2025年の夏に東北方面を旅したというお話です。
お盆期間はビジネスホテルの代金も軒並み上がっているというのに、明らかに通常料金で出ている部屋を見っけちゃったもんですから勢い余って確保した、ってところまでお話したと思います。
鶴岡を徘徊
それがね、そのホテルが今いる山形県は鶴岡市からずーっと離れた場所にあるんですよ。
行かなきゃなんないわけ。
予約しちゃったからさ。
行かなきゃなんないってなんだよって話なんですけどね。てめぇで探して予約したんだろっていう。
でも、行かなきゃなんないっていう気持ちもまるっきり嘘でもなくて。
だって、200km離れてんだぜ?
や、200はちょっとあれだけどさ、170kmとかはあるんだって。30kmとか誤差みてぇなもんだよ。ちょっと寄り道すればそんな30kmとかさ。
だって、目的がないんだよ。こちとらなんの目標も目的もテーマも持ち合わせちゃいないんだもん。そりゃ30kmくらい寄り道もしかねないよ。
そもそもいい宿みーっけ、って200km先まで行くって言ってんだから。行った先にあるのは1泊7千円かなんかのビジネスホテルだからね。ヒルトンとかじゃないから。
予算ってもんがありますから。贅沢できる旅じゃないんですよ。もちろん、価値があると思えばお金を使うのはやぶさかじゃないけど、無闇矢鱈に使うのは違うじゃない。
この日も朝食はカップラーメンでしたしね。ビジネスホテルのポットでお湯を沸かしてカップ麺、マジで最高だと思ってるからね。そんな贅沢に朝食付きとか、どうかしてるって。
んで、飯も食ってゆっくりめにホテルを出まして。
ちょこっと鶴岡の街を車で見て回ったりしまして。
鶴岡には何回か来た事があって、ブログにもいつか書いたような気がするけど、どうだったか忘れちゃったな。
そのうちお昼をちょっと回ったくらいの時間になりまして。このへんに来ると立ち寄るラーメン屋さんがあって、朝もカップ麺だったけどまあいいやとその店に入ったんです。
ここはラーメン屋じゃない
前にきた時はどうだったか、もうほとんど覚えちゃいないんですけど。そんなに混んでなくて、ふたり掛けのテーブル席でラーメンを食ったような気がする、くらいの記憶です。
今回は店の中はそこそこ混んでて、空いてるカウンター席があったのはラッキーだったって感じ。
若い、っていっても30代からもしかすると40代前半くらいの男性がどうやらメインで仕切ってる風でね。
感じからすると叩き上げの店員さんっていうより、先代から引き継いだけどお盆シーズンで繁忙期の、しかもピークタイムを乗り切るには経験不足、って感じがあって。
なんかそういうのが見えちゃう時ってありません?
店員さん同士に限らず、例えばコンビニとかスーパーなんかで見かけたグループなんかでも、人間関係っていうか立場とか力関係みたいなものが見え隠れして。
自分はそっちの方がなんか気になっちゃうタイプなんです。メニューとか美味しさとかサービスみたいな要素より、店を回してる店員さんの空気感とかの方が気になっちゃって。
今いるラーメン屋の話に戻すと、その男性だけ突出して若くて、あとは贔屓目に見て50代後半、60越えてても別におかしくはないだろう店員さんが数人っていう感じ。
で、その店がメニュー数がかなり多いんですよね。ラーメン主体なんですけどご飯ものの種類もあるし、一品物も豊富みたいな。ラーメン屋っていうより、もはや飯屋というか。
町中華っていうには大通りに面したところにあって、派手に看板を出したりするような今どきのお店感はないんですけど、スタイルとしては昔ながらのラーメン屋と定食屋の混ざったようなお店で。やっぱ飯屋、だよね。
そういう店って、美味いから行くっていうより大ハズレしないから行くっていう感じだと思うんです。なに食ってもそこそこで値段もそれなりで、みたいな。
あたしもこの店には、正確に数えたことはないけど、たぶんもう数回行ってますけどね、何度も訪れる理由はぶっちゃけ車でも立ち寄りやすいとかそういうことだったりしますから。
それだけってわけじゃないか。一応その、ちょっと変わり種のラーメンがあって、それ目当てだったりもするんですけど。
で、その、こっちの勝手な見立てでは二代目店主であろう若い人が、まあ奮闘してるんです。
たぶん、ラーメンを作るのはまだ先代がやるって感じで、いわゆるホール係をやってるんですけどとにかく一生懸命なわけ。好感持てますよ。
でもあきらかに経験不足な感じも、あたしには如実に伝わってくるのね。それがもうさ、がんばってっていう、上から目線で失礼な話だけどそういう気持ちと、このお盆休みシーズンのピークタイムっていう修羅場を前にしてちょっといたたまれないのと、半々なの。
なんかよくわかんねぇインバウンドの団体が来ちゃって、煮込みラーメンとうま煮ラーメンの違いを一生懸命説明してんだけど、そうこうする間に3卓さんの餃子が5枚あがっちゃってんだ。
さっさと3卓にいる、瓶ビールをテーブルの上に生やしてもうすでにグダグダになってるジジイたちに持ってかなきゃいけないわけ。
でも、うま煮ラーメンは普通のラーメンの上にあんかけ風の具が乗ってんだけど、煮込みラーメンは麺もちょっと煮込むことで味わいが違うってことを、ほぼほぼ日本語なんか理解する気がない外国のオッサンになんとか伝えたいんだけど、萬田久子みてぇな帽子かぶったオバチャンたちが奥の座敷からすいませーんって言ってっから。
あのね、ここはラーメン屋じゃないよ。地獄だよ。
あたしゃもうここにいたくないから、とにかく早くラーメンを食ってとにかく早くお会計をしたい。早く出たい。この収容所から。
車で200km
そりゃ一刻も早く200km先の宿まで行こうって気にもなりますよね。あのラーメン屋みたいなことが、このお盆休みの期間中に全国各地でありとあらゆるお店で起こってるんでしょ。うかつに飯も食えないって。
そりゃもう、さっさと移動してチェックインしないとってなるよ。
それで、鶴岡市を出発して方角的には延々と東に向かって、太平洋を目指す感じで東北の南部を横断するように移動を開始します。
一応、ナビアプリで目的地まで案内させてありますけど、なにせ長距離移動ですしある程度大きな道路に出ちゃえば、28km直進とかそんな感じなんです。
こっちも頻繁に曲がったり小道に入ったり、バイパスに乗ったり降りたりみたいなことはないだろうと踏んでますから、かなりゆるめの道行きとなっておりますよ。
やがて最上川沿いを延々と走るような感じになっていって、基本はずーっと山ん中という。
途中で猿とかいたからね。
道端でなんかかじってる猿と目があったりしてるから。
こっちも野生の猿と出会うような道を走るとは、この旅の出発前には思ってなかったよね。
…てゆーか、どこに行こうとしてるんだ、この人。
あ、あたしか。あたしのことか。あたしの話してるんだった。
で、そこからホントの峠道になってて、S字カーブをぐねんぐねんに登ったり降りたりする道がしばらく続いて。
スマホの電波も届いてない感じ。BGM代わりにしてたYouTubeの適当な動画もサブスクの音楽も、通信ができないから当然役に立たなくなっちゃって。
もちろんローカルに保存とか逃げ道はあるけど、そもそもそういう所を走ると思ってないから。事前のリサーチとかしやしないからさ。もう無電波エリアのまっただ中だから。
第一、ちょっと車を停めてどうこうできるような待避所もあんまなかったしね。そのままとにかく山を突破しないと、っていう状況だったんです。
猿ならまだいいよね。
鹿とか。
熊とか。
いるよね。100パーいるよね。プーさんみたいなかわいいやつじゃないよね。もっふもふのあどけないやつじゃないよね。グァオォオー! だよね。
その心細さ。
だって、いくら行楽シーズン夏休みシーズンっていっても前後に車なんかいないんだぜ? 途中の最上川沿いの道あたりはまだ車も周囲にいたけどさ、いつの間にか他にだーれも走ってない峠道なんだもん。
猿と、たぶん熊と、ワンチャン天狗とか出そうな道なんだって。
だから、急にYouTubeが復活して音が車内のスピーカーから聴こえだして、ああ電波が届いてんだってなってさ。
1時間以上ぶりに信号で停車した時は文明を感じたもの。文明開化ってこれのことかっていう。新時代の夜明け。夜明けのミュー。
半額のホテル
運転が続いたこともあって、休憩がてら通りすがりに見かけた道の駅に寄ったりしました。旅っぽいこともやってっから。出会ってない熊に怯えてばかりじゃないから。
スイカ太郎(たぶん) |
なんかスイカが名産なんだって。カットしたやつがあったら絶対買ってたと思うけど、まるのまんまのやつしか売ってなくて仕方なくソフトクリームでお茶を濁したり。
そんなこんなで、目的の宿がある街へ着いたのは夜。19時ころだったと思います。
石巻。宮城県の海沿いの街です。
前回来た時はほぼ通過しただけで、手前の松島の人気のない堤防みたいな場所でちょっと休憩したりってのはあったものの、その後は石巻を越えて南三陸の方へ足を伸ばしたと記憶しています。
あたしの旅ってのは計画性みたいなものがほぼないってのもあって、気になるけどまた後でみたいな感じでスルーするものもあるし、その時は自分のアンテナが立ってなくてどこか引っかかりはあるけど今じゃないな、ってことになったりするんですよね。
で、後になって、次はここに行ってみたいとか、ここなんかあったんじゃないかとかそういう、なんて言うんですかね、無念とか心残りとかさ、そんなのがあたしが旅して回ったあちこちにあるの。
例えば、あの路地がすげぇ気になるけど、その時は電車の中とかさ。
通りすぎていく、あたしにしてみれば背景に近いような感覚の景色の中に建ち並ぶ家の、ビルの、マンションの窓の薄明かりの向こうにいる人生もあったかもしれないと思う瞬間って、あたしはけっこうあって。
もうね、そういうなにかで旅してるって言っていいのかもしれないよね。
で。
ホテルにチェックインしたんだけど、駐車場が先着順ってことでホテルの建ってる敷地内のスペースはすでに埋まっちゃってて。
で、建物の裏側にある第二駐車場ってのも満車になってんだ。さらにちょっと離れたところにある第三駐車場がかろうじて空いてたから、とりあえず停めることはできたんだけど。
部屋に入って荷物を下ろしてから、飯をどうしようかってなって。
というのも、のんびり200kmかけて移動してたらだんだん暗くなってきたこともあったし、ナビの目的地をホテルまでにしてたってのもあって、とりあえずチェックインしちゃったんです。
あたしはあちこちのスーパーマーケットを巡るってのをやってるので、旅の夕ごはんはたいていスーパーのお惣菜でっていうパターンがあって。
でも、また車で飯を買いに出ちゃうと、先着順の駐車場が完全に埋まっちゃうんじゃないかっていう心配が出てきて。
車中泊上等で旅してるあたしが宿を押さえるくらい、このご時世のお盆シーズンまっただ中にしては良心的な価格ってこともあって、チェックインの時にフロントに行ったらどうみても混雑してるんです。
そりゃそうだよね、某ホテルとか普段の倍以上の値段だから。なんにもない平日の料金を調べてみると、マジで倍以上だから。
ってことは、要は半額ってことだよね。
あたしが予約したこのホテルは、その某、社長のカレーとか水を売ってる某ホテルとグレード的にはほとんど一緒なんです。
だから、要は半額ってことなんですよ。
半額だったら泊まってもよくない? 朝食バイキングつけて半額なんだよ? よくない? ねぇねぇよくない?
…誰に許可を求めてんだって。そりゃ読んでるあなたですよ。
なに言ってんの? って顔してるあなたにですよ。
夕食をどうしよう
で、その朝食バイキングがついてくるんですけど、混雑状況をホテル側も事前に知っておきたいってのがあって、チェックインの際にどの時間帯に利用するかを客に訊いてるのね。
それで、その時間帯の印刷された朝食券を渡したりするくらいには、お客さんが泊まってるらしいんです。
そうなってくると、まだ夕方だけどこれから宿にやってくる客もいるでしょう。ってことは、今から車で外へ出るのは先着順の駐車場がなくなるリスクがあると。
それじゃあ、ホテルの近くで歩いて行ける距離にコンビニとかさ、なんかないかと思って。色々と調べてみたんだけど。
これもねぇ、また無念とか心残りって話になるんですけどね。
確かにスーパーマーケット巡りは楽しいし、その土地の空気感がつかめるし、ましてや時間帯によってはその土地の人が食ってる美味い惣菜が半額シールの魔力によってお安く手に入る、みたいなこともあるんです。
あたしにとっては面白いし楽しいし、時には考えさせられることもあることなんです。
でもさ。
たまには、そのへんの美味しい飯屋とか行きたいじゃない。その土地の美味しい物を出すようなさ、お店に行きたいじゃない。
ちょっとお酒とか飲みたいじゃない。
ビールに焼き鳥とか最高じゃない。
でも、ホテルをとらないこともまあまああるような旅なんです。道の駅とかで寝たりもするんです。夜通し走って、朝焼けを見て帰ったりするんです。
そうなると生ビールってわけにはいかないじゃない。そもそも、道の駅のすぐそばにあるかって話しですよ。あたしが行けそうな居酒屋があるのかって話なんです。
一見の客が入りやすくて、それでいてマスターがそんなに詮索してこなくて、できればサッポロの赤星とかが置いてあって、混み過ぎず空き過ぎずで、煮物と魚が美味くて、エプロンがやたら似合うバイトのお姉さんの笑顔がやさしくて、こじんまりとしつつも居心地のいいカウンター席がある居酒屋がありますかって話なんですよ。
てゆーか、ハードルが高い。逆にハードルが高いから。な?
え、逆ってなに? 逆ってどういうこと?
いいから、逆って書いた上に消す気がないならツッコまなくていいから。自分で話の腰を折るんじゃないよ。読んでる人も読みにくかろうよ。
で。
今回はこっちの問題、要はホテルから歩いて行ける距離なら、居酒屋だろうがラーメン屋だろうが行ってもいいっていう自由さがある状況なんです。
今がチャンスなんです。無念を晴らす大チャンスなんです。
よくね?
今日は外食でもよくね?
たまには、そういうのもよくね?
じゃあ、歩いていけそうな距離になんかないのかということになり。
調べてみるとあるにはあるの。何件かはあるんです。
でもさ、思い出してほしいんですけど、お盆休みのまっただ中なんです。里帰りとかしてる人も多い時期なんです。ホテルだって満席なんです。
空いてると思う?
あたしひとり、ふらっと行って空いてると思う?
想像してほしいんですけど。
石巻のさ、海の近くの街で、絶対海鮮ものとか美味いじゃん。で、ちょっと調べるとそういうのを出してくれそうな、チェーン店じゃない感じの居酒屋さんとかもネットで検索するとヒットするわけ。
行ったとして、あたしがふらっと行ったとして。
満席なんですと。
悪気はないよ、ないけどちょー混んでる店の戸をガラガラっと開けたらどう見てもギッチリ客がいて、店員さんが悪気なんかは一切ないけどあーこんな日にこんな時間に予約もせずによく来れたな感の漂う顔で、仕方なさそうにこっちに来るじゃん。
あたしの妄想の中ではそうじゃん。絶対そうなるじゃん。あたしが行ったら絶対そうなるじゃん。
またねぇ、夕方から小雨が降ってるんですわ。傘は車の中に準備があるけど、靴が夏仕様の通気性のいいやつしかなくて雨の中を遠くまでってのはちょっと不安があるんです。
そんな中、あたしにしてはがんばって行って勇気をだして戸を開けた居酒屋でそうなったら、帰ると思うよ。
家に。
ホテルじゃないよ、家に帰ると思うよ。泣きながらだよ。むせび泣きながらだよ。
ひとりで
ってことは、予約ができる店がいいなと。
それもできればネットで予約したい。電話は無理だって。
だって、どう考えたって混んでる可能性のほうが高いじゃん。電話して空振りに終わる可能性のほうがずっと高いのは目に見えてるの。
「もしもし、すいませんひとりなんですが空いてますか」
「あー、今日は満席になってまして」
電話を切るよね。次の店にかけるよね。
「もしもし、すいませんひとりなんですが空いてますか」
「あー、今日は予約でいっぱいで」
電話を切るよね。次の店にかけ、る?
もうダメだって。心がついていかないって。あたしなんかが食事できるような店なんかこの世に一件もないんだってなるから。家に帰るから。ゴーホーム。
だから電話予約は無理。心が無理。ネットで、せめてネットで混雑状況がわかるような店じゃないと。
で。
あちこち調べてみたら、あったんだよ。歩いて行ける距離でネット予約可能で、しかも今から行って空きがあるっていう店があったんです。
牛角っていうんですけど。
…ひとりで。
焼肉。
するの?
誰が?
あたしが?
いや別にぜんぜん平気ですよ。ひとり焼肉とか全然普通に行きますよ。
ひとり焼肉とひとりスタバだったら、ひとり焼肉のほうが断然行きやすいもん。
ひとり焼肉とひとりディズニーシーだったら絶対ひとり焼肉のほうだもん。
いいよ。
行くのはいいけど、予算がさ。ほら。ほら。
だって今朝、カップラーメンだったんだぜ? そんなやつが牛角とかさ。
いやだって、石巻感も特にないじゃん。牛角とかどこにでもあるしさ。せっかく遠くまで来てだよ。
しかもひとりでそんなに肉食うかって言えば食わねぇと思うしさ。
でもねぇ、なんかその、ネットで予約が取れるっていうさ、安心感とかさ。
あと、生ビールが飲めるっていうその感じとかさ。
わかるよね、読んでるみなさんもわかりますよね。
でね。
今は便利になってて、ネットで予約できるしさ。
小雨が降る中、足元に気をつけつつ歩いて行って、時間に着いて。ほとんど待たずに入れて。
注文もタブレットでできちゃうから、ワーワーやってる店内でもスムースに食事ができちゃうわけですよ。
知らない街で、初めて来た店で、おビール様をいただけちゃうわけ。
こっちもさ、旅に出てる、しかもめったにない長旅に出てるっていう感じもあるし、成り行きとはいえホテルなんかに泊まっちゃってさ。
お肉なんか焼いちゃって。
高揚ってわけでもないけど、盛り上がってきたっていう、自分の中でアガってきてるものがないわけじゃないっていう。
ただ、その、この記事の頭の方にも書いたけど、こういう店舗に入ると急に周りの挙動が見えちゃうっていうか。
旅をひとりでしてるせいなのか、人が大勢いるところに行くと、なんかこう色んなものが見えちゃって。
そういうのを見てると、自分の中の盛り上がりみたいなものをちょっと越えて、いつの間にか自分が周囲の人の中で浮いてくるっていうか。ふっと我に返っちゃうような。わかりますかね?
待てよと。
よく考えたら、ちょっと前に富山で、旅先でビール飲んでんだよな、ってのを思い出しまして。ブログにも書いた気がするんですけど。
焼き鳥屋でビール飲んでたよなーって。
いやいいよね、飲めばいいじゃん。なんの問題もないじゃんね。
でもなんか、自分への言い訳として、たまにはいいじゃんみたいなの、あったよね。
…
あれちょっと待って、冷静に考えるとなんで焼き肉食ってんの、みたいになってきて。
ついさっきホテルが半額だって言ってたじゃん。それで自分を丸め込んだじゃん。
なんで結構な額払ってさ。肉なんて焼けばたいてい美味いだろうよ。どこで食ったって美味いって。
これが地場の焼肉の美味い店とかならまだわかるよ。なんでわざわざ、どこにでもあるチェーン店で。
いや牛角も美味いよ。ネットで予約もタブレットで注文も便利だし、いい店ですよ。でも旅先でさ。
美味かったよ、美味かったけども。
周りはみんな家族連れだしさ。パパおにくおいしーって、隣の席で子供もはしゃいじゃってるし。
向こうの席じゃ、明らかに焼肉デート感出してるふたりが、紙エプロンとかつけてキャッキャやってるし。
オジサンはそっちの卓だけお願いしますわ、あとはウチらでホール回しますんでっていう空気がにじみ出ちゃってるイケメンのお兄ちゃんとオジサンの対比が、ビールの味をちょっと変えちゃってるし。
…あれ?
あたし、さ。
なんで来たの?
今ちょっと落ち着いて冷静になって、いやその。
えーと。いや、えーとさ。
ホテルからちょっと歩くと、すき家だったかそんなのあったよね。ビールも飲めばいいじゃん。すき家で牛皿みたいなので、ビールでいいじゃん。
すき家だって焼いた肉出てくるじゃん。ビールも出てくるじゃん。
その、なんだろうね。乱高下がひどい。心の乱高下がひどすぎる。ビール飲んで肉焼いてる時にそんなになる人いる?
…そんなだよ。そんなひとり旅だよ。