今回は知人に招かれて旅をする事に決めたので、いつもの放浪系な感じとはちょっと違った旅になりました。
はてさてどんなものだったか、ふわっと書いてみたいと思います。
旅立ちは金曜日
佐渡市在住の知人から久しぶりに連絡があったのは、旅の一週間ほど前。
あれこれと話しているうちに、たまたま私と休日が重なるタイミングがあるのが分かり、紆余曲折を経て遊びに行く事になったという次第です。
連絡があったその少し前から、次は移動距離がそこそこある旅がしたいと思っていました。最近は近場ばかりだったので、ちょっと遠出したかったんですね。
佐渡は仕事では行った事があるのですが、ちゃんと旅した事はありません。新潟県内とはいえ船に乗って移動するし、旅の目的地としては格好だなと思ったのです。
まさに渡りに船のごとく、連絡をくれた知人に現地の様子やおすすめスポットを訊ねるうちに、久しぶりに話をしたこともあって盛り上がっちゃいましてね。
結果、「ホントに来るなら家に泊まっていけ」という申し出をいただくことになったのです。
そういうつもりはありませんでしたから、最初は断ったのですが、佐渡市内の宿がなかなか取れなかったこともあって、最終的にはありがたくその話に乗ったという流れでした。
それから時は過ぎて金曜の夜。
適当なお土産を見繕って、高速バスで新潟市へ向かうところからこの旅はスタートします。
移動手段によるメリットとデメリット
今回は車の旅ではありません。公共交通機関を乗り継いで現地へ向かう事になります。
そうした理由はいくつかあるのですが、まずは車の問題。
離島に車を持っていく場合、佐渡市への航路を担っている佐渡汽船が運行するカーフェリーに車を乗せる事になりますが、料金がかなり高いんです。
車の全長によって料金が変わるのですが、4メートル未満の軽自動車サイズでもこの当時は約2万6千円。値段などは今後変わる可能性がありますが、大幅に安くはならないでしょう。
今回は一泊二日の短い旅ですから、ちょっと割高な感じがしますよね。どうしても車が必要なら、佐渡市でレンタカーを借りるという手もありますしね。
それに加えて、佐渡汽船付近には無料駐車場がないという事もあって、どうせならいっそ自宅から、徒歩と公共交通機関で行くのがいいんじゃないかという結論になったんですね。
あとね、肝心な事を忘れてました。
お酒が飲める。これです、これ。
とりあえず飲めるってのは大きいでしょう。車の旅ではこうはいきませんよ。旅先で移動中にチビチビ飲みながらってのは、これもまたいいもんですよね。
実際に佐渡市内を観光する場合は、レンタカーにしろ自家用車にしろ、車がないと不便で仕方ありません。
ただし、佐渡市内の道路は結構狭く、また(個人的な印象ですが)離島独特の運転のアバウトさで、いきなり飛び出してきたり急に止まったりするようなことも結構あるので、かなり注意して運転したほうがいいと思います。
高速バスで新潟市へ
話を戻しましょうね。
新潟市へのバス移動もまあまあ時間がかかりますから、その途中でも飲めるように念の為、もう念の為ですよ、とりあえずビールを買っていったんです。
それがパッと見、満員で。
満員っていうのは正確ではありません。始発からではなく途中から乗り込んだのですが、二席並びのバスの各席にひとり。
隣の空席は荷物を置いているのです。全員がそうしているので空きがないんです。ちょっとひどい。
荷物の置いてある席のそれをどければ座れるのですが、乗客が乗ってきても誰も荷物を片付ける様子はなし。
マナー的にどうなんだよと思いながら、一席だけちゃんと座っていた方の隣にどうにか着席できました。こういうストレスが、公共交通機関で移動する嫌な部分ですね・・・
ビールを空けるのは憚られる空気だったので、念の為の缶ビールは知人へのお土産にすればいいやと、居心地の良くないバスの道中を開き直って楽しむことにしますよ。
スケジュールを確認
バスでの移動中に到着後の予定をなぞっておくことにしましょうか。
土曜日の朝イチの船で島へ渡るつもりですから、それには新潟市内に前乗りが必要ということになり、金曜日の夜のうちに港がある新潟市へただいま移動中です。
着いたら市内で一泊して、徒歩かあるいは贅沢すればタクシーで佐渡汽船へ向かうのが良さそうです。
新潟駅周辺は、シーズン的なもののせいかホテルが確保できなかったので、新潟駅前にあるネットカフェで夜を明かす事にしました。
そこから佐渡汽船まではちょっと距離があるのですが、朝イチのカーフェリーの時間に上手く連結する交通機関がないっぽいので、徒歩かタクシーになります。
歩ける距離ですし、朝はまだ涼しいので早めに出ればまあ大丈夫でしょう。
一方、ネットカフェは時間制でパック料金が変わってきますから、早い時間帯に入店してしまうと支払いも高くなります。
そして朝イチの船に乗るには、調べてみると、ネットカフェから佐渡汽船までは徒歩で30分ほどかかります。出港時間から逆算すると、早朝5時には新潟駅前を出発しなくてはいけません。
そうなってくると出発時刻とネットカフェの深夜パックの時間及び料金の兼ね合いで、高速バスが新潟駅前に着いてから一時間ほど時間をつぶしてネットカフェに入店するのが、諸々コミコミで都合がよさげです。
さて、どうやって時間をつぶせばいいか。まあ、結論は食い気味で出ちゃってますけども。
飲もう!
そうなったら飲むしかないでしょう。
終点の新潟駅前に到着するまでどうにも落ち着かない感じの乗り心地だった高速バスを降りるやいなや、適当に飲める居酒屋さんを探してふらふらタイム開始です。
金曜の夜の二次会な時間帯ですから混んでいる可能性がありましたが、駅前の繁華街を歩いていると、カウンター席がチラホラ空いているのが外から見える飲み屋さんを発見。
吸い込まれましょう。ここは吸い込まれておきましょう。
それほど大きくない居酒屋さんの、カウンターの隅っこに首尾よく着席できました。自分の荷物そのものはいたって軽装ですが、お土産を持っているので、それをおいて置けるようなちょっと広めの席を陣取れたのはラッキーです。
かんぱーい! |
生ビールと適当なアテを頼みつつ店内を見渡すと、ちょうど客がハケてきたタイミングだったのか、カウンターは私ひとり。他には別卓にグループが一組いるだけ。
すぐにやってきた生ビールのジョッキに付いている水滴がカウンターを濡らす暇もないまま、バタバタっと記念写真の一枚も撮ってビールを喉に流し込みます。
冷えたグラスが唇に当たり、苦味やら疲れやら旅の高揚感やらがない混ぜになった液体が、すべて洗い流して消えていったのをハッキリ覚えています。いやー、おつかれおつかれ。
追加注文は生ビールだけにして、小一時間ほど新潟の夜を堪能したらもう移動しなくてはいけません。
カウンターのそれほど座り心地が良くない椅子に、もう少し腰を落ち着けていたい気持ちをなだめすかしてお店を出ます。お会計は二千円チョイ。
周辺のホテルが軒並み満室でしたし、週末の夜ということも加味すると、ネットカフェに空席がない可能性も充分考えられます。
どのみち数時間の滞在ですから何でもいいやと入店すると、意外にも選べるくらいには空きがあるようです。
初めて利用するお店なので会員登録が必要でしたが、事前に調べておいたクーポン券の恩恵もあってそれなりに安く滞在できました。
店内は私が入店した後も頻繁に客が来ていて、退店する明け方頃には席が全て埋まっていた様子だったので、ここでもちょっとラッキーなタイミングだったのかもしれません。
船着き場まで早朝散歩
翌朝。
私はかなりの夜型人間なので、早起きはオバQに対する犬のごとく苦手なのですが、それでも何とか予定時刻にはギリ間に合うように起床。危ない危ない。
朝の繁華街って独特の空気感がありますよね。
すでに明るくなっている猥雑な通りを抜けて、車もまばらな大通りへ。ウォーキングやランニングする人がいますね。ああいう人たちは朝に強いんでしょうか。
船乗り場というと海沿いにあるようなイメージですが、新潟〜佐渡間の旅客船を運行している佐渡汽船のフェリーターミナルは信濃川河口に位置しています。
その佐渡汽船へと向かう道すがら、信濃川が見える川沿いを歩いたのですが、両岸の堤防がウォーキングコースとして整備されているようで、ここを散策するのも面白そうです。
万代橋という古くからある大きな橋が架かっていたり、たくさんの船が係留されていたりと、時間があればのんびり歩いてみたい一帯でした。暑さがもっと和らいだ頃にでも、また。
高層ホテルと、美術館などのイベントスペースがある朱鷺メッセの前を通り過ぎ、もうしばらく歩くと佐渡汽船ターミナルが見えてきます。
乗船手続き
朝一番の船は新潟港を6時ちょうどに出港します。時刻表は季節によって変動するようなので、確認が必要ですね。
途中でコンビニに寄ったり、写真を撮りながらそれほど急がずに歩いてきましたが、どうやら間に合いそうです。
あれに乗ります |
待合室のある大きなロビーに辿り着くと、家族連れやジャージに身を包んだ学生さんたちなどで、結構な混雑具合。折しも乗船手続きが開始され、並んだ列が徐々に動き始めたようです。
この調子では船内も混み合うだろうなと思いつつ、自動券売機で2等船室の切符を購入。
切符には三次元バーコードが印刷されていて、それを係員さんのいる入船ゲートにかざすと手続き完了。接岸している船への連絡通路に行くことができます。
新潟〜両津航路は、「ときわ丸」と「おけさ丸」という二隻が行き違うように往復しています。今回乗ったのは、ときわ丸という新し目の船でした。
2等船室の切符は、雑魚寝ができるだだっ広い絨毯席が利用できるのですが、この混み合い方では寝転がれるほど空いていないでしょうし、デッキの方へ真っ直ぐ向かいます。
船旅のいいところ
そこにはベンチ席が並んでいて、晴れていれば海風を受けながら濃紺の日本海を眺めてのんびりできます。以前、佐渡へ行った際にも、この席に座って海を見ていました。
硬いベンチ席ですから、船室内の絨毯席に比べたら若干おしりが痛くなりますが、そういうのを緩和するために途中のコンビニで缶ビールをいくつか買い込んであります。朝の6時から飲む気マンマンですから、ええええ。
かんぱーい!(通算2度目) |
やがて僅かずつ船が動き始めて、ゆっくりと港を離れて信濃川を下っていきます。
それにつれて川風が髪をかきあげるように吹き始め、信濃川を挟むように広がる新潟の街が流れて流れて、やがて海へと出るのです。
かもめたちのなく声。
デッキに集う乗客が差し出す餌代わりのスナック菓子やパンに釣られてか、海鳥の群れが触れるくらいの距離まで近寄ったり離れたりしながら、船と併走しています。
ちょっと休憩するように船の手すりに止まった鳥たちは、人間に慣れているのか多少近寄ったくらいでは逃げたりしませんでした。
乗客の合間を縫って、海に空に鳥にと写真を撮りながら、缶ビールをひとくち。
・・・まあ、美味いよね。
波はほとんどなく、滑るように海を往く船の上は快適そのものでしてね。もうアテがなくてもビールが空いていく感じ。
昼間の陽射しの強さを予感させるような、徐々に強さをはらんでいく朝の太陽とそれにきらめく水平線に目を細めていると、船旅の良いところを全部入りで堪能している状態です。
こういうのって、フェリーに乗ってみないと中々体験できないものですよね。車や電車や飛行機にはない、風を感じる開放的な乗り物での移動は、旅してるんだなぁ・・・ と感じずにはいられません。
朝が苦手な私でも、早起きして良かったと思っちゃいますよね。
ラーメンとローカルスーパー
そんなこんなで無事、佐渡ヶ島へ上陸しました。
迎えに来てくれた知人宅へそのままお邪魔し、土産を渡したり近況などをお互いに話しつつといった時間を過ごします。
その後、お昼はラーメンということになり、有名な大勝軒の支店が佐渡にあるそうで、そこへ連れて行ってもらいました。
私自身も大勝軒は行ったことがなく、初めての体験。
ネットの画像などのイメージから、威勢いい腕組み系接客なのかと思いきや、物静かに淡々と美味いものを提供するといった感じで、押しの強い接客のラーメン屋があまり好きでない私としては好印象です。
つけ麺とサイコロチャーシューを注文して、美味しくいただきました。
佐渡らしい食べ物もということで、そのまま晩御飯の買い出しへ。
新潟県内で展開している中規模スーパーマーケットも島内にはあるのですが、地場のスーパーも頑張っているようでした。
特に魚介類は何を食べても美味い状態でしてね。刺し身にしろ焼き魚にしろ、スーパーで売っているもののレベルが高いこと。
知人宅ですし、写真を撮るのも気が引けましたから画像はありませんが、旅先のスーパー巡りをした方がいいものにありつけるという個人的な思いをより強くしたものです。
見聞きした島内事情をもう少し書きますと、群馬のベイシアグループが展開していたコンビニのセーブオンが、事業撤退で佐渡島内からも無くなり一部はそのまま閉店したようですが、ローソンに変わっていました。
旅をしていると、先程のスーパーのようにその土地ならではのお店やサービスというものも素晴らしいのですが、いつものコンビニや食事みたいなものも欲しくなる事がありますよね。
佐渡市内の中心部はそういった大手チェーンも多く、数日滞在するぶんには特に不便を感じないと思います。
台風と猛暑に急かされる
そんな感じで、ほどほどに飲んで美味しいものをいただいて日が暮れた初日から、明けて二日目。
帰りの船の時間に合わせて佐渡汽船まで送ってもらえることになったのですが、この日は台風が来ていて沖合はかなりの風がある予報。
現に高速船は全便欠航し、カーフェリーのみ動いている状況でした。
おかげで欠航で帰れないという事態は避けられそうでしたが、台風の影響でフェーン現象による強烈な暑さが半端じゃありません。
実は今日は昨日連れて行ってもらったスーパーに行って、そこで知人と別れてひとりで色々と探索するつもりでいました。お世話になりっぱなしも気が引けますし、何より自分の旅らしい事をしたかったんですね。
ですが、外に出るのもはばかられる暑さで、これは徒歩で動き回ったら危ないなという感じ。
加えて台風の影響もありそうとなれば、安全策で早めに船に乗った方がいいだろうという知人のすすめもあり、早い時間帯に佐渡を出る事になりました。
船乗り場まで送ってくれた知人に手を振って別れ、乗り込む帰りの船はおけさ丸。行きに乗ったときわ丸に比べると古い感じで、ちょっと小さいのではないでしょうか。
ゆるキャラ発見 |
行きも混んでいましたが、帰りはさらに人、人。例のデッキのベンチ席ですら、何人もお客さんが座っているような状況です。
とりあえずベンチ席の一角は確保できましたが、この後運転する予定もあったので飲むこともできませんし、ヘッドフォンをして好きな音楽を聴きながらの船旅となりました。
新潟〜佐渡間は約2時間半と結構時間がかかります。
船旅を楽しむためにはデッキで風に吹かれたり、船内をあちこち歩き回ったりとやれることは多いのですが、特に乗り物酔いするかたは酔い止めを飲んで休めるところを確保することも必要だと思います。
もっとも安い2等船室は広間で雑魚寝するような感じなのですが、料金を少し足すと仕切りはありませんが指定席で横になれる1等船室がありますので、休みたいかたはそちらも検討したほうがいいでしょうね。
帰りの船内で購入。甘い! |
海風に別れを告げる
道中は台風の影響など微塵も感じさせないような順調さでしたが、新潟港へ着船する頃には結構な風が出ていました。
幸い港の近くですから船が揺れて酔うような事はなく、無事に下船。先程の乗客の多さを考えると、佐渡汽船から新潟駅周辺まで出ているバスも混むだろうと、結局また徒歩で移動する事に決めました。
懸念した暑さは、台風の残した強い風のおかげでそれほど感じることもなく、風に押されるように港町を後にしたのでした。
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