信州長野 飯山ぶらり旅 旅楽しくて篇|Time goes around
飯山市を文字通りぶらりとするだけの旅も三日目。そろそろお暇しなくてはなりません。私、住人ではなく旅人でした。
旅とコーヒー
朝食のおやき |
二泊したホテル、ノーブル飯山で目覚めます。
何かのタイトルじゃありませんが、見知らぬ天井を覚醒しきっていない頭でぼんやりと見ていると、自分が何処にいるのかを思い出すまで時間がかかりますね。
昨日の朝は、いつもホテル泊では欠かさないインスタントコーヒーを買っておくのを忘れていたのですが、今日はちゃんと買ってあるもんね。
寝ぼけた脳におはようと言うために、ベッドからモソモソと出て備付のポットに水を入れ電源オン。
お湯が湧くまでの妙にワクワクする気持ちをどこかに感じながら、ベッドにあぐらをかいて枕を抱っこした状態でぼんやりの続きです。
チェックアウトは10時まで。
今日の天気予報は曇り。
昨日だいぶ歩いて、街の様子は見て回ったし、帰りの電車はだいたいチェックしてあって・・・
なんてぼぉーっと考えている間にしゅうしゅうとお湯が沸いていく音が次第に強くなり、しばらくしてパチンとスイッチが切れる音がしました。お湯の準備ができたようです。
紙コップタイプのインスタントコーヒーをホテルで飲むのは、もちろん味が好きだからじゃありません。お酒と一緒で雰囲気モノ。
旅先でゆっくりお湯を沸かしてコーヒーを飲む時間がいい。それがいいのです。
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昨日よりも気温が上がって37℃まで達する模様。相当汗だくになりそうです。
行きたいなと思っている日帰り温泉があるのですが、電車の接続が微妙で相当早めに行った上に、次の電車を待つ時間が結構ありそう。
そっちをあきらめて、ギリギリまで飯山にいてあちこち歩き回ると、ひとりだけゲリラ豪雨から生還したようなルックスで帰りの電車に長時間揺られる事になりそうなんですよね・・・
まとまりそうでまとまらない考えをコーヒーの湯気とともに霧散させていると、いつの間にか部屋の外がざわついていました。そろそろチェックアウトの時間が迫ってきて、ルーム清掃の方々が準備を始めているのでしょう。
私もそろそろ、ここを出る頃合いのようです。
とりあえず歩き出す
チェックアウト期限の10時より、ちょっとだけ早めにノーブル飯山を後にしました。必要充分ないいホテルでした。お世話になりました。機会があればまた。
何も考えず足が向くまま歩き出すと、やっぱり踏切を越えて飯山城跡の方へ行ってしまいます。
ですが昨日も行きましたから、そっちではなくなんとなく駅の方へと歩を進めます。
昨日見かけた古い町内地図 ―商工案内板というらしいのですが― それが気になっていて、昨夜寝る前にグーグルマップと案内板を撮影したものとを照らし合わせていたのでした。
お店の位置関係が通りを挟んで反対側になっているなど、グーグルマップが示す現代の地図と微妙に異なるのは、お店が移転したからなのかそれとも地図が間違っているのか。
閉店廃業したであろう、今はもうないっぽいお店は現在どうなっているんだろう。
このまますぐにストリートビューで確認するのもいいのですが、すぐそこに街があるわけですし実際歩いてみればいいやと、特に気になったあたりまで歩いていってみようということになりました。
その前に、すでにまあまあ暑いので一旦コンビニに避難。
このコンビニ、今回の旅でもう何度もお世話になっていますが、昨年に車できた時にも立ち寄ったんですよね。
そのことをすっかり忘れていて、今回の旅でコンビニに行きたくてグーグルマップで検索して、実際にコンビニ前の駐車場に足を踏み入れた瞬間、ここ来たことある! となりまして。
こんな感じで記憶と現実の風景が合致する瞬間って、たまらないものがありますよね。
それまで忘れていた事が、それをきっかけにもう、んうわぁぁぁっと芋づる式によみがえってきたりして。
なので、こういう体験をしたくて、以前訪れた場所にまた行ってみたりするのです。
古い地図と目の前の街とEaglesと
そのコンビニのある通りから駅の方へ向かうと、街頭にスピーカーが設置されていて、地域のいわゆるコミュニティFMなのかわかりませんが、その放送が結構なボリュームで流されています。
Eaglesの「Hotel California」がたまたま流れてきてね。
イントロを耳で感知した瞬間から、旅の空気感が一気にウェットになっていきます。
街頭スピーカーの音質と通り過ぎていく車の走行音などの街のざわめきが混ざり合って、この旅のエンディングな感じが心という臓器にグサグサ刺さってくるのです。
そんなモードの中、例の古い地図で気になっていたあたりに差し掛かります。
建て替えられたであろう、あの案内地図には描かれている痕跡が見つけられない場所。
昔の屋号の名残がある場所。
地図上で思い描いていた風景と現実と。
古い地図と現実の照合作業というと大げさですし、要は興味本位ですからね。
ですから、住んでいる人に突然昔はどうだったのか、なんて訊ねたりするほど野暮じゃありませんし、一介の旅人ごときが立ち入っていいものじゃないでしょう。
不審に思われない範囲で通り過ぎる間に観察する程度ですが、なんとなくこうなんじゃないかと思えてきたりしてね。
具体的にどこがどうとは書きませんけど、今までほとんどかかわりのない街の変化、大仰に書けば歴史に触れたような気分にはなれたのです。
飯山駅前でチーズケーキを
飯山駅には10時半頃には着いたと思います。
なにせ暑いので、建物の中に避難するのが唯一の正解でしょう。
これ以上は徒歩でうろうろするのはちょっと無理だなと思い始めていて、そうすると昨日調べた帰りの電車の時間からして、予定より一本早いやつに乗ってしまった方が良さそうです。
少し時間がありますから、隣のスーパーツルヤに寄って、ネットでおすすめされていたツルヤオリジナルのチーズケーキを買いに行きます。
りんごの木という、長野県のお菓子屋さんが生産しているようです。
持ち帰るまでに傷んでもいけませんし、時間つぶしも兼ねて店内のイートインスペースで早速食べました。
朝からスーパーでチーズケーキを2つも食ってる絵面はどうなのよと思わなくもありませんが、今まで食べたことのあるチーズケーキよりもしっとり感があって、確かに美味しい。
暑さですでにへこたれトーンでしたが、若干元気が出てまいりましたよ。
飯山駅観光交流センター
飯山駅に戻ります。
まだちょっと時間がありますから、構内にある観光案内所「飯山駅観光交流センター」に立ち寄りました。
駅の一階にある落ち着いた雰囲気の一室で、フリーWIFIや電源が利用できるようになっています。旅行者にはありがたいですよね。
この時は、もう長年使っててバッテリーがヘタリ気味だったスマートフォンだったので、写真をたくさん撮っていると消耗が激しく、ここで充電させてもらいました。
私が滞在していたのは20分くらいだったと思いますが、その間にも何組か観光で来たと思しき人たちが、案内所のスタッフの方に質問などをしていました。
そう言われれば、この旅もそうですが目的地への道案内や営業時間など諸々はネット検索や地図アプリなどで調べてしまうので、現地で誰かに訊いたという記憶はここ最近ありません。
ですが、そういう事に疎い人もいますし、検索するより誰かに訊いてみる方が早い場合もあります。個人的にはあまりやらないのですが、「尋ねる」というコミュニケーションが旅の楽しさにつながるという方もいるでしょう。
そういう方々には、とてもいい施設なんじゃないかなと思います。
電車の時間です。
ホームに降りてみると、いい感じの風が吹いていて案外居心地は悪くありません。
やがて2両編成の電車がやってきて、それが乗るべき車両だと知った時に、脳内で「Hotel California」が流れ始めました。
旅だとか夏だとか、いくつかのものがエンディングに向かって進んでいるのかもしれません。
十日町市でお祭りに遭遇
新潟県十日町市に向かう車内は、そこそこ席が埋まっています。
その片隅に席を確保して、乗り換えなしののんびり電車旅・・・ のはずでしたが、数駅ほど行ったあたりで車両の切り離しがあるとのアナウンス。切り離される方の車両に乗っていたため車両を移動し、旅が続きます。
薄曇りの空の下、千曲川沿いを走る電車に乗っていると、なんだかこう時の流れが遅くなっていくような不思議な気持ちになってきました。
そのまま無事に十日町駅に到着。
改札を通って表へ出ると、駅前のロータリーの向こう側にある商店街の道路に屋台が並んでいるのが見えます。どうやらこの地域のお祭りのようです。
ガン見すれば写真中央に縁日が見えるはず |
人混みは好きではないのでどうしたものかと思っていたのですが、そっちに行かないと車を停めている駐車場に行けないこともあり、半ば仕方なく縁日の方へ行ってみます。
ととと、縁日とは違う方向へ行く人の流れを発見。そっちには何があるのかと、角を曲がっていく方向を覗いてみると、駅前にあるスーパーマーケット「リオンドール」が見えました。
そういえば、この旅を始める時に電車の時間に間に合わずにパスしていたのでした。
足は自然と角を曲がって、リオンドールへの道へ。
店の前に駐車場もあり、なかなか大きな建物です。人が大勢いたので店構えなどの写真は遠慮しておきました。
店内もお祭りムードで、お客さんも多め。白いお祭りの衣装らしきものに身を包んだ人々がチラホラといて、買い物をしているのが目立ちました。
色々と見て回っていると、中華系のお惣菜が充実していて、惣菜コーナーの一角を占めるくらいに並べられていたのが印象的。今日はオードブルがたくさん積んであって、この街の人達にとって特別な日なんだと否が応でも感じさせられます。
そうこうしている時に、ふっと車の事が浮かんてきました。有料駐車場に停めていますから、こうしている間にも駐車料金はかさんでいく一方なのです。
混雑しているものの無料の駐車場もあるスーパーですし、これは一旦車に戻って出直した方がいいだろうと、リオンドールを後にしました。縁があったらまた。
道の駅 クロステン十日町
無事に車を回収したのが15時近かったと思います。
そのままスーパーに戻ろうかとも思ったのですが、その方向からお神輿がゆっくり近づいてくるのが見えて断念。駅前から離れることとなりました。
十日町市には日帰り温泉を利用するために何度か来ていますが、昼間にウロウロするのは初めてだと思います。
十日町市は信濃川を挟んで東西に市街地が別れていて、川沿いの平野部以外は山になっています。
今は駅のある川東にいますが、西側には今年の冬に行った日帰り温泉がありますね。
その時の記事はこちらから
とりあえず車を出して、向かった先は駅に近い道の駅。クロステン十日町です。
ここは道の駅に温泉と美術館などが併設されているという、バリエーション豊かというかちょっとトリッキーな施設。手前味噌ばかりで恐縮ですが、ここの温泉も利用して色々と衝撃的でした。
その記事はこちら
この道の駅は十日町駅から近く、とりあえず有料駐車場から車を出してこれからどうするか考えるために一時避難的な意味合いで寄ったのですが、土産物や地域の特産物を売っている建物があり、そちらを見学しに行きました。
展示物のひとつ |
花火
その後、ちょっと疲れもあり旅の終わり感もあって車で仮眠しちゃいまして、道の駅の駐車場でふと目を覚ましたらすでに外は暗いじゃありませんか。
やってもうた感に苛まれる間もなく、ドン! という重い大きな音が車の窓越しに聞こえてきます。どうやら花火が上がっているようです。
花火が見えるかなと外へ出てみると、なにかどうも様子がおかしい。
意外と近くで打ち上がっている花火の音と夜空を切り開く大輪の花が、もちろん時間差があるとはいえ、なんかこう違和感があるのです。音がいくつも聞こえてくるような感じ。
なんだろうと夜空を見回していると、別の場所からも花火が上がっているじゃないですか。
後で調べてみると、この日は近隣地域でも大きなお祭りがあったようで、たまたまなのか意図的なのかわかりませんがその二ヶ所で行われる花火大会の日程が重なっていたらしいのです。
思いもかけない花火の共演にしばらく夜空を見上げていたのですが、角度的に両方の空を見るのは無理なのでもうちょっと見やすい場所はないかなと思い始めます。
と、同時に例のスーパーでまだ買い物をしていないのを思い出しました。
私はなるべくローカルなスーパーに寄ったら、少額でも買い物をしてレシートを撮影するという奇病奇行がございまして、それがまだ未達成なのです。
ちょっと思案した末に、車を道の駅に置かせてもらい、徒歩でスーパーへ。
スーパーの駐車場はそれほど広くありませんから、花火大会の真っ最中で買い物客が多い時間帯に駐車場が空いている気がしませんし、周辺の道路も混雑しているでしょう。
10分ほど歩いてスーパー リオンドールへ舞い戻ると、やはり駐車場は埋まっていて縁日からのお客さんも大勢が買い物に来ています。
浴衣姿の学生さんと思しきカップルが、下級生に見つかって冷やかされながらも誤解だなんだと懸命に否定するみたいな、ドラマなら定番のシーンにリアルに遭遇するなど微笑ましくもちょっとうらやましい体験もしつつ、惣菜コーナーへ。
売れ残ったお惣菜が値引きされて結構な量で並べられていて、夕ご飯を比較的安価に調達する事ができました。ラッキーラッキー。
ご飯を買っちゃったし、食べながらどこかで花火見物といきたいところだなと思いながら、道の駅へせっせと歩いて戻ります。
間近で見るなら今いる駅前付近でもいいのですが、せっかくですからちょっと迫力には欠けても二ヶ所の花火が見えそうな場所がいいなと、車のエンジンを始動。
ちょっとウロウロした結果、お邪魔にならなそうな大きなショッピングモールの広い駐車場があったので、そこへ行ってみました。
夏の終わり、旅の終わり
先程買ったお惣菜は、昼間見た時に美味しそうだと思った中華がメインです。見た目通り当たりなやつでして、お腹が空いている事もあり箸が進みます。
花火を見ながら美味しいものを食べるなんて、最近はなかなかなかったシチュエーションですよ。運転ですから飲めないのが辛いところですが、そこは仕方がありませんね。
辛いといえば夏の終わり感と旅の終わり感。
花火、お祭り、浴衣姿、旅、放浪、ちょっとした疲れが私の中でドロドロに混ざり合って、でも混ざりきれずにうごめいているのです。
決して中華なお惣菜の若干くどいものを、安くなってるからと買いすぎて頑張って食べたせいじゃありません。よね?
花火もいつしか打ち上がらなくなり、帰宅する車の列が目立ち始めた頃。
その列に加わりたくなくて少しだけ躊躇したあと、足取りも重く帰路についたのを覚えています。楽しかった分だけ、旅の終わりの寂寥が胸を焦がすのです。