その店は家から離れてて、車で20分くらい走ったあたりにあるのね。
都市部の幹線道路がいくつかあるとしたら、多分旧道。街の起こりからするとおそらく古い時期からある道路で、都市開発が進んでいって今はもっと広い道が出来ちゃっててさ。通行量はそこそこあるものの、まあまあそんなに激しく混んだりもしない感じ。
そんな旧道からさらに角を曲がって住宅地へ入っていった先に、その店はあるんです。
素敵な喫茶店へ
素敵なブログならここで出てくる店っていうのは、住宅地の片隅に昔っからある喫茶店とかなんでしょう。
フランス語が由来だっていう店名の、ドアを開けるとカランカランと優しい音がしてそれに続いてブルーマウンテンの香りが出迎えてくれるような、洒落てるんだけど違和感のない喫茶店なんでしょう。
スポーツ新聞を広げるマスターと、タバコをくわえるご婦人たちと、老猫が窓際であくびをしてる小さな喫茶店の話をするんでしょう。
こちとら、そんな素敵なブログじゃねぇから。やってねぇから。食わず嫌いのピーマンくらいの勢いで、素敵を取り除いたような生活ですから。
今いったん入ったでしょ。喫茶店にいったん入ったよね。出ますよ。出ますから。そんな喫茶店に行ってねぇから。
その店ってのはドラッグストアなんです。普通の。大手のチェーン店です。派手でも地味でもない、普通のお店です。
通販よりも
きっかけはなんだったかな。
家から遠いっていうくらいだから、普段はそんなところまで行かないんですよ。日常生活をする上での行動範囲があるとしたら、その一番外っかわあたり。
ドラッグストアなんかもっと手前に何軒もあるし、買い物だってあちこちにスーパーとかさ、ホームセンターとかさ、そんなのいくらでもあるんです。
確か、そうだ。持病に効くって聞いた市販薬を取り扱ってる近所の店はないかと思って、ネットで検索したんじゃないかな。
最近じゃなんでも通販で手に入るじゃないですか。実店舗を展開してるお店も、ネット通販専門のウェブサイトを持っててそこでも物が買えるばかりか、そのサイトで買った物を実店舗に配達して受け取ることだってできちゃう。
なんなら店舗の在庫数まで、しかも結構精密なやつを教えてくれるところもあるよね。しじみ78個とか。大福301個とか。多い。大福多いよ。あと、しじみ数える係は何者なの? 探偵なの?
ただ、なんでも通販で手に入るせいで、その商品が売ってる店をネットで調べたい時に、通販サイトばっかりが引っかかるわけ。こっちはお店で買いたいと思ってるのに、売ってるお店を調べるのがけっこう大変だったりするんです。
通販もいいと思うけど、注文して配達してもらってその時間は家にいなきゃいけなくてみたいな回りくどいことをせずに、売ってるお店まで行っちゃえばいいって思っちゃうタイプなんです。あたしゃね。あたしゃそういう感じなんです。
ネットで注文するまではスマホとかパソコンでぽちぽちするだけだから、手間とかはかからない気がするんですけど、配達時に家にいなきゃいけないっていうのがどうも性に合わないんですよね。
今は置き配とかも浸透してて、それなりのボックスを設置したりすれば配達員のかたもそこに入れておいてくれるじゃないですか。
盗られるってこともゼロじゃないだろうけど、この国のいいところでそんな人もあんまりいない、みたいな上で成り立ってるこのシステムは嫌いじゃないんです。
でもやっぱり、買いに行くことそのものの楽しさ、みたいなものが捨てがたいってのはあるんですよね。
情報を頼りに店まで行く
でね。
ネットでその持病に効くよと聞いたやつを探してたら、それを作ってるメーカーが取扱店舗をざあーっと一覧にしてくれいて。
このパターンも最近見かけるようになったと思うんですけど。製造者側というか、小売店に卸してるほうが取扱店舗を公開してくれてるパターン。
何回かこのブログでも登場してる、秋田の調味料というかめんつゆというかの「味どうらくの里」も、作ってるメーカーが取り扱ってるスーパーとかの情報を自社のサイトで載せてるんですよね。
今回のやつもそうですし、小売店側じゃなくて製造者側でそういうデータを出してくれてるのが増えてるような気がします。
そう考えると、実際に買いに行きたい派って案外いるのかもしれないよね。
それで、そのメーカーのサイトを見つけて調べていくと、あるドラッグストアチェーンに置いてありますよと。
それによく見ると、同じチェーンでも取り扱いのない店舗もどうやらあるらしいから、このチェーン店ならどこでもいいっていう覚え方はできないのがわかりまして。
その、持病に本当に効くんならまた買いに行かなきゃいけないってことになりますから、自分の行動範囲で取り扱ってる店は把握しておきたいわけです。
ついては最寄りの店舗はどこかと見ていくと、冒頭に書いたお店がどうやら一番近いってことがわかっての、じゃあってことで実際に行ってみたというのが最初のきっかけだんたんじゃないかな。
なにかが違う佇まい
その店がね、がらーんとしてんだ。
客がいないわけじゃなくて、車も何台か停まってるんだけど、駐車場がやたら広いせいでパッと見は閑散としてる感じっていうか。
都市部っていったってベースが田舎ですから。都会に比べたら土地は比較的あるほうだと思うんです。だから駐車場が客数に比べて広々としてるってことも、あるといえばあるの。
周辺の住宅地は、立地からしてそこそこ昔からあるんじゃないかという気配はしてますから、最近になって開発されて広々とした敷地面積になったって感じじゃないなと。
周りは住宅だらけで、近所に住んでる人たちからはけっこう便利だと思うんだけど、このあたりは車社会だから。ひとつの家に父ちゃん母ちゃん息子が乗るようの、3台くらい車が停まってたりするからね。
だから漢字でいえば車っていうより、轟。車3台だし。車社会じゃないよね。轟社会。
だから別にちょっとした買い物ならそこで足りるだろうけど、会社帰りにもっと品揃えのあるデカいスーパーとかに寄ってくればいいやってことになるんでしょう。おそらく。
そのドラッグストアも薬品だけじゃなくて、ちょっとした生鮮品とか日配品とか置いてあるんだけど、どのみち車で出かけてるんならスーパーに寄って買物を済ませればいいってことになっちゃいがちっていうか。
もっというと、そのスーパーのある敷地内にはもうひとつ隣接した建屋があって。
最初に行った時は閉まるのが早いのかなと思ったんだけど、どうやらもう閉店してしまった元スーパーなのか、もしかしたら衣料品とかそういう店だったんじゃないかっていう建物があるのね。
多分、その周辺に住んでる人たち向けにやってた店だと思うんだけど、それこそもっとデカいスーパーに客を取られて店じまいしたんじゃないかと。
そのドラッグストアだって、もしかしたら最初っからそうじゃなくて、元々は違う店だったところが閉店してその後に居抜きで入ったのかなとか。
なんかそういう、こっちの勝手な想像をかきたてられる佇まいなんですよね。
名残りが呼ぶ記憶の中の風景
古い建物の店舗ってさ、店内の改装とかがあったとか、あるいは別の業態の店舗潰れて違う店が入った建物って、ちょっと痕跡があったりするじゃないですか。
前の店舗の看板の跡とか。色のちょっとした違いで、元々は「スーパーマーケット しどろもどろ」だったんだなってわかるっていう。
あと、店内の妙なところにコンクリで埋めたようなちょっとした盛り上がりとか段差と、そこだけちょっと色が違う感じになってると、ここには元々は配管とかがあって鮮魚コーナーとか冷蔵系の陳列があったのかなとかさ。
ずっと什器が置いてあったせいで棚のカタチに色の変わってる床とか、一回これ外したなっていうドアの跡とか。
お店のキャラクターだった、しどろともどろが描いてあったんじゃないかな、そうじゃないとここまで執拗に黒で塗りつぶす必要ってなんだろう、とか。
事実かどうかはともかく、なんかそういうのがごく普通のドラッグストアに他の店舗にはない味を持たせてるようでね。
お店って潰れるじゃないですか。
どんなに続けようと思ってがんばっても、逆らえないものだってあるわな。続いてほしいと思う人が多くても叶わないこともある。
いずれ、痕跡どころか影も形もなくなって誰も、もう誰も覚えてないくらい時が経ってしまうんでしょう。そうなるんでしょう。
その過渡期。
完全に消えてなくなるまでの過渡期のものって、妙に惹かれることってあると思うんです。廃墟とかそこまで行かなくても、今は当時とは違う誰かが何かをしてるけど名残があるみたいな。
あちこちにお店があって選択肢はとても多いのに、行くお店ってある程度パターン化してくるんですよね。それこそ通販とかデリバリーとかを使ってると、なおさら街に行かないようになるし。
だけど、なにかのきっかけで、自分の行動範囲外のどこかに行くことになって行ってみると、なにか見つかることもあったりして。
そんなのがちょっといいんですよね。ちょっとだけ好きなんです。
泣いてスライス
だから、ちょっと遠いけどたまにそのドラッグストアには行ってみるようになりまして。今日も半額になってたオニオンスライスとヤゲン軟骨と缶ビールを買ってきましたし。
ヤゲン軟骨とか居酒屋でしか食ったことないんだけど、とりあえず焼きゃあなんとかなんだろっていうさ。料理もできねぇくせにそういう買い物をするから食材を無駄にすんだろ。学びがないんだよ。
オニオンスライスも嫌いじゃないし食べるんですけど、どうやって作れっていうんだよと。あたしにどうしろっていうの。
まず、オニオンあらため鬼・ONを買ってきて。あれか、まな板出してきて号泣しながら皮をむいてうっすくスライスするのか。そっからどうするんだ。水にさらすとかやんのか。
もうね、そこまで辿り着ける気がしないわけ。
多分、普通に料理ができる人なら、なにかに使うんだからと玉ねぎ、いや鬼☆ONは家に常備してあるんでしょう。特に意識もせずに当たり前のようにスライスして出来上がりって感じなんでしょうよ。
実際そうなんだよ。準備から出来るまでがスムースだから早いんだ。料理が上手い人ってそんな感じだよね。
こちとら、一刀ごとに泣き崩れてるから。おいおい泣いちゃってんだ。おにおぉぉんんって。
包丁だって安物な上にたいして使ってねぇからさ。技術的にも切れ味的にも、そんなトントンとリズミカルに切れないわけ。
そんな涙の味しかしないオニオンスライス、やじゃん。嫌だって。涙の数だけ強くならないんだもん。買うよ。スライス済みなのが売ってんだもん。しかも98円でそこそこ量が入ってるんだもん。
あの、えーと、例のドラッグストアに話を戻す?
もういいか、戻さなくて。書きたいことは書いたし。鬼☆ONについてもたっぷりやったし。
そんなだよ。鬼が泣いてるっていう話だよ。まとめると、鬼の目にも涙ってこと。そんなでいいよ。