たまたま散歩コースに選んでみたのですが、実はこの駅周辺もそれなりに味わいがあって、なかなかよかったのです。
今回は、小出駅〜近隣の小出公園を歩き回った日のお話。
小出ってどこなの
新潟県魚沼市にある小出駅は、上越線と只見線が入る小さな駅です。
小さなと言っても無人駅ではなく、俳優の渡辺謙さんが書いた駅名の看板がある駅舎には待合所などがあります。渡辺謙さんは魚沼市の出身なんですね。初めて知りました。
小出駅は、魚野川という信濃川へとつながっていく大きな川のそばに建っていて、駅から東側はその魚野川にかかる小出橋を渡ってすぐに商店街があり、南側にはスキー場や温泉施設がある公園が広がっています。
ドライブから散歩に
季節は10月。
駅の話をしておきながらなんですが、今日は車で来ています。ドライブのついでに行ってみようと思ったのは、公園に駐車場があると聞いたからです。
車で走りながら景色を眺めるのも大好物ではあるのですが、ここ最近あちこち歩いてみるブームが、いったい第何次かわかりませんがきていましてね。
公園を散歩するだけじゃなく、駅周辺まで足を伸ばしてみようという感じ。
小出公園に着いたのはそろそろお昼になろうかという頃だったと思います。空を見渡すと場所によっては曇り気味ではありますが、頭上は青空が広がっていてのんびり散歩するにはちょうどいい加減でした。
まず公園内からスタートして駅の方まで行ってみようかとも思ったのですが、どうせまた公園に帰ってくるなら園内の探索は後でもいいだろうということになり、まずは小出駅の方を目指すことにします。
小出駅周辺を歩く
小出公園は高台にありまして、駐車場から見ると魚野川の方に下っていくようなイメージで道が続いています。
そのまま歩いていくと小出橋につながる道路があり、それとおおむね並行して走るように、さらに土地が一段低くなって駅前につながるさほど広くない道があります。
駅周辺は住宅地が多いようで、喫茶店や食堂などは駅前の一定区間に固まっているといった具合。交通量もかなり少なくて、とても静かでスローな空気が肌を心地よく撫でていくようです。
歩くってことは移動速度ものんびりですから、こういう空気感が本当にちょうどよくて、自分の中のモードとピッタリと合っている感じです。
普段ならともすると早足になりがちなのですが、正午すぎの秋の陽射しと、家の二階の窓に布団を干してるようないい感じの町並みのおかげで、歩みは自然とスローダウン。
今日はいい散歩になりそうな気配がしておりますよね。
まもなく駅に到着します。
別段電車に乗ろうってわけでもありませんから、駅に着いた途端に、さて何しようかなとなりましてね。妙に手持ち無沙汰なのです。
とりあえず周辺をカメラに収めますか。
結構攻めてる只見線 |
次の電車を待っている乗客が何人かいて、大きなカメラを抱えている人もいましたから、鉄道好きな方なのかもしれません。これから只見線に乗るんでしょうかね。
小出橋で止まる足
ひとしきり写真を撮り終わり、次は橋を渡ってみるかと、駅前から坂を登って小出橋につながる広い道路へ向かいました。
ちゃんと歩道があるので散歩するのに困りません。
ちょうど電車が通ったり、いい風が吹いたりして橋の上でも写真を撮りました。
歩くぶんには困りませんが、他の困ったことがあるにはあって。
そろそろ満足しつつあるんです。どうもお散歩欲が満たされつつある気がしてきたような。
駅前からのふわぁーっとした雰囲気によって、自分の中のなにかよくわからないものが、すっかり充填されたような。
こういう場合はスパッと帰っちゃうことが多いのですが、なにせ車を降りてからここまで20分ほどしか経過していませんしね。まだ早いよなぁ、と。
それに加えて、小出の商店街の入口に着いた時には、なんとなく商店街巡りをしたくなくなったというのもあります。
商店街がうんぬんというより、今歩いてきた人の気配の少ないのんびりした通りから、小さな町とはいえ人通りも多くて車も行き交う商店街とのの落差。
今にして思えば、これが嫌だったんじゃないかなと。
そんな心理状態だったので、帰るでもなく行くでもなく一旦どこかに逃げようというような気持ちになったのです。
そんな視点で周りを見ると、ちょうど橋のたもとから魚野川の土手の下に、歩いて行けそうな道を見つけまして。そっちに行ってみたり。
やっぱ違うなと思ったり。
方角によって空模様がかなり違った日 |
小出公園へ
で、結局はもう公園に行こうと。
そっちのほうが今の気分に合っている気がしたもんですから、さっき通った橋を引き返して車を停めた小出公園へと戻っていきました。
このぐにゃぐにゃした消化不良感が、もうちょっと歩いてやろうみたいな、余計なモチベーションにつながったような気もします。
小出公園は冬期はスキー場になるという、言ってしまえばちょっとした山といった感じの公園です。
駐車場の脇にある、斜面の土を削ってそこに丸太を埋めたような階段を上っていくと、管理棟や遊具のある広場に出ました。天気がいいせいもあるのでしょうが、散歩している人がチラホラと見えます。
3両目が土管 |
公園といっても冬にはスキー場になるような場所ですから、今いる広場もかなりの面積がありますし、小高いと言うよりは山という感じの斜面がその向こうにあります。
まだ動いていないリフトが目立つものの視界的な障害が少なく、その山の上の方までずっと見渡せる感じ。
斜面には山頂部分まで行けるであろう、曲がりくねった細い小道がいくつか見えていて、その脇には明るく黄色い花が所々に咲いているのが青い空に映えて眩しく映ります。
平坦な道を急ぐことなく歩くだけなら、それほど苦にならないし嫌いじゃないのですが、基本的に脚力というかもっと言うと体力がそれほどありません。
ちょっとしたビルの長い階段を上った日には、そこから二時間はぐったりするような身体ですから、二度見しようが三度見しようがどう見ても山だよね、ってな景色に足が止まるわけです。
登る・・・?
ここで悪い癖というか、さっきの消化不良感が顔を出してくるんですよ。
せっかくだからと。
上から見た景色がきれいだろと。
空も青いし日も高いし、キレイな花も咲いてるし、何より今来たばっかりでしょと。
そう言うんです。
で、また一旦の妥協案で、今見えている山をダイレクトに登っていく小道ではなく、脇の方にそれほどキツくなさそうな、山の周囲を回っていそうな道を見つけまして。
そっちに行ってみました。なんなんでしょう、自分に言い訳しつつ歩いてる感じ。どうも何かが狂い始めているような気がしだします。
チリーン・・・
こちらの方は曲がりなりにも舗装もされていて、それほどキツい感じもないような道です。これならがんばれそう。途中で歌碑や休憩所もあって、写真を撮りつつひと休み。こっちに来て正解だったなとちょっと安堵します。
さらに別の道にもつながっていて、こちらは温泉施設がある方へ通じている様子。日帰り温泉好きとしてはそのまま行ってみようかとも思ったのですが、着替えは車の中だしと後回しにしました。
この書体が良すぎ |
ありがたいけどコップは使わず |
そのまま舗装路を徐々に登っていくように歩いていると、徐々に坂になっていきます。やはりスキー場の上の方にはつながっているんだろうと、そのまま歩いていると、前の方から年配の女性が二人が歩いてきました。
鈴の音と一緒に。
チリーンって。
これ、あれでしょ。熊よけの鈴ですよね。どう見てもお遍路のコースじゃないもんね。
熊? くま? クマ出るのここ?
や、でもそれほど山の中ってわけでもないし、人里離れてもいない、よね。いませんよね。
きっと万が一のために用心深くチリーンしてるんだろう。そうじゃなきゃ「お遍路コスプレ散歩道」みたいな旅番組の収録に違いないとか思いつつも、直接聞いてみるわけにもいきません。
そのまま、その人とすれ違いまして。
そこから若干急ぎ足です。見えない何かに追われるように。
秋桜がお出迎え
やがてスキー場の一番上であろう場所に到着しました。とりあえず熊には遭わずに無事です。
山小屋という看板のある建物もあり、スキーは未経験なので憶測ですがここから下に向かって滑るんでしょうね。
山だ山だと書いてきましたが、ここはまだまだ麓の方だというのが登ってみてわかります。振り仰ぐと、スキー場としては整備されていない山がまだまだ続いています。
山登りする方はすごいなと思っちゃいますよね。もう足がつらいもの。チリーンからの急ぎ足のせいもあるとはいえ、まあまあつらいもの。
ちょっと休憩しましょうか・・・
山小屋という建物はまだ営業しておらず、そのへんの石に腰を掛けてひと休みします。
今歩いてきた舗装路は車でも入ってくることができるので、リフトの頂上には車が停まっていまして、家族連れが何組かいてお弁当を広げたりと秋の行楽を満喫中でした。
登ったご褒美にというわけじゃないのですが、コスモスが少しだけ咲き残っていました。
小出公園は、秋になるとコスモスがきれいだという話を聞いていたのですが、どうも咲き終わった時期だったようで、案内板にもある広場のお花畑エリアでは見かけることができなかったんですよね。
高い場所から下界を見ると、やっぱり多少は心が動くというか、悪くない気分になってきましてね。
コスモスが点々と残っている方へ行ってみたりするうちに、少し前に登るのを躊躇した小道をある程度下ってきたものですから、そのまま歩いて降りてきました。
疲労感と再訪の予感
チリーンの人たちはどこへ行ってしまったのか、下の方に降りてきても出会うことはありませんでした。
結構広い場所なので、すれ違ったまま出会わないということも充分あり得るのですが、あれは本当にあったことだろうかと鈴の音が耳の奥に消えてしまった今となっては、そうおもったりもします。
とにかく駐車場まで戻ってきて、ちょっと疲れが出てきてしまいましてね。先ほど見かけた温泉はまた今度ということにして車に乗り込みます。
機会があればクマに遭わない季節、いいえコスモスの季節に来てみようかなと、足の痛みをすっかり忘れてそう思ったものです。