなの。
ひとり日帰り温泉なんていつものことですよ。ひとり焼肉だろうがひとり居酒屋だろうが大丈夫ですよ。
でもね、居酒屋でも変なルールがある、もしくはありそうなとこあるじゃない。余所者お断り感のあるお店。
こっちは基本ひとり旅だから、無意識にそういうめんどくさいルールがある店を避けるクセがついてるの。自分には合わない店を嗅ぎ分けるセンサーを持ってるはずなんだ。
それがさ、順調だった旅がちょっとずつつまずいてきてるような感じとかさ。
あと、日程的なあせりみたいなものや、ピンとくる店がなかなか見つからないこととか、疲れもあったかもしれないけど色んなことが重なって、自分のセンサーがイカれちゃったのに気がついてないのかもと思い始めてるんだ。
いつもなら自分からは来ない場所に来ちゃったんじゃないかっていうのでいっぱいなわけ。
さいわい、背中に風神雷神みたいな人は見当たらないけど、サウナから出てきて水風呂へドッパーンといくオッサンとかは、どう見たって悪役商会所属ですよねっていう風体なんだわ。任侠道にはげまれているかどうかだったら、迷わずイエス! っていうさ。北野武のバイオレンスな映画に出てましたよねっていう。幹部役で。
もうね。
雰囲気に完全に飲まれちゃって。
あの、こんなこっ恥ずかしいエピソード書かなくたっていいんだよ。
なんかオサレな食い物と、インスタ映えスポットに行ったあたしカッケーってだけ書いときゃいいのかもしんないよ。食ってもいない牛タン美味いって書いとけば、ブログのプレビュー数を稼げるのかもしれないけどさ。
でもね、これを書かないと成仏しないわけ。
色んなものが浄化されないの。
ブログのネタになったからいいやっていうのがないと、やってらんないってわかります?
天気予報
でね。
でもまあ、ここまで来たんだし、なにより運転疲れも相当だからさ。
周りの雰囲気を見ながら、空いたあたりでデカい風呂につかってね。ひと息ついたの。
腰も痛いなぁ、でもこの温泉ちょーいいわー、効いてる感じがするなぁ、みたいな。
そこでようやく、周りが見えてくるというか。
確かに地元の人ばっかりっぽいけど、そっち系の人なんていないわけ。冷静になれば、そりゃ大抵は普通の人なんだよ。当たり前だけど。みんな青森の普通のおにいちゃんたちおじさんたちなの。
ちゃんと気を遣いあってて、洗い場を独占しないようにしたり、ちょっと間隔を空けたりしてて。
お風呂も長湯したり、浴槽の縁で座り込んだりせずに程々であがっていくようなんです。
なにより、けっこう自由にお風呂を楽しんでる感じも伝わってきて。
さっきの高校生らしき二人組も湯船に入ってきて。その話してる内容を聞くともなしに聞いてると、若いなぁ青春ってやつかなぁとかさ。
なんかちょっと馴染んでくるの。こういうのもアリかもなぁなんて。さっきまであんなにアワアワしてたくせに。
いつもはどうか知らないよ。こちとら流れ者で、今来たばっかりで、独特の雰囲気にビビったり和んだりしてんだから。
それで、風呂からあがってね。
ちょっとした休憩スペースにあるテレビで天気予報をやってて。
当たり前だけど青森地方の天気予報だからさ、青森県のどこそこ地方は明日は晴れで、波がどうでみたいなことをやってんの。
そうだよね。今、青森にいるんだもんね。
ここまで来ちゃったよね。福島から始めて、東北を半周しちゃったんだもんね。
…なんかね。
こういうのがいいんだよね。
見たことのない絶景とか、歴史ある建物とかも絶対いいんだけどさ。
でも、ああこのへんの人たちって、毎日この天気予報を見てるんだよなって。
そういうのにグッとくるっていうか。
地元の人しか来ないであろう温泉で、そこに上手く混ざれなくて右往左往したけど、結果ここに来てよかったなっていう。
多分ね、あともう2回行けば、ちょっとは慣れるんじゃないかなと思ったりして。
熊ノ沢温泉っていう、派手でも大きくもないけど、いい温泉に行ったって話です。
風呂上がりはビール
そのあとは、温泉でけっこうあったまったからか、なんか調子良くなっちゃって。
そうなるとお腹が空くの。
それもおかしな話なんだよ。
確かに運転は1日で300km近く下道を走ってりゃ疲れるんだけど、途中で1時間半とかそのくらいの間隔でコンビニ寄ったりはしてるのね。トイレも行くしさ。
で、その度になんか買うじゃない。トイレだけだと申し訳ないからさ。飲み物買ったり。東北限定っぽいお菓子とか買うの。間食してるんだ。
あと、東北で印象にあるのはヤクルト1000がどこに行っても潤沢に置いてあったんです。
自分がいつも行くスーパーとかでは、置いてあっても1家族様2本までみたいな購入制限がついてるんですけど、東北はどこに行ってもそれがない。ないは大げさか、一部は制限のあるところもあったけど、大抵は普通に何本でもどうぞっていう感じで。
そういうのもあって、毎日飲んでたよね。そのせいか、ちゃんとお腹が空くっていう。普段からしたら、けっこう間食しちゃってんだけど。
熊ノ沢温泉から道の駅に行く途中で立ち寄れるスーパーを、あらかじめ調べてあったんです。そこへナビさせながら向かうんですけどね。
着いたのが夜の8時くらいだったと思います。
駐車場に着いたら、メインの建物がちょっとした路地を渡った先にあって、お酒売り場は駐車場の敷地内の別の建物になってるんです。
こっちはさ、お風呂上がりですよ。
一日がんばったし色々バタバタしたし、ビールを飲む権利くらいあるだろうと。あるよね。ありますよね。
で。
まずはビールと思ったものの、とりあえず時間帯的に先になくなるのはお惣菜だろうってことで。
そのへんはわかってますから。こっちは長年、旅してるんですから。あと、先に冷えたビールを買っちゃったら、買い物してる間にぬるくなっていくじゃないですか。
だからここはまず、スーパー本体の建物へ行ってみるのが正解だろうと。わかってますから、こっちは。
青い森で夜を明かす
やっぱりというか。
お惣菜関係は、おつとめ品の争奪戦ももうすでに佳境に入っていて。
行った時点で、半額シール生成装置みたいな機械を押した白髪混じりの店員さんの真後ろに、何人かくっついてる感じ。半額祭りも終わりだなっていう空気が流れてるの。水風船もほとんど残ってない感じ。型抜きも並ばずできるみたいな。
その列に混ざるのもなんだし、せっかくきたスーパーの店内もぶらぶらと見て回りたい。でもメシは確保したいっていうことで、もう数分待てば半額になるであろう3割引きのお寿司かなんかを買った気がします。
相変わらず、知らないスーパーを見て回るのはなんかいいんですよね。
家族連れで、もしかしたら帰省してきたのかもしれないなっていう空気の人たちが、何食べようかみたいな会話をしてるのを、それも普段聞き慣れないイントネーションのそれをうっすらと聞きながら、何をするでもなくっていう。
で、ひと通り買い物を終えて建物から出て、お酒売り場のある建物を見たらもう閉まってんの。
あたしのビール。
つめたいビール。
おいしいビール。
そのために、そんなに安くないけどそれでも半額になってた焼き鳥をゲットして、備え付けのレンジでチンチンにあっためてあるのに。
もうね、車もほとんど停まってないだだっ広い駐車場で、声が出ちゃってるよね。
ビールは?
お風呂上がりのおいしいビールはどこ?
でもね。神様は見てるよね。青い森ゴッドはちゃんと見てる。
その隣にまだやってるドラッグストアがあんだよ。看板にデカデカと「酒」って書いてあんだから。ちゃんと黒ラベルも売ってるんだから。買うよ。買いますよ。ちょっとスキップ気味だよ。感情の起伏がおかしい。
そのまま十和田の道の駅まで行きまして。
これがもう暗くてどうなってるのかよくわからないんだけど、とりあえず端っこの方の駐車スペースが空いてたんです。
どうにか夜を越えられそうだなって。
まったりモード用の服には温泉で着替えてあるから、あとはリラックスできるようにシートアレンジしてね。
スマホでラジオとか聴きながら、ビールのプルタブを開けて。焼き鳥食べて。
ホテルでゆっくり、ベッドでまったりも大好きですよ。車中泊なんざ邪道中の邪道で、旅したんなら宿に泊まりなさいなと思ってるよ。もっと言えばさ、4連泊も車中泊するもんじゃないと思う。
思うけどその日は、これもそんなに悪くないよねぇってのが、正直なところだった気がします。
東北一周の旅も、折返し地点の青森まで来ています。