こういう話ってのはどうなのかと思わなくもないけど、せっかくだから。せっかくだからさ。もったいないから。
待つわ
結果から書くとちょっと病気になりまして。
病気っていったってピンからキリまであるじゃない。とりあえず今のところは命に別状はないんで、こうやってクダクダと書いてられるんですけどね。
んで、病院に行ったんです。
もともとね、病院ってのが好きじゃないんだ。そりゃそうだよね。健康なら行かなくていい場所なんだもん。行くってことはイコール不健康ってことなんだからさ。
でもまあ行かざるを得ない羽目になったから。行くには行ったんだけど。
これがまた混んでて。すごいの。
小さな病院なんだけど待合室とかいっぱいなんだもん。これが数年前なら密です警察に、密ポリスに見付けられて非難轟々。ゴーゴー非難なくらい広くもない待合室に人がいるわけ。
なんでゴーゴーを前に持ってきたかなんて知らないよ。病気なんだよ。別のやつ。そういう病気なの。治んないやつなの。
でさ、もう密も密。みっつみつになりつつ、受付して順番がくるのを待ってるんですけどね。
こっちもそういうのがあって以降、もともと人混みに行かない立ち振る舞いだったのがさらに輪をかけて行かないようになったってのもあって、いざ強制的にひとの多いところにいるっていうだけでも相当なストレスなの。
仕方ないよ。
そりゃ、もうそうするしかないんだから。具合悪いんだからさ。仕方ないのは百も承知なんです。
それにしても具合悪い中、人混みの真ん中で長時間待つっていうのはかなりダメージのデカい時間だったことは間違いないっていう。
そう、待ってる時間も相当なもんで。
病院なんか待つのが普通だから覚悟はしてるんだけど、それにしてもリラックスできるわけでもない場所で何時間も待つっていうのは、そこそこ忍耐強いと思ってる自分でもまあまあキツかった。
だから多分、そこにいるみんなが、待ってる時間が長いことに対して、心の中ではなにかあったと思うのね。口には出さないけど。
唐突に載せるみかんの雫。みかんゼリー。うまい |
でも、それはそこのお医者さんが患者の話をちゃんと聞いてくれておざなりにしないっていうか、紋切り型でサッサと診断して薬出してハイ次の方っていうタイプじゃないから時間がかかる、みたいなのもどうやらあるんじゃないか。
なんかね、時系列が戻ったりするんだけど。
今回行った病院は初めてかかるところだったんだけど、以前からかかってた病院がたまたまその日は休診でね。
前から行ってた病院はさっきも書いたような、ちょっとバッサリ感の強い診断をするお医者さんで。もちろん理論的にこうでこうでこうだよっていう説明はしてくれるし、実際そうなんだろうけどさ。
あと人気があるせいか、予約システムがネットでできるようになってるんだけど予約開始時間がきたら即満員みたいな感じで。
あれだよ、ダフ屋が出るんじゃないかと思うくらい。チケットあるよチケットあるよって病院の前でダミ声のあやしげなオッサンが立ってんじゃないかっていう感じで、予約開始直後にもう満員ですみたいになるんだ。
だったら、セカンドオピニオンじゃないけど、違う医者にかかってみようと思ったのね。
星の数
で、さすがに行き当たりばったりってわけにはいかないから。こっちは相当具合悪いからさ。ワンチャン、救急でとも考えたくらいだから。
で、とりあえずグーグルで近くの病院を検索するんだけど、これがそういう時代なんだなっていうのがあって。
検索結果で最寄りの病院が表示されるんだけど、そこに口コミの星の数が出たりするじゃん。
見ちゃうよね。見たくなくても表示されてんだもん。
食べログとかでもそうだけどこっちはさ、このへんだとどんなお店があるのかなくらいでリサーチしてるのに、評価の点数が出てくるじゃん。
で、意識してなくてもそれに引っ張られるんだよ。流されるの。星の数みたいなのが見えちゃったらフラットな状態になんか戻せないって。
これってよくない面もあると思ってて。
そりゃ星が4のところと2のところがあれば、4のところに行っちゃうじゃん。わざわざ2のところに行くのは違うじゃん。
ましてや飯屋ならともかく、病院だからさ。生命にかかわるところだから。怖いもの見たさで星ふたつの病院とか行けないって。玄関先で手術着着た背の高い男たちに囲まれそうじゃん。
なのに、その口コミの内容を見ると、わけのわからないところで点数を減らしてるやつもいるんだ。
「家から遠いので星は4つです」
とか。引っ越せと。家から遠いのはお前の問題だろっていう。
「病院食で出てきたヤサイマシマシドアブラニンニク太麺バリカタバリバリハードコアトッピング全乗せラーメンが美味すぎる。おかげで再入院が楽しみです。星5つ」
みたいなさ。出すな出すな。そんなの出すんじゃないよ。お前もまんまと食ってんじゃねぇよ。悪化してまた入院してんじゃねぇか。
「ザコシ似の院長、服は着ろ。星1つ」
…うん。そうだね。そのとおりだね。うん。…うん。
唐突に載せるシャインマスカット大福 |
あのね。
この人、病気なの。楽しそうに書いてるけど、そこそこ完治の難しいやつなんだよ。
まあまあよそう。そういうのはよそうよ。だったらこういう話をするんじゃないよっていう。
いや、でももったいないから。せっかくのネタなんだから。
でね。
こっちはほんのり切羽詰まってるから。急患もありかなと思ってるレベルだから。そんなどうでもいい理由で星を減らしたり増やしたりしてるレビューをつぶさに見てる余裕はないわけ。ザコシ似の院長がいる病院だけ避けとけばいいやって思ってるからさ。
んで、とりあえずここだと思った病院に行ったら、さっき書いたような混雑具合なの。キャパオーバーだなっていう感じの。
だから、待ってる人が不満を持つのもわかるわけ。仕方ないと理解しててもさ。だってこっちは具合悪いんだから。待つ体力なんかとっくにないんだもん。
待合室の人間模様
だけど、さすがに杖ついてよぼよぼ歩いてるじじいとか、まだ小学校にもあがってなさそうな子ども連れたお母さんとかが、口には出さずにどうにかそこにいる中で、あたしだけ文句言うのもアレじゃないですか。
それで、スマホ見て時間つぶしたり、ずっと見てるのもつらくなるから目を閉じてみたりさ。どうにかしてたのね。
その待合室の中に、子供連れのお母さんが二組くらいいたのかな。
ひと組は、おきれいなバッチリ化粧した感じの、お母さんというよりまだ独身な気配の強い人で。爪とかすげぇんだよ。猛禽類みたいなネイルしてるんだ。ネイルっていうより鉤爪っていう感じの。魔女っぽいやつ。
子供は普通の、まだ幼稚園とか小学一、二年生くらいの年だと思う。
今どきの子供って恵まれてるなと思うのは、タブレット持っててYouTubeかなんかで子どもウケのしそうな番組を見ておとなしく待ってんのね。
昔は、絵本とかが関の山だったじゃん。グリム童話とかありきたりの絵本を読んでるか、ひたすら窓の外を見てるとかそんな感じで待ち時間をつぶすしかなかったじゃない。
そりゃ、YouTubeのそういうのを見てれば、子供もおとなしく待ってるよね。いい時代だと思う。
そんな子がさ、自分の順番がきてお母さんと一緒に診察室に入っていくわけ。で、その子が診察室の中でギャン泣きしてるのが聞こえてくるの。
そりゃ今も昔も子供は泣くよ。痛いかつらいかで病院にいるわけだからさ。泣くって。
泣き声がもうすごいの。
バァアアアアー、って泣いてんだ。もうやだあああぁ! って。
やああだああぁぁ! おうちかえるるるるぅぅ、って。
ヤサイマシマシドアブラニンニクぅぅぅ、って。
注文してんじゃねぇよ。医者もオーダー取ってんなっての。
で、その子が診察室から待合室に戻ってきたわけ。
お母さんも、これはこっちの偏見も偏見、ド偏見なんだけどね。
あんなネイルしてちゃんとお母さんしてるんだよ。えらかったねーなんて我が子をほめて、猛禽類の手でよしよししてんの。
あたしなんかより、よっぽどちゃんとした大人なわけ。がんばったからチョコレートかっていいよーなんて言ってんだ。
その子どもと目があったんだけど、その子の顔が、どういえばいいのかな。
あたし、やったよっていう。やりとげたよっていう。
戦場から生きて戻ってきたっていう感じの。あの多数の犠牲者を出した戦地から生き延びて帰ってきたソルジャーの目をしてた。目が語ってたね。お前もあそこに行くのかい、地獄を見に行くのかい、頑張んなよって。
かと思えば、もういい歳のヴァヴァアが二人さ。なんか知らねぇけどずーっとぶつくさぶつくさ文句を言ってるんだ。他の誰もが黙って待ってるってのに。聞えよがしになんか言ってるわけ。
もうね、こういう歳のとり方をしちゃいかんよね。
見てご覧なさいな。
あの子どもの成し遂げたっていう顔。やってやった感。その子のほうがよっぽど大人だし、人間だよね。
ご褒美のチョコレートのために戦ったんじゃない、お国のため、いや愛する家族のためにっていうツラ構えになってるじゃないの。たいしたもんだよ。
待たない人が待ってみて
他にも待ち時間が長いからいったん外に出て、二度と戻ってこないおっさんとかいてさ。
もうここから早く出たいと思いはじめて。あたしゃそんなに人間ができてないからさ。戦場を生き延びた兵士の境地には至ってねぇから。
この待合室から出るだけですべての不調が治りそうな気さえしてきたころに、ようやく自分の番が回ってきまして。もう午前中の診察時間も終わりそうなころなんだけど、あたしのあとにもまだ10人はいたと思うな。
先生はちゃんとした人で。
問診からこういうことが予測できるからこういう検査をすると。ついてはこうでこうで、検査結果を見てこういう薬で改善されると思うからと、しっかり説明もあって。こっちも待ったかいがあったなっていう感じになったんたけど。
で、やっぱりね。
このブログでだったかTwitterのほうで書いたんだったか忘れたけど。
いくらいいお店、人、施設、サービスでも、自分の番が回ってこないと、いい体験はできないし自分の番が回ってくるまでが長すぎるとそのいい体験を味わう回数が少ないじゃない。当たり前だけど。
自分の持ち時間に限りがあるし、たいていは閉店時間ってものがあるから相手の時間にも限りがあるっていう中で、うまくマッチングできるタイミングってものすごく限られてる。
だから、自分の場合は待たないっていうことに重きを置いているし、それはそんなに間違っちゃいないと思ってるのね。
でも、成り行きでもなんでもいいけど、普段だったらやらないことをやった上で出会うものっていうのも、たまにはアリかなと今回そう思ったりして。
もちろん、ハズレだって世の中にはいっぱいあるから。それが全部いいとは思っていなくて。そこは縁があるかないか、みたいなことになってくるんだけど。
待ち時間のつぶしかたを探る
あと、待ち時間を潰すのに、もうスマホなしじゃ成立しないよね。昔はどうしてたんだっけと思っちゃう。
道をトボトボ歩いてる鳩とか眺めてた気もするし、マンガや雑誌でどうにかしてた気もするし、診察室から戻ってきた子供に戦地帰りの兵士の顔してるとかいっちゃうような、どうかしてる妄想力で乗り切ってた気もするし。
今回の待合室でも、本とか雑誌を読んでる人はひとりふたりくらいで、あとはほぼスマホだったな。いい歳のじいちゃんも高速でフリック入力してたし、さっきの猛禽類なネイルママも器用にスマホをいじってたし。
かくいうあたしも、先延ばしにしてた車関係の手続きを、その待ち時間にネットで終わらせたりしたりして、スマホとネットがないと待ち時間は過ごせない身体になっちゃったなぁという。
スマホで時間つぶしっていうと、動画を見るっていうパターンもかなりあると思うんだけど、こと診察室で見るとなると音を出すのもよくないじゃない。かといってイヤフォンをしちゃうと、呼び出しに気がつかなかったりするし。
自分の場合、ずっと映像を見てると目がつらくなることもあってYouTubeとか見てみたんだけど、やっぱり無理ってなっちゃって。
じゃあ、雑誌とかマンガをスマホで読めるサービスがあるじゃん、あんなのはどうだろうと思って。
auスマートパスってのに加入してるので、そのサービスの中にそういう雑誌とかをスマホで読めるってやつがあったのを思い出しまして。
で、さっきも書いたけど、普段は見向きもしないものになにか発見があるかもしれないみたいなモードにもなってたってのもあって。
じゃあっていうんで、普段だったら手に取ることがほぼないような週刊誌とかを読んでみたんだけど。
それで、思ったのはね。普段手に取らないのは理由があるな、あったんだなって。
基本、その興味がないことしか書いてないんです。週刊誌とか。もう一切。
誰と誰が一緒に手をつないで歩いてるのを撮りましたみたいなの、あるじゃん。誰と誰の、どっちもご存じないんだから。
ゴジラとメカゴジラが手をつないで六本木界隈を歩いてたら、こっちもマジでってなるけどさ。ビルとか踏み潰しながら、しかも敵同士が仲良さそうに歩いてたらそりゃあ大スクープだけど。
あと、ダンシャリ大好きっ子向けの記事とか。家の物ぜーんぶ捨てちゃいましょう的なやつ。あんなの、誰も得しないよなぁ。みんな物作って運んで売って暮らしてんだぜ。
もうね、まるっとどうでもいい感じ。具合が悪い中じっと待ってる時間の長さをちょっとでも感じないようにと思ってのやつなのに、悪化しそうっていう。
確かに、まれに発見もあるにはあるの。こういう新製品あるんだ、とか。こういうお店があるのね、みたいな。
でも、泥の中から砂金を探すみたいなさ。体調のいい日ならそれもいいかもだけど、さすがにメンタルにくるっていうか。
カレー・オブ・ザ・イヤー
じゃあ、ニュースでも見てみようかと。世の中なにが起こってんだいっていう。
そしたらさ、これ知ってる?
カレー大学。
カレー大学ってのがあって、カレー・オブ・ザ・イヤーってのを決めてるの。
それがね、そのどう言えばいいか、ちゃんとした活動をしてる企業が運営してるんだけど、ちょっと悪ノリも混ざってる感じで。
だってカレー大学のロゴマーク的なのからして、
Curry College
って書いてあるんだ。カレーカレッジ。
…狙ってるよね? 狙われてるよね?
で、あれって。そっち系のやつなのかなと思って公式サイトへ行ってみるとさ講座とかがあって、カレー概論とかカレーの歴史、カレー社会学みたいな感じのことが学べるらしいの。
- カレー大學(カレー大学) ウェブサイトhttps://currydaigaku.jp/
すごいんだよ、レトルトカレーの開発にかかわったりしてんだよ。あと卒業生が食品会社に就職したり料理研究家みてぇなことやってんだ。
それで出来た商品のひとつが、
「カレー好きの歯科医の作った こだわりビーフカレー」
だっていうの。ホントなんだよ。
なんでも、歯の矯正期間中はその器具がカレーで黄色になっちゃうからカレーが食べられないんだって。三年間。
それはキツいと。あまりにも酷な話だと。だったら、ってんでそのカレー大学の卒業生の歯医者さんが黄色くならないカレーを作ったらしいの。
あるんだって、カレー大学もその歯医者も。
あれかな、その歯医者さんに行くと受付とかに置いてあるのかな。アパホテル的な感じで、受付のカウンターに置いてあるのかな。
いつだったか出張でアパホテルに泊まって、チェックアウト前にロビーで同行者を待ってたらロビーにあるモニターでアパカレー誕生秘話みたいのを延々と流しててさ。
ああいうのを歯医者の待合室でもうずーっと。
矯正の器具が黄色くならないようなスパイスをブレンドしてはダメ、みたいなのを繰り返して繰り返してついにっていう。
で、診察室で子供がギャン泣きですよ。ギャーって。もうカレーは見たくもないいいいぃぃって。トッピングはソーセージがいいいぃって。
そこから帰ってきた子どもの顔つきが、退役兵のそれになってるっていう。
おくすり増やしておきますね
でも、確かにさ。カレーなんて日本の国民食じゃないですか。あたしももちろん食べますよ。
だからカレー大学とか、あたしが知らないだけであっても不思議じゃないよ。あってもいいけど、カレ―大学卒になるんでしょ。最終学歴が、カレ大卒って履歴書に書くわけでしょ。
卒論が、
「地政学上におけるザーベンブルグ公爵家の影響とカレー」
とかになるんでしょ。
あと、カレー大学野球部とか軽音サークルに入ってさ。勧誘の在学生とかが来てさ。
キレンジャーの格好した在学生がやってきて、青春をカレーと野球に捧げないかって言われて。や、授業が終わったらすぐココイチに行くんで無理ですって。キッパリ。
カレーと言えばキレンジャーってのもどうかと思うよ。いつの時代だよって。でも着ちゃったんだもん。脳内でカレ大三年の彼がキレンジャーのコスプレしてんだもん。出すしかないよ。登場させるしかないよ。
そうでしょうよ。カレー大学ってそういう感じでしょうよ。バーモントカレーにちょい足し選手権とかやるんでしょ。
それがね。どうも普通にカレーについて学べるっぽいんだ。カレー大学ではカレーについて学べるらしいの。
これも知らなかったけど1月22日がカレーの日なんだって。で、その日にカレー・オブ・ザ・イヤーってのを決めると。
色んな部門があって受賞作品っていうのかそれを決定してるんだって。その中のひとつにさっき書いた歯医者さんが作ったカレーがあるんだけど。
すごいよね。矯正中にカレーが食いてぇっていうさ。そのニッチなんだかニーズがあるんだか、微妙なラインの商品な。歯の矯正もしたいしカレーも食べたいって、そりゃあるかないかで言ったらあると思うけど。
あ、野球部とかはないよ。そっちはあたしの妄想のやつだだから ユニフォームが黄色と茶色で。バットからカレーのいい匂いがすることでキャッチャーを惑わせるっていう。集中力が乱されるから。
相手チームはそれに対抗するために、朝カレー食ってこないとダメなんだよ。だっておなかすいちゃうじゃん。カレー大学チームからカレーのいい匂いがするんだよ? 野球どころじゃないって。
あと軽音部ね。日本インド化計画をコピーして学園祭でステージに立つわけ。入口で配ってるドリンクはもちろんカレーだよ。
あのね、そこそこキツい症状で満席の病院の待合室にいるわけ。そりゃ実在するカレー大学にありもしない野球部とか付け足されることにもなるんだ。それでどれがホントの事か自分でわかんなくもなるの。
ほら、呼ばれたから。そろそろ診察の時間だから。
そんなだよ。そんな。