9月の3連休に旅にでた その2 この街はなにかがおかしい編

2025年11月3日月曜日

#2025年9月都内から北関東旅 #食べもの #旅

t f B! P L

 色々あるよ。酸いも甘いも、なんだかんだとありますけども、基本的には旅に出たいという衝動があってのことでございます。

 そんなわけで、久しぶりの都内行きを経て、東武東上線で一本の埼玉県某所で朝を迎えております。

 今後の予定は一切決めておりませんよ。いつものやつです。

ホテル前

ホテル・モーニング

 朝になりまして。

 ホテルで連泊を決め込んでおります。

 ここのホテルでは朝食バイキングを開催しておりまして、めずらしく朝食付きのプランで予約してたんです。

 予約してたんですなんて言い方をするのは、勝手に朝食がついてくるパターンの宿以外ではたいてい素泊まりプランを選ぶから。今回に限ってなんで朝食付きにしたのか、今となってはあんまり覚えていないんですよね。

 というのも、朝が極端に弱いんです。

 基本は夜型なのを、昼間の仕事に合わせて嫌々起きるように仕向けているものの、自分の性質が簡単に変わるわけもないのね。

 とにかく夜中に目が覚める。そして眠れなくなる。そればかりか朝6時を越えると極端に眠くなるんです。これはね、記憶を辿れば子供の頃からそうだったと思う。

 これは例えば普通に寝ちゃって朝5時に起きたとしても一緒で。睡眠時間はとれていたとしても、5時に起きて6時をすぎると吐くほど眠いんだ。

 だから朝食を食べる時間がまちまちというか、そもそも起きられるかわからないのね。

 宿泊客にはサービスで勝手に朝食が用意されてるパターンなら、食べなくても特に問題はないけど、わざわざ朝食付きにして食べないのは用意してる宿にも食材にも申し訳ないじゃないですか。

 もうひとつは、ビジネスホテルの部屋でお湯を沸かしてカップ麺食ってるあの感じが、なんかやたらと好きなんです。

 ビジネスホテルに限らないけど、旅先の宿ってなんか知らないけど備え付けのポットでお湯沸かしたくならない? あたしだけ?

 普段やりもしないのに、スティックタイプのインスタントコーヒーとかで一服入れたくなるんだよ。なんかしらんけども、旅先にいる感がするんだよ。

 昔はさ、旅先でホテルに泊まってさ。

 周りの散策とかもするよ。でも、飯屋を探したりってのはホテルに置いてある周辺マップとか、あとはフロントの人に訊いたりして行ってみるってのが多かったと思うんです。

 それか電話帳であたりをつけるとかさ。なんかそんな感じだったと思うの。あとはもう自分のカンだよね。店構えとか空気感から読み取って、突撃するかしないかっていう。

 今だったらネットでいいんだけど、昔はそんなだったわけ。

 だから、宿の周りになんにもない上に、出張でタクシーとか送迎車でホテルに放り込まれたら最後、外に出るのも面倒ってなったら部屋にあるポットでお湯を沸かして茶を飲むとか、そのくらいしかやることがないっていう。

 あとは枕投げとか。ベッド投げとかさ。高速布団たたみデスマッチとか。そんくらいだよね。

 あたしん中ではポットでお湯を沸かして、それがなんか旅してる感に繋がるってのは多分そんな頃の名残りなんだと思うんです。

シェフ

 その日はどうにか起きることができまして。

 昨日はガッツリ系の整体に行ってバッキバキにやられてきたせいもあり、他にも長距離運転した上に休日の客数の多い電車に揺られたり大雨に降られたりしてましたから。

 寝付きは、寝付きだけはよかった気がしますよ。うん。はい。なんなのその一日。

 で、その、朝食つけましたから。

 モーニングをいただきに一階に降りていくんだけど、そのホテルがね。今は減ってるけど地方に行けばまだまだあるタイプの、宿泊施設と催し物会場というか披露宴の会場とか祝賀会みたいなことができるフロアが併設になってる感じで。

 だから内装とか床の絨毯とかもそういう雰囲気になっててさ。赤い絨毯が敷いてあって、ちょっと一昔前のゴージャスな内装っていうか。単なるビジネスホテルのフロントっていうよりも、宴会場の受付っていう感じの。

 ホテルの玄関付近もちょっとした庭園感のある造りになってて、滝というか水がデカい石の上からざぁっと流れてるみたいなさ。

 そんな一階の朝食会場に行くと、いわゆるバイキング形式で色んな食べ物が並んでるんだ。定番のボイルしたソーセージとかスクランブルエッグもちゃんとあるし、朝カレーとかもあったかな。フルーツ系もいくつかあったし。

 なにより目の前でシェフが目玉焼きを焼いてくれるってのがあって。

 最近じゃこういう表現も多用されるようになって、陳腐な感じになっちゃってるけどさ。

 神かと。

 目玉焼き神かと思って。

 だってそうでしょうよ。目玉焼きだよ? 朝食に目玉焼き作ってくれるような彼氏彼女、奥さんでも旦那さんでもいいわな。これを読んでくださってるあなたにはそういう人がいますかと。

 8枚切りで98円みてぇなパンが、しかも半額シールで50円切っちゃってるようなやつがテーブルに置いてあって、買ってから冷蔵庫に入れっぱなしで一向に減る様子のないマーガリンを塗って焼きもしないで食うような人もいるんですと。

 昨日食いそこねたものが朝食ですってことで、なにがあったっけと寝ぼけまなこでガサガサとレジ袋をあさったらでてきたのがカツ丼っていうさ。

 朝から? ってなって。高校生でも朝からカツ丼なんて食うかよってなってる人もいるんですと。

 かろうじてあったポテロング2本が朝食だっていう人も、こうやっておかげさまでブログを書いてるんですと。

 それに比べてみなさいよ。

 神だろ。

 目の前で目玉焼きを焼いてくれてるシェフは神様に違いないだろうよ。

 そりゃ白いシェフ服を脱がせて、頭に乗ってる背の高いシェフハットを外してさ、ポロシャツにチノパンでも履かせれば普通のおじさんに見えなくもないよ。

 でも神様だって。目玉焼きうまいんだって。

 しかもさ、朝食会場の感じも少なくともあたしが泊まった時は悪くなくて。

 前日、都内で見たようなインバウンドのお客さんはゼロだったし、親子連れも老夫婦らしき人もカップルもごく普通の旅の朝ですっていう空気感っていうのかな。

 朝は起きるのつらかったよ。けど、朝食を付けたのはファインプレーっていうか、正解だったかな。

モーニング
茶色い。我ながら茶色い

謎の包み
そして謎の包み紙

どこかに違和感

 2日目は自由度が高い一日で。

 連泊してるから車を置いて電車で動いてもいいし、車で出かけたっていいし、歩いてふらふらしたっていいっていう感じで。

 埼玉自体も久しぶりっていうか、何度も通過はするけど特に宿をとったこのあたりは初めて来たんじゃないかな。

 ただ天気はあまりよくなくて、昼間は雨が降ったり止んだりするような予報になってたんです。

 そうなってくると車でふらふら出かけていって、なんにもなければ早めに帰ってきてのんびりするのも悪くないな、みたいな心境になり。とりあえず車で出かけてみたりして。

 この辺もまだ田園風景っていうかそういうところもあるんだなぁとか、あんまり都会を走るのもやだなぁみたいな。

 なんだろうね。普通の旅行者ってなにするの? なにしてるの?

 あそこ行ってここ行って、これ食べてあれ見てこれ買って、みたいなのってあらかじめ決まってるの?

 そういうのが一切ないんだよね。なーんにも。なんにもないんだ。

 旅してきましたって言ったって、どこ行ってきたのとか何してきたのって訊かれると、いつもちょっと困るんだよね。言われてみれば何もしてないっていうか。

 よく言ってぼんやり。悪く言えば時間の浪費。

 そんな感じなんです。そしてそれがいいんです。

 その日もなにしてたか、まるで思い出せないんですけど、雨も落ち着いた夕方くらいにはホテルに戻ってきてて、歩いてホテル周辺をふらふらしたとは思います。

 ホテルの裏にデカい神社があって、周辺には駅前のちょっとした街並みがあって、駅の反対側はそこそこ流行ってるふうなんです。まぁまぁ、よくある街並みといえばそうなんですけれど。

 とはいえ、そんなにガッツリ駅周辺を歩き回る感じでもなく、夕ご飯を適当にみつくろってホテルへ戻ろうとしてる途中に、あるお店を見かけまして。

 見かけましてっていうか、ホテルから出た時にも見かけちゃいたんです。小さな、ホントに小屋っていう感じで。

 住宅の一階が店舗っていう感じですらなくて、店舗なんだけど1坪あるかどうかの焼き鳥屋さんがあって。

 昨日、飯屋でも探してみるかってなった時に、グーグルマップで食事とか居酒屋とかで検索して周辺になんかないのか探したんですけど。すごく違和感があって。

 やたら焼き鳥屋がヒットするの。

 そりゃあね、焼き鳥屋くらいあるでしょうよ。どこの駅前周辺でもさ、焼き鳥屋の一軒や二軒あるでしょう。

 食い倒れの街大阪だって、街の食事処の全部が全部お好み焼き屋ではないじゃん。たこ焼き屋ではないはずじゃん。

 仙台だって牛タンとずんだシェイクしかないってことはないじゃん。街の七割はそうだとしてもさ、食文化の多様化にともなって、二軒くらいはいちごシェイクだって売ってるわけでしょうよ。

 香川だって、うどん屋が99パーセントだよ。99.9パーだけど、クレープ屋の一軒くらい生き残ってるでしょうよ。もちろんうどん粉で打ったクレープ生地ですよ。水道からうどんが出てくるお国柄だとしても色んな店があるわけですよ。

 だけどその周辺はマジで焼き鳥屋だらけなの。確かに仙台の例えば盛りすぎた。それは謝罪します。朝食に萩の月も食べるもんね。

 愛媛なんかあれだよ、雨もポンジュースなんだから。天気予報が曇りのちポンなんだから。線状ポン水帯ができちゃって大変なんだから。

 …あのね。

 あちこちに敵を作るんじゃないよ。四国どうなってんだよ。

この街はなにかがおかしい

 それで。

 気にはなったというか、焼き鳥屋については違和感は覚えたものの、だからってそれ以上深く気にすることはなかったんです。

 で、買い物帰りに件の小さな焼き鳥屋さんがあって。

 歩道がかろうじてあるかないかくらいの、たいして広くない道路沿いに面した建物に小窓がついてて、もうすっかり暗くなった街で遠目に明かりが点いてるのが見えるんだ。

 近寄っていくと店の前で並んでるような人影はないけど、営業してるってのはわかる。道路を挟んで反対側からのぞいてみると、小窓の向こうでおかあちゃんがひとり、店の中にいて串を焼いてるのが見えるわけ。

 焼き鳥屋っていうとさ、近所にあるからたまに行くんだよって人もいると思うんです。

 ちょっと飲んで、串盛りでもつまんで帰るよっていう感じ。あるいは店で食べなくても電話で注文しておくと持ち帰りできる、みたいなのもあったりして。

 その店はそこで飲み食いできるようなスペースなんかないの。そういうテイクアウト専門っていうか、持ち帰りだけのお店なのね。

 それはそれでアリじゃないかと思って。こっちは今日はもうホテルに帰ってまったりするだけだと思ってるし、ある程度のエサは確保してるものの焼鳥を何本かくらいは追加したっていいだろうと。

 あとはさ、なんかいいじゃん。

 こっちはこのへんになんの縁もない、元はと言えば都心に用事があるけど車で行くのはダルいし近県のどっかで宿を取ろう、っていうのが始まりでここにいるわけ。

 言い換えればこの宿泊先は目的地でもなんでもなくて、たまたまそこそこのお値段のホテルが空いてたっていうだけで、ここにいるんです。

 その偶然も偶然でやってきた街で、いきなりチェーン店でもない居酒屋に入るのはさ、やっぱりちょっと勇気がいるわけですよ。あたしみたいなシャイボーイにはさ、トゥシャイシャイボーイには、あたしこと観月ありさには伝説の少女としては勇気が必要なわけですよ。

 それに比べたらお持ち帰り専門の焼き鳥屋の、ちょうどいい感じっていう。それくらいがちょうどいいじゃん。

 それでその、コンビニ袋をぶら下げたまま焼き鳥屋の小窓に寄っていって、すいませんと。焼き鳥くださいと。

 そしたら中にいるおかあちゃんが、それもこういうお店にいそうな圧の強いおばちゃんじゃなくて、この小さなお店から一歩出たらなんでもない普通のおかあちゃんっていう感じの人なんだけど。

 ぼそぼそっと、なんとかはないけど普通のはある、って言うのね。

 あたしも、実を言うと耳の聞こえが悪くなってきてて。突発性難聴っていうの? なんかそんなのになっちゃってから、聞き取りがあんまよくなくて。

 こっちだって肉に色んな部位があるくらいは知ってますから。お好きな人はハツだボンジリだってな感じで食うんでしょうけど、あたしゃそんなにこだわりはないわけ。

 どっちかって言えばササッと買って宿でのんびりしたいと思ってますから、それでいいです何本下さいって返事しまして。

 タレはこれでいいかとかあって、それでいいですみたいなやりとりをしまして。ちょうど焼いてる最中でちょっと待ってればできるっていうんで、こっちにしてみれば作り置きじゃなくて焼き立てが食えるんならラッキーくらいの感じでさ。

焼鳥
そう、やきとり!

 それでホテルに帰ってその焼鳥を食いながら黒ラベルの1本も空けるんだけど。

 焼鳥、美味いね。

 そりゃそうだよね。焼き立てだもん。

 美味いんだ。

 美味いんだけど、どうも気になってきちゃって。

謎の答え

 そのね、焼鳥を受け取って帰るその直前に別のお客さんが来て。

 焼鳥を持って帰るあたしの背中越しに、その客がさっきのおかあちゃんに注文するのが聞こえたんです。

 なんとかって焼鳥の部位を何本なんて言ってたら、お店のおかあちゃんに売り切れてましてって言われてて。

 あたしもさっき、言われてみれば焼鳥下さいの時点でそのなんとかって部位はないですって言われたのね。

 今来た客も真っ先になんとかって部位をくれって言って、んでもってないって言われてて。

 今食ってる普通の焼鳥は美味いよ。焼鳥はどっちかっていうと塩が好きだけど、タレもたまにはいいもんだなと思ったくらい美味いんだ。

 たまたま立ち寄った旅先のたまたま寄った焼鳥屋で買ったっていう、バックストーリーっていうかそういう味以外のやつを抜きにしたって美味いんだけど、その売り切れてたなんとかってのは、なんなんだろうって。

 いや、そもそもおかしいと。

 この駅前だけで異様な数の焼き鳥屋がある上に、テイクアウト専門の店まであるってのは、よくよく考えたらなんかおかしくないか?

 で、スマホで検索してみると、どうやらこの地域では焼鳥と言えばカシラっていう部位のことらしくて、しかもこの地域独特の味噌ダレをつけてそのカシラを食うっていうのがかなり昔からスタンダードらしいのね。

 いわゆるB級グルメってさ、地方を盛り上げようとか町おこし村おこしみたいな側面があって、その土地に住んでる人に言わせればそんなことを言い出したのなんてつい最近でしょ、みたいなものもあるじゃん。

 でもザッと調べた限りでは、どうもそういうことでもないらしいんだ。

 どうやらこのあたりでは、独特の味噌ダレで希少部位のカシラを食うっていう文化がかなり深く根づいてて、現にさっきの店だって流行りに乗って古民家をリフォームしてみてぇな洒落臭いやつじゃないわけ。

 昨日都心で見たようなインバウンドの客がわんさかっていう、観光地化された名物とか食い物っていうんじゃ、どうやらないっぽいと。

 あたしと入れ替わりできたさっきの客も、どう考えたって近所のおっさんだろうに、真っ先にカシラって言ってたしさ。

 焼鳥は食い終わったよ。普通の部位のやつ。タレも普通の。

 それでいいかって言われたから、それでいいって言ったよね。知らないからさ。そんなことになってる街だって知らないから。

 どう言えばいいの、看板メニューは味噌ラーメンですっていう店で、ついでに出してる醤油ラーメン食って帰る感じっていうか。

 ドラえもんで秘密道具を使わずになんとか切り抜ける回を見ちゃった感じっていうか。大事MANブラザーズバンドのワンマンライブで一度も大事って言わないまま、アンコールも終わっちゃってっていう。

チェックアウト

 2泊したホテルもチェックアウトの時間が近づいてきて。

 あとは帰るだけ、なんだけど急ぐ必要もないのね。むしろ、帰るってことはこの旅に区切りをつけるっていうことで、それが好ましいことではないってのは、読んでるあなたには伝わってほしいんだけど。

 帰るのはいつだっててきるから。

 味噌ダレのカシラ食ってから帰ったっていいよね? いいですよね? あたしにゃカシラを食う権利がありますよね?

 そもそも知らなかったらさ、そんなのを知らなかったら旅先でふらっと寄った焼鳥が美味かった、また行きたいなぁで済んだ話ですよ。旅のいい思い出として心の中で漂い続けるわけですよ。

 あたしがもしも最後の日を迎えた時に、ああ、あの焼鳥をもう一度食べたかったなぁと思うかもしれないやつですよ。

 なにも知らなければそうなったっておかしくないわけ。

 でももう知っちゃってっから。

 名物の味噌ダレのカシラを食わずに、普通の焼鳥を普通のタレで食ったって知っちゃってっから。

 いっそ焼鳥を1本も食わなきゃ、へぇそんなのもあったんだで済まされることだったと思うよ。

 でも食っちゃってるから。名物のやつじゃなくてなぜかノーマルのを食っちゃってるから。

 そんなのダメでしょうよ。その状態で最後の日を迎えるわけにはいかないでしょうよ。

 ましてや、もう一回来るにはさ、まだまだ行きたいところが山ほどあるこの国の他の地域を差し置いてまた来るとして、次がいつかなんてわかったもんじゃないんだって。

 今。

 今日。

 ナウ食わないと、もう次はないかもしれないんだって。

 それで、色々と調べてみるんだけど、この2日間で行ってない駅の向こう側。泊まったホテルのあるエリアから駅を挟んで反対側に、11時からやってるテイクアウトもできる焼き鳥屋があるのがわかり。

 ホテルは10時チェックアウトだから、いったん出なきゃいけないと。

 この旅の最初に、チェックアウト前なのに車を置かせてもらっちゃってるからさ。さすがに、チェックアウト後も、しかも焼鳥食いたいんで車を置かせてくださいなとは言えないじゃん。

 幸い、駅前だからパーキングはあちこちにあるらしいから、じゃあチェックアウト後にその焼き鳥屋が開くまでの時間潰しを考えようってことになりまして。

 なんだかんだあって、2日とも夕食はコンビニで済ませちゃってたのね。

 あ、正確にはコンビニ弁当と、普通の焼鳥に普通のタレをかけたやつを夕食にしまして。

 …絶対味噌ダレのカシラ食うからな。覚悟しとけよコノヤロー

 で。

 じゃあ、旅先でやってるスーパーマーケット巡りをしよう。この辺のスーパーをピックアップして何軒か回ってから、焼き鳥屋に行こうっていうことで。

 ホテルをあとにしたんです。

 あ、今日もちゃんと神に会ってから、目玉焼き神こと朝食バイキング会場で目玉焼きを焼いてくれるシェフから美しい目玉焼きをいただいてから、チェックアウトしてますからね。

 そこはさ、ちゃんと書いとかないと。もう7千文字ですよ? 7千文字も書いてますけど、そこはちゃんと神についてゴッドについて触れておかないと。

カシラを味噌ダレでください 

 9月の3連休で、気温はまだ夏の感じでね。今日は天気もよくて昼間は間違いなく暑くなりそうです。

 スーパーマーケットってだいたい開店時間が9時とかですから、チェックアウトをそのくらいにしてスーパー巡りを始めるんですけど、もちろん一軒目から定休日っていう。

 3連休だぜ? かきいれ時じゃないの? 商売する気ある?

 まあまあ、いいんですよ。いいんです。スーパー巡りもしたいけど、今日は焼き鳥屋が開くまでの時間潰しでもあるから。むしろそっちがメインだから。定休日で空振りとかじゃないから。ぜんぜん違うから。ぜんっぜん違いますから。そこは営業しておけよとかもうぜんっぜん思ってませんから。

 そんな感じで何店舗かスーパー巡りしてたんですけど、入店して店をぐるっと回ってサヨウナラってのもさ、どうかと思うじゃない。人としてどうかと思うじゃない。

 かといって要らないものを買うってのも違うわけ。旅だってタダじゃないから。特に今回のは宿泊費やら都心まで行って色々やってっから。それで無駄になんか買うってのも違うじゃん。

 で、スーパーにもお土産を置いてるところもあって。

 道の駅とか物産館みたいなところよりはラインナップが少ないけど、お土産を置いてたりするところもあるんです。旅の最終日でもあるし、そんなのがあったら買おうと思ってたんですね。

 スーパーの店内をふらふらしたりお土産を買ったしてたらいつの間にか11時が、件の焼き鳥屋の開店時間が迫ってきてて。そろそろ向かってもいい頃合いになってて。

 でも、さすがに並ぶのはさ、朝から焼き鳥屋のオープンに合わせて並ぶのはさすがにさ。

 あいつどうした!? ってなるじゃん。埼玉の片隅のローカル線の駅前の焼き鳥屋に開店前から並んでるやつがいたらさ、どうしたってなるじゃん。

 そりゃ流行りのかき氷屋ならわかるよ。開店前からインスタでバエるかき氷目指して並んでたっていいよ。

 焼き鳥屋だぜ? 3連休だぜ?

 並ぶとしたら、昼間っから瓶ビールをテーブルに並べてクダ巻いてるような飲んだくれくらいでしょうよ。待ちきれねぇ! っていう。そんなの近寄っちゃだめなやつだよ。

 で、開店からちょっと経ったあたりを狙って、駅前のコインパーキングに車を入れまして。そこからはちょっと歩くんだ。

 駅前って場所柄なのか、休みだってのに制服姿の学生さんがいたり、観光なのか人もけっこう歩いてて。

 駐車場から焼き鳥屋までたかだか100メートル、もうちょっとあったかも知れないけど、なんか不思議だよね。こんなところ、来る予定じゃなかったんだもん。

 なにかあって、経て、経て、辿り着いたやつなんだもん。こんなこと、旅に出る前の日には思ってもいなかったんだもん。

 味噌ダレのカシラ、食べたよねー

カシラ

味噌ダレをつけて

 これがピリ辛でマジで美味くて。

 基本、焼鳥は塩だなぁって感じだったんだけど、このタレも美味いしカシラを食べるのももしかしたら初めてだったかもしれない。

 そのあと、さらにスーパーを巡って、味噌ダレだけ売ってるのを見つけて買っちゃったもんね。

 で。

 そこからはなんか、どういえばいいのか。

 帰りたくなくなっちゃってさ。楽しくて。なんかそういうのがいいんだよなって、あらためて思っちゃって。

 出会いとか発見みたいな言葉ももう陳腐だと思うんだけど、自分の中だけの意外性だったり突発的なやつだったり、それが面白いっていうのはずっとそうなんです。

 旅に出るとそれが起こる。もちろんいいことばかりじゃないし、傷ついたりするような大事には遭いたくないんですけど。

 でも旅に出ちゃう。そういうことかなって。

 もちろん日が暮れてもまだ群馬にいたよね。帰りたくなくて。ぐんまちゃんのハンカチとか買っちゃって。

 どうするの?

 どうしたいの? ぐんまちゃんをどうしたいの?

 そんなだよ。そんな旅だったよ。


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