今回はゴールデンウィークの富山旅の中で訪れた、道の駅 雨晴周辺を散歩した時のお話。海と風と列車と旅の話です。
雨晴という名
雨晴という名前がいいなぁと思ったのはいつのことだったか思い出せませんが、そういう名の海岸があると聞いていつか行ってみようと思っていました。私の場合、旅の動機なんてのはいつもそんなものです。
場所は富山県は高岡市。
どちらかといえば氷見市に近く、能登半島の付け根付近といえばいいでしょうかね。
国定公園にも指定されている一帯で、JR氷見線がこの海岸線沿いを走っていたりする関係もあって、ネットで検索するといい感じの写真がヒットします。
雨晴と書いて「あまはらし」なのですが、最初に知った時に「あめはれ」と読んでしまったおかげで、正式な読み方を知った後でもどうにも「あめはれ」が抜けません。
ですから、旅の最中はおろかこれを書いている今でさえ、「あめはれ、また行きたいなぁ」などと口走ってしまうのです。
雨晴へ向かう前に買い出しを
今回のゴールデンウィークは10連休ということで、とりあえず富山方面へ向かったものの、具体的にどこに行って何をするみたいなことはなーんにも決まっちゃおりません。
その日までは富山市付近でウロウロしていたのですが、ふと雨晴へ行ってみるかと思い立ち、そのままハンドルを切ったのはたしか旅の2日目だったか3日目だったか。
すでに日も暮れたころでした。
お腹が空いていたので、途中でスーパーマーケット バローに寄って夕飯を買ってから道の駅へ向かうことにします。
バローは全国区じゃありませんが、東海地方を中心として手広くやっている企業です。富山県の地場のスーパーというわけじゃありませんが、同じチェーン店でも地域が違えば微妙に品揃えが違っていたりして、そういう発見も楽しいものです。
駐車場の片隅に車を止めて、買い物カゴを片手に店内をぶらぶら開始です。
鮮魚コーナーをのぞいてみて、取り扱ってる魚なんかが違うよねーやっぱりねぇ、などと魚に詳しくもないってのに知ったようなことを独り言ちつつ、適当にカゴに入れていきます。
そんな中でもこの旅で食べてみたかった、富山名産の「黒作り」を発見しまして。もちろんお買い上げです。とりあえず、海の幸を食っとかないとね。
黒作りというのは要はイカの塩辛なんですが、イカ墨を使っていて見た目が黒いんですよね。そして普通の塩辛よりも臭みが少なくて塩っぱい。
普通の塩辛自体は、それほど好んで食べるというわけじゃなくて、どちらかのいうと箸でふたつまみもすれば飽きてしまうんですが、黒作りはペロッといけました。臭みが少ないのがいいんですかね。
酒のアテにするというよりは、白いご飯に乗っけてね。ご飯を黒く染めながらいただくと、他におかずはいりません。
黒作りは海産物系の土産物屋でも売ってたりしますけど、富山県内のスーパーマーケット、特にバローで売ってたものが量も値段もお手頃でした。
この旅の間は何度か購入して、ご飯と割り箸の先を黒くしておりまし。
旅の朝は早い
道の駅 雨晴は言うまでもなく雨晴海岸沿いにあります。
道の駅といっても色々で、バカみたいに広い敷地なものから割合小規模なものまで各地にあるわけですが、こちらの雨晴はどちらかといえば小規模な部類に入るんじゃないでしょうか。
道の駅が建っている海岸沿いの一帯は平地になっている部分が少なく、海沿いからすぐに切り立った山になっている感じといえば伝わるでしょうか。道の駅の建物も、海岸線に沿うような細長い敷地の中で山側に張り付くようにして建てられていました。
夜遅くに到着したのですが、道の駅の建物脇にある駐車場はそれほど広くなく、さらには連休中ということもあってすでに結構埋まっていましてね。
どうにか空いている一角に車を滑り込ませて、その日はそのまま仮眠した記憶があります。
あくる朝。
4月の終わりともなると、明るくなるのも早いわけです。
ましてや道の駅で仮眠してるような方々は、どういうわけか揃って朝が早いんですよね。
早朝の太陽が昇り始めるころには、あちこちで車のドアがバタンバタン。人の気配で周囲がざわついてくると、断固眠るんだという鉄の意志で寝袋なりタオルケットなりを頭からかぶるくらいじゃないと、自然と目が覚めるってもんです。
ましてやこっちだって、久しぶりの長旅で若干テンションが上がったままですからね。
寝起きの悪さには我ながら呆れかえるこの私が、普段なら「まだ寝てたかった起きて損したよ」と思うような時間帯でも、案外スッキリ起きちゃったりしてね。
そんなこんなで目が覚めた、というか寝てはいられない感じになりまして。
ゴソゴソと車から出て、自販機で缶コーヒーの一本も仕入れてきて一服ついたら、どうせ早起きしたんだし真っ昼間の人の多い時間帯よりはいいだろうと、周辺の散歩をしてみる気になったのです。
もそもそのそのそと簡単に身支度をして、周辺の散策を始めます。
道の駅 雨晴
高岡市内から国道415号線を氷見市に向かって走ると、やがて富山湾沿いに出ます。そのまま道なりに走ってトンネルを抜けると雨晴海岸、そしてまもなく左手に白い建物が見えます。それが道の駅 雨晴です。
道の駅というイメージからはちょっと離れた、オシャレ感の漂う建物なんですよ。
ちょいちょいオシャレな感じ |
コンパクトな施設ですが展望スペースやカフェもあり、道の駅ですから夜間でも利用できるトイレも完備、しかもきれいでしたから言うことはありません。
展望スペースはどことなく客船っぽい |
展望スペースから |
そして何より、そのロケーションがいいんですよね。
コバルト色の空と海風
ローカル線のJR氷見線が、道の駅から道路を挟んだすぐ向こうを走っていて、そのさらに向こうは海。
道の駅にいると一時間に数回くらいでしょうか、遮断器が降りる音がして、やがて線路をゆく車輪のリズムが耳の奥へと入り込んできます。
道の駅の目の前にある踏切で電車が通り過ぎるのを待って線路を渡ると、海岸に降りることができます。
訪れた時は天気も悪くなくて、凪の海から吹いてくる風と遠くに消えていく電車の音と控えめな波の嘆きが重なって、いつまでもいつまでもここにいられそうです。
道の駅の前にある踏切のすぐ脇には雨晴岩という大きな岩があって、そこで源義経が雨宿りをしたという伝説があるようです。雨晴という地名の由来もここから来ているんでしょうかね。
ゴツゴツした岩肌の波打ち際へ降りると、沖合いに先程の義経岩のような松の木が一本生えた小島があります。そしてそのはるか先には立山連峰がうっすらと、まるで富山湾に浮かぶように見えていました。
朝早いとはいえ、この景色を見に来ている方々もそこそこいて、みなさん写真を撮ったり散歩をしたりしていました。
おかげでちょっと落ち着かなかったのは仕方ありません。でも、もしも人が少なくて天候にも恵まれたなら、その時はここで日がな一日ぼんやりしなくちゃいけません。
この日は連休のはじめの方ということもあって、朝から人も多めだったので早めに道の駅を出たのですが、こちとら予定のない旅の途中ですからね。
気に入った場所があったら何度でも行っちゃえばいいやとばかりに、雨晴には10日間のこの旅の間に数回お邪魔しました。
今にして思えば、富山県だけではなく隣の石川や福井あたりまで足を伸ばす日程も充分あり得た今回の旅だったのですが、結局富山にずっといたのは、この雨晴海岸がちょっと気にいったせいかもしれません。
雨晴海岸を歩く
そんなわけで、日をあらためて雨晴海岸へやってきました。
連休も日が進むに連れて、駐車場に停まっている車の数もわずかずつ減ってきているようでした。そうやって日常を取り戻していくのかもしれません。
できればその日常の風景を見たかったなと、チラリと思ったようなそうでもないような。
道の駅に車を置いて、踏切を渡って海へ。そのまま、線路と並行して続く海岸をぶらぶらと歩き始めます。
海を眺めたり通り過ぎる電車を見上げたりしつつ、見知らぬ海沿いをなんにも考えずに歩くのがどうにも楽しくてね。
穏やかな富山湾からの風に頬をくすぐられ、強すぎない陽射しに背を押されて足取りはゆっくりと、ただゆっくりと。
そのまま歩いていると、やがて少し舗装された道に変わっていきます。
ちょっとした遊歩道のような感じの道がしばらく続いていました。近所の方がランニングしていたり、子連れで散歩していたりして、太陽から風から海から人から目に入る景色の全方位が休日感にあふれまくっています。
この柵&ベンチがなぜか好き |
線路は海岸沿いから内陸に向けて走っているようで、そちら側はいつの間にか住宅地になっていました。やがて、その住宅地へ抜ける路地を見つけたので、足の向くまま気の向くままに行ってみます。
こういう路地っていいですよね。
実はこの写真よりももっといいなと思う通りがあったのですが、同じことを思う人もいるものでして。
お、ここいいなと思って通りの向こうへ目をやると、カメラを持ったかたがちょうど三脚を設置しようとしているところでした。
お邪魔するのもなんですし、近所にお住まいの方々だって写真を撮ってる奴らが何人もいたらあまりいい気分じゃなかろうと、そこで写真を撮るのはあきらめたのです。
そんないい感じの路地を抜けて広い通りに出たのを期に、道の駅へ戻るであろう方角に歩いていくと雨晴駅に辿り着きました。
私は鉄道についてはほとんど知識がありませんが、海沿いを走る鉄道駅に惹かれないわけがありません。
穏やかな海と空の間を走る鉄道。それに乗っていつまでもどこまでも行けたならと、そう思わないような旅人はいるのでしょうか。
ですから、できれば乗ってみたかったのですが、ここまで車で来ていますし、道の駅の駐車場だって余裕があるわけじゃありませんから停めっぱなしというわけにもいかないでしょう。
機会があったらまた、と思いつつ雨晴駅を後にしました。
旅はまだ続く
道の駅雨晴、そしてその周辺の雨晴海岸から雨晴駅を歩いてきました。
駐車場が少なめですからタイミングによっては混雑しているかもしれませんが、鉄道駅も遠くありませんしローカル線に乗って訪れてみるのもいいと思います。
車にせよ電車にせよ、ただ通り過ぎてしまうだけでは、ちょっともったいないくらいのいい場所でした。
雨の日も晴れの日も、この命が果てるまで旅は続いていくのでしょう。
どんな日にもあの海はあり、あの空はあり、そしてあの場所へまたいつか訪れる時だってあるかもしれないと感じつつ、旅を振り返るこのお話もまだまだ続きます。