結局、ゴールデンウィーク中に仕事にいかなきゃいけない日ってのがハッキリしたのが、4月の27日だったと思います。直前すぎやしませんかっていう。
いやね、おおむね大丈夫じゃね、とはなってたんです。色々諸々、段取りしていって、おそらくは予定通り休めるだろう、大丈夫そうだと思っていたものの、それがひっくり返されることもあるからね。
実際に連休前の4月26日の日曜日はそうなって、半日だけ出勤する羽目になったんだから。
何があるかなんて、わかったもんじゃないんです。
日曜日は仕事に出かけ
26日の日曜日は、休日出勤だしのんびりまったりコーヒーでも淹れて、なんて空気感じゃなくて。
あたしの仕事の話を長々書いても仕方ないから端折るけど、なんとかどうにか時間までに終わらせまして。
そもそもその日曜は、バッキバキの、主にマイナス方向にバッキバキの身体をどうにかしてもらうために、いつものマッサージの先生に予約を入れてあったんです。
その先生も人気だから、空いてるのがたまたま日曜の午後ってことで予約を入れてたんだけど、後から午前中は出勤だってことになったのね。
休日出勤は嫌だけど、幸いというかマッサージの方を直前になってキャンセルするような羽目にはならなそうだと。
いい方向に考えるなら、午前中の仕事でハードに動いた後で全身をほぐしてもらえるならさ、その逆よりむしろいいじゃんっていう。
先にズタボロになってから、ご褒美というか癒しがあった方がいいじゃないですか。
その逆で、例えば先にディズニーランドでキャッキャウフフしてさ、その後から両手を荒縄で縛られた上に牛に括り付けられて引きずられる形で広島の実家に帰るってなったらさ、嫌じゃん。せめて逆にしてくれよってなるじゃん。
うん。ならないね。ならないよね。
先に牛に引きずられてからのディズニーランドってなんだよ。しかも広島からだろ。それもほぼ山口県みてぇなところからだろ。牛も15頭なんだろ。嫌だって。どっちが先とかじゃないって。
で。
仕事を終えてから、その先生に施術してもらったらさ、相当バッキバキだったらしく。今日はヤバいねを連呼してて。いつも以上にどうかなっちゃってるらしく。
多分だけど、感覚が麻痺というか、悪い状態に慣れちゃってるらしくて。
ああ、これは麻痺してたんだなってのを実感したのは、終わった後で施術着みたいなのから私服に着替えたんだけど、服が着やすいの。
肩とかの可動域が広がったみたいで、服を着るのがあきらかにラクになってて。
服が着やすいなんて、思ったことあります? あんまりないよね。
ここ数年間通ってるけど、やっぱすげぇなって。来てよかったなって思ったよね。
ようやく、旅に出よう
で、ゴールデンウィーク中の休みの日が確定して。まとまった休みがあるということになってね。
じゃあどっか行くかって思考になるわけです。
でもさ、その身体で旅に出るっていうのはどうなのと。バッキバキをちょっとは戻してもらったとはいえ、どうなのよって。
しかも、そんな日々だったから、今からじゃホテルの予約っていったってまぁ無理なわけ。
だってさ、なんかトイレバスはおろかベッドまで共用みたいな。その外観の写真は載せないほうがよかったんじゃないのとアドバイスのひとつもしたくなるような、ガッサガサのホテルですら1泊10,000円とかなんですよ。ゴールデンウィークとはいえさ、さすがにだって。
つまり、旅に出るとしたらオール車中泊なのね。キャンセルとかでワンチャン、どうにか泊まれそうなホテルが1泊だけでも見つかるかもだけど、基本ないと思ってたほうがいいと。
ホテルのフカフカのベッドで、高級布団でさ、旅の疲れを癒しつつ次の日のために英気を養うっていうことはできませんよと。
服を着るのすら、いつの間にかやりづらくなってて、それに気づかないような身体で、車中泊していいんですかと。そういうことだよね。
でもね。
あたしの旅なんて、もともとそんなもんなんです。
車に乗って、行きたい方へ行って、この世の隅っこの居ても怒られないであろう場所で夜を越えて、またどっかへ行く。そんな感じなんです。
とはいえですよ。
今は施術のおかげでラクになってますけどね、わざわざ車中泊までして旅に出るべきなのかって。誰かに迷惑をかけてしまうんじゃないかって。
若い時はさ、そんなこと一切考えもせずに、衝動のまま、見えない何かに追い立てられるままに、旅に出られたんです。
だってそうでしょう。心が決めた道行きに身体も追従できたんですよ。若いってそういうことっていうか。
心が塞ぎ込んでる時に身体がそれをどうにかすることなんてなくて。常に心というか、気持ちありきなんです。あたしの旅はそうなんです。
ここに居たくないが最初にあるの。
旅行とは違うからさ。観光名所に行きたいとか、違う景色を見たいとかじゃないの。
ここに居られないから、旅に出なきゃいけないっていう。謎のやつ。こんなの謎のやつだよね。誰にもご理解いただけないやつでしょうよ。自分の中の、闇なんてかっこいいもんじゃない、くされ泥みたいなもののせいなの。
それが徐々に、身体のほうがついていけなくなりつつあって。
でも。
それを押してでも、長い休みなんて人生でもうそんなにあるもんじゃないしさ、家でずっと寝てるよりは旅に出た方がいいだろうっていう、その一点で自分を説得してみて。
それでようやく、旅に出ようと。気持ちが固まったというか、覚悟ができたのが4月28日の夜だったと思います。
長い旅の前の長い話
旅のことをブログに書こうと思うと、だいたいこんな話から始まりがちなんですけど。
これも何度か書いた気がするけど、結局その、あたしが旅の話をする意味っていうか。
今じゃ誰でもレビュアー気取りで、あそこはこうだったとかここがダメだったとかよかったとか、発信できちゃうじゃないですか。
客だけじゃなくて、お店とかも自分から発信できちゃうわけで。だから、情報が欲しいだけならこんなブログを読み漁らずとも、いくらでも転がってるんです。
そんな中で、あたしがそのへんの有象無象のネット記事と同じようにさ、例えばここの温泉は源泉かけ流しでオーバフローがうんぬんとか言ってもっていうか。
あそこのラーメン屋は提供が早いけどスープがぬるいし、店主が気仙沼のスティーブ・マックイーンって呼ばれてるとか、バイトの人妻に手を出して大揉めしてるみてぇなのを書いてもなっていう。
そもそもね、読んだ方のお役に立ちそうなところに行かねぇし。
穴場のパスタ屋にも絶品スイーツが食える古民家カフェにも、素敵な景色に出会える山ん中にも行かねぇし。
オシャレとかわいいとチルさとインスタ映えを、圧力鍋でギュッとしたみてぇなところに行かねぇからさ。
でも、フェイクは混ぜるけど、旅に出ている自分の心境とか状況とかを込みでなら話せることもありそうだし、あたしがこれを書く意味も出てくるんじゃないかなって。
よく思うのは、景勝地とか雑誌に載るような観光地とかさ、あちこちから大勢やってくるような場所があって、そのすぐ近くに住んでる人っているじゃないですか。
超有名な桜の名所のすぐ脇に、普通の民家が並んでたりするでしょう。そういう人たちは毎年、桜の季節になればその絶景を朝から晩まで見ていられるわけじゃない。
それでも、見飽きるってことはないくらいの、素晴らしい桜の名所でも、わざわざ遠くからやってきて初めて見る人とは、心の動きが違うと思うの。
同じ景色を見ているのに、心情は違うと思うんです。
あたしフィルター。
変な形ですよ。変な形の、色の、ややこしい仕様の謎フィルターを通して見たり聞いたりしたことを書くっていうのには、意味がありそうだと。
それにはあたしが、その旅に至るまでに何があったかを書いたほうがいいなって。
ただ単に、桜の名所に来ました、マジやばいっす、だけじゃなくてさ。
逆立ちでここまで来ました。2km。
脳内に浮かんだ景色がさ、桜が逆になるじゃん。思ったのと違うなっていう。天地逆なんだって。あと2kmはなんだよっていうさ。
桜の意味が変わってくるわけ。他の人が同じ桜を見た話と、桜の意味が変わってくるよね。逆立ちしてんだよ。ほぼ幹しか見えてないんだよ。手にスニーカー履いてるし。
だから、この旅の話も、そんな感じになると思います。逆立ちでは書いてないです。
どこへ行こうかな
2026年4月29日。
ゴールデンなウィークが始まりまして。
暦通りにいけば翌日30日と5月1日は平日なんですけど、そこも休みとなっております。やったね!
その代わりといっちゃなんですが5月6日は出社しなきゃいけなくて。しょぼん…
相変わらずアップダウンが激しいな。2行で上がったり下がったりしてんじゃねぇよ。ゴールデンウィーク始まったんだろ? 上げてけ上げてけ。
で。
数えると正味7日間の連休を、いったいどうしてくれようかということなんですよ。
ああ、ひとつ言ってないことがあったわ。なんでも、一筋縄じゃいかないんだよ。手足を縛られて生きなきゃいけなくて。
ちょっとね。6月にその、秋田に行くんです。行きたいんです。行かなきゃいけないんです。
毎月毎月旅に出て、当然お金を使わずに旅なんかできませんから。札束ビンタ系パワープレイで旅ができるような暮らしぶりじゃないからさ。
この連休にバカみたいに出費するわけにはいかないの。
宿の予約が取れないから車中泊ってのは、望むところとは言わないまでもそういった事情だから、予算的には悪くないわけ。
それでも、7日間も旅に出たらそれなりにカネはかかるよね。車の旅ですから、どうやったって燃料費はかかってくるし、美味いもんみっけたら食いたいじゃん。
じゃあこうしよう。
近場で済ますなら燃料費は安く済むだろうけど、せっかく7日間あるんだし。ちょっと遠出して、その地域をウロウロしようじゃないか。ずーっと移動しているような旅よりは、経費的にもいいし旅に出た感もあるだろうと。
じゃあどこに行くのってことになって。
車中泊ってのは、やったことのない人にはわからないと思いますけど、暑いよりは寒い方がどうにかなるんです。
暑いのは、最近じゃ色んなグッズがありますけど、結局エアコンをつけるのが一番いい対処法なんですよね。冷感グッズとかも限界があるし、ほとんどのアイテムは電源がいるのね。
車で移動中はエアコンもあるし電源も確保できる。充電もOKだと。そうじゃない時の暑さをしのいで熱中症とか体調を崩さないようにするのは、結構大変なんです。
一方、寒いぶんには、厚着したり使い捨てカイロとかで、安価かつ持続的に暖をとることができるんですよ。
真冬とか、寒すぎるとまた別の問題も出てくるけど、単に気温差ことだけを考えれば、車中泊するなら寒い地域へ行くのがまだマシとなるんです。行き先は選べるんだから。
でも、来月には秋田に行くわけ。
東北はすぐまた行くじゃんってなって。
じゃあ、飛び越えて北海道と思ったものの、フェリーの予約が取れないと。
そうなると、東北でも秋田のある日本海側じゃなくて太平洋側はどうだってことになり。
振り返ると、去年の夏に宮城県は石巻に行って、その旅がすごくよくて。また行きたいと思ってたのね。
もちろんさ、あるよ。色んな地域に行ってみたいってのは、あるよ。一回行ったところにすぐまた行くってのより、色んな地域に行った方がいいんじゃないかってのはさ、ありますよ。
でも、あたしの旅って、ここには居られないってのが衝動としてあってのやつなんです。
裏を返せば、どこかにあたしが居てもいい場所があるかもしれないっていう。
そんな場所はないんだよ。知ってんの。多分、この世にないんだと思う。生まれた場所も育った場所も流れ着いた場所も、どれも違うなって思ってんだから。この世の果てまで行ったって、そんなものはみつからないんじゃないかと思う。
でも、また行きたいと思えたなら、なにか可能性みたいなものがあるかもしれないじゃん。
それに、一度行っただけでわかるわけもねぇっていうか。良いも悪いもさ、わかったもんじゃないって。
じゃあ、石巻に行ってみよう。
ついでにと言うとあれだけど、去年の夏に石巻に行って、そのさらに前に東北をぐるっと一周したんです。その時は一周するっていうテーマがあったせいで海沿いを通ったもんですから、内陸側はあまり行けてなくて。
だから、盛岡とかあのあたりにも行ってみたいと。
じゃあ決まり。このゴールデンウィークはそっち方面へ行こうってことで、どうでしょう。賛成の方はご起立ください。
脳内の議員さんたちがほぼ全員。すっと立ち上がっちゃって。
座ってんのは、おうちでゴロゴロしたい党の連中だけ。あと、疲れてるから5年は寝てたい党と。朝からビール飲みたい会もいるな。連休とか混んでるじゃん同友会も。けっこういるじゃねぇか、反対派。
いいんだよ、行くの。おでかけするの。みんな行くんだから。脳内で牛歩戦術とかするんじゃねぇよ。決選投票とかそういうシステムはないの。行くの。ビールは旅先でも飲めっから。ほら行くよ!
かなしみ本線北上系
あーあ、言わんこっちゃない。
旅に出るまでに五千文字かかってるよ。7日間の旅なんだよ? この調子で話してったら終わらねぇって。
なんだろうねぇ、上手くなりたいね。話をするのが上手くなりたい。でも言いたいの。書きたいの。書きたいのっていうか出てくるの。嘔吐みたいに出てくるのよ。
まぁでもね、初日は移動でほぼほぼですから。そんなな書くこともないんだよ。
えーと、ここから石巻までどのくらいあるんだっけ。
300kmとかか。ルートにもよるけど、そんな感じか。
高速道路とかそんなのにお金出してる場合じゃないから。しかも連休初日とか混んでるはずだしさ。オール下道だよ。当然ですよ。
えーと、8時間。がんばって7時間ちょい。
…そう。ふーん。
誰が運転するの?
あたし。ひとり。あたし。悲しみ本線日本海っぽく言うとそうなるよね。なぜ悲しみ本線日本海っぽく言ったのかは知らないよ。出てきたの。脳から嘔吐したの。
えーと、その前に支度がいるよね。車中泊仕様に、あたしのスーパーゴージャスハイグレードフェラーリを車中泊仕様にしなきゃね。
旅慣れてる人はそんなこと逆にしないかもですけど、あたしの場合は旅支度のメモを作ってあって。
車移動、公共交通機関移動、出張用みたいにシチュエーション別に持っていく物をあらかじめリストアップしてあるんです。
今回は車移動ですから、荷物が多くなっても大丈夫なんですけど、車中泊ってことで荷物が多くなりすぎると寝る時に邪魔になっちゃう。
あれもいるなこれもいるな、ってなりがちなんですけど、例えば100円ショップで買える物なら必要と感じてから現地調達でも遅くないので。
ただ、今の車は車中泊にはちょっと向いてない部分があって、主にシートアレンジ関係でちょっと工夫しないといけなくて。
あと窓の目隠しとかそんなのはひと通り揃えてあるものの、実際に寝てみるとああしたいこうしたいってのが出てくるので。
だから用意しておいたメモから、最低限の物を積むように準備しまして。あとは実際にその時になって工夫するなりしてみて、100円ショップとかホームセンターとかに行ったりすればいいやってことで。
そりゃあね、そんなことしてりゃあ朝から出発なんて無理ですよ。そもそも前の日まで仕事だったんだもん。休日の朝ですよ。早起きするわけもねぇっていうか。
号泣
で、29日の朝はノロノロと起き出して、服とかをカバンに突っ込んでお風呂セットとか持って、車に乗り込んだのが11時すぎだったと記憶しています。
途中でスーパーに寄って飲み物なんかを買ったあとは、順調に走っていきまして。
そのまま県境を越えて山形県に入ってから、道すがらにあった道の駅でもう一回休憩しようってことになりましてね。
その道の駅は祝日ですけど人でごった返すってほどでもなく、まあまあ居心地のいい空気感だったので、座りっぱなしの身体をほぐす意味でも道の駅構内をちょっと歩いてみようってことになり。
とはいえ、こじんまりとした道の駅なので、すぐに見終わってしまいまして。
というのも、そんなに散在しないぞと思ってる旅の、しかも目的の街にまだ辿り着いてもいない旅の最初っからさ。なんかいきなり、お土産とか買っちゃうのもなぁっていうのがあって。
気持ち的にちょっと引き気味で見て回ってるせいで、ピンときていないっていうか。居心地そのものはいいけど、のっけからちょっとなっていうか。
そんな中で唯一、道の駅の外で玉こんにゃくを売ってて。簡単なテントみたいなのがあって、中でおばちゃんが鍋の前に座ってんだ。
値段を見ると200円だっていうのね。
200円くらい出してもよくないか。
トイレとか借りといて、なんにもなしで行っちゃうのも人としてどうなんだとか、そういうのもあるわけ。
玉こんにゃく200円はいいだろう。そりゃあ自分でこんにゃく買ってきてさ、醤油で愛情込めて煮しめれば玉こんにゃくくらい作れるかもしれないけどさ、美味しくなれ… とかいいながらさ。
でも、目の前の店番のおばちゃんもやってると思うよ。美味しくなれってやってると思うよ。山形なまりかしんないけどさ、そこはいいじゃん。むしろいいじゃん。旅ってそういうもんじゃん。なに言ってるかわかんねぇけど。
んで、玉こんにゃくくださいって言ったら、200円ですってなって。
そこまでは予想してたんだけど、玉こんにゃくが刺さった串と一緒に、からしの入った蕾てぇなのをスッって出してきて。壺だったか皿だったか忘れたけど、玉こんにゃくに塗る用のスプーンみたいなのが付いてるやつを出してきて。
玉こんにゃくなんて、素で美味いじゃないですか。味の染みたやつなんて美味いよねぇ。読んでるみなさんも食ったことあるでしょう。それも旅先の、山形の田舎のさ、ちっちゃい道の駅の路面で売ってるやつだよ。
例えばハンバーグ的な美味さの方向性じゃないけどさ、玉こんにゃく普通に美味いよね。
でも、からし、あんまりつけたことがなくて。
串に3個、玉こんにゃくが刺さっててそれを渡されて、あたしさ、その場の雰囲気っていうか勢いでからしを塗ったんだけど。
さすがにドバッと全体にいったりしないよ。からし付きで食ったことないんだもん。でも、せっかく出してきたのになしってのもアレだし、かといってドバッといくのもなんだし。
お店を出てからとりあえず写真撮って。バズるかもしんないじゃん。脳まで日焼けしたようなギャルがネオンサインみてぇな色の、一杯1500円するようなかき氷の写真をインスタにあげる感じで、SNSにアップするとバズるかもしれないじゃないですか。
で、車に戻って、食ったの。玉こんにゃく。からしの部分を。
もうね、びっくりするくらいツンときて。むせ返っちゃってさ。
そりゃそうなるよね。からしの部分を思いっきりいったらそりゃそうなるって知ってるけど、その時はなんかそういうことが一切ブレーキとして働いてなくて、パクっていっちゃったのね。
号泣だよ。
いい大人だよ。号泣。からしで。罰ゲームでもないのに。自ら。
残り二つの玉こんにゃくが刺さった串を握りしめて、脳にツンとくるのに必死で耐えながら号泣ですよ。
なんなの? 5歳児なの?
紫の空の果ての街
で。
落ち着きまして。
山形からし祭りから。お互いにからしを塗った玉こんにゃくで殴り合う。殴り合った後でお互いの口にからし玉こんを入れ合う。紀元前から伝わる。伝統の一戦から。そんな奇祭から解放されまして。
そこからはとりわけ急ぐわけでもなく、石巻まで走りました。
道中はきれいな夕空が、夕陽色から薄紫に、それがやがて夜の色になっていくのを眺めながらの道行きで。心洗われるというか。
ゆっくりとリセットされていく、みたいな気分になって。
やがて、目的の街に辿り着きました。
…来たよね。
また来たよね。
また来たいと思ってたけど、本当にまた来れることなんてあんまりないよね? 石巻、また来たよ!
そんな石巻は約9ヶ月ぶりなんですけど、記憶の中で年末に行った浜松の風景とちょっと混ざってる感じがあって。
その2点には距離的にも文化的にもかなり開きがあるとはいえ、太平洋側の空気感っていうか空の青さみたいなのに、どこかしら似たものを感じたからかもしれません。
ゆっくり陽が落ちていく、少し見覚えがあるけどふんわりしている街を走りながらね。
ああここはこうだったっけ、この道は確かこうなってたっけ、この店の前は通ったような、あれここは初めてだったかな違ったかな、みたいなことがぐるぐると生き来するこの感じ。
まったく初めての土地を目にするのもいいもんですけど、再訪するってのも実に楽しいもので。記憶が復元されていく楽しさもあるし、新しい景色に書き換えられていく不思議さもあるし、みたいな。
こっちの勝手な思い入れなんて、住んでる人たちにはまったく関係ないことだとわかってても、それでもあたしはあたしというフィルターを通してしか感じることしかできなくて。
なにかが去来するのを、止めも押しもせずに、ただ感じていることだけしかできないっていう。もう、なんともいえない気持ちになっていくんです。
もう暗くなっています。
あちこち見て回るのは明日以降でいいよってことで。ここいらのローカルなスーパーマーケットで夕ご飯を探すことにします。
前回も長居してますから、このあたりにこんなスーパーがあるってのはおおむね把握してまして、行きたい店はすんなりと決まり、あとはナビに従うだけ。
旅暮らしですから、鮮魚とか野菜とかは買うわけにもいかないってんで、スーパーに着いたら惣菜コーナーに足が向くことになるんですけど。
あたしの場合は、旅に出たらその地域ローカルのスーパーに行って、買わないまでも色々と見て回るってのを、趣味ってわけでもないな。なんかこう、旅してる感を味わうためのひとつの方法としてやってまして。
だから、惣菜コーナーで、いつもの生活圏にはないようなメニューというかお惣菜を買い物かごに入れてから、ぶらぶらと色んなコーナーを見て回ったりして。
宵の口だってのに、家族連れもいれば作業服を着たおじさんとかもいたりして、けっこう賑わってんだ。もっとデカい、大手のスーパーも車で10分くらいのところにいくつもあるんだけど、この店だってそこそこお客さんがいるわけ。
そこに、同じように買い物かご下げて、陳列棚をぼんやり眺めながら買うとも買わないともつかないような感じで歩いてると、紛れ込めたような気がしてくるんです。
紛れ込めただけで、決して成れたわけじゃないってことなんかわかりきってるけどね。
貰い物の野菜があるから、肉買って、あとなんかいる? みたいなことを連れ合いのじいさんに言ってる、カートを押してんだかカートに引っ張られてんだかわからねぇようなばあさんと、すれ違って。
この感じ。
色々あるけど、旅に出てよかったと思うのはこの感じになった時なんです。
観光名所とか有名店とかに行くのも悪くないよ。悪くないけど。
こういうのが好きっていうか。好きとも違うか。なんとも言えない。ふしぎな想いで一杯になるんです。
今夜はここで
その後は、石巻の中心部から少し外れた場所にある道の駅に行きまして。ここは今回初めて来た場所になります。
もう暗いから館内のお店はやってなかろうと思ったら、なにやら灯りが点っていて。調べてみるとどうやら温泉が道の駅内にあるらしい。
前回の旅と違うのは、前はホテルが連泊で取れたので、その、寝る場所と風呂の心配はしなくてよかったんですよね。
今回はその問題が常につきまとうんですけど、道の駅に温泉併設となると一気に解決するじゃないですか。
ただし、そういう施設がある道の駅はたいてい人気があるわけで、混雑しがちっていう別の問題も出てくるんですけど。
とりあえず、拠点候補としてはかなりいい場所にのっけから当たるっていう。なんなの石巻。すごいじゃない。
でももう遅い時間で、温泉施設の最終受付に間に合わなそうということで、お風呂は明日ということにして、空いている駐車スペースに車を滑り込ませます。
空きスペースを探す時にも、コツというか意識してることがあって。
すでに停まってる車のナンバーをチラ見しつつ、停める場所を探すんですけど。これがけっこう大事で。
御当地のナンバー、ここだったら宮城が多ければ、温泉の営業終了時間が過ぎるといなくなる可能性が高いんじゃないか、逆に県外ナンバーは車中泊する可能性がある、という読みが成り立つんじゃないかなと。
暦の上では明日は平日です。だったら、これからどんどん車が増えていくってことはないんじゃないか。
そうなると、これからいなくなりそうな御当地ナンバーの隣に停めておけば、夜中に車の流入が少ないという仮定だとすれば、静かに夜を過ごせそうだっていうことですね。
まあ、そんなのは手前勝手な考えですから、そうなるかどうかなんてわかるわけもないんですけど。そういう謎の駆け引きをやっておいて、ひとり面白がるっていうね。
そんなわけで今夜はここで休むことに決めます。
この時点では先のことはなんにも決まっちゃおりません。行くも戻るも留まるも、なにも。
そんなだよ。そんな旅の始まりだよ。